小説「あなたへ」感想 | 厭世主義。

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「あなたへ」の感想。
ずいぶん昔のクリギムで石田さんが映画館でこの映画を見た
と珍しい発言をされていたので、ずっと気になっていました。
石田さんにそこまでさせる何があるのか、と。

映画だと時間に縛られるから嫌だなあと思っていたのですが、
たまたま本屋で本が出版されていることを知ったので
勉強の息抜きにちょくちょく読む事にしました。
ただやっぱり映像で見たかったなあとは思います。
時間があったら…というか気が向いたら見ようかと。


それでは話のネタバレを含みますので、嫌な方はお戻りください。




刑務所で作業技官として働く、無口で堅物な倉島英二の
妻・洋子は悪性リンパ腫にかかって亡くなってしまう。
葬式から数日後、英二の元に遺言サポートセンターから
洋子の遺言が届く。一通は絵はがきにたったの一文、
「わたしの遺骨は、故郷の海に撒いてください」。
もう一通は長崎県にある洋子の故郷・薄香に局留めする
ようにと遺言で頼まれてあった。
洋子のために作りかけていたキャンピングカーを完成し、
洋子が気に入っていたホタルブクロのような形をした風鈴と
骨壺とを手に、一人車で富山から長崎に向かう英二。

旅の途中で元受刑者の教え子の一人・杉野輝夫と会う。
杉野は高校の国語教師をしていた時に教え子に騙され、
生徒に猥褻行為をしたとされ、すべてを捨てて家から逃げ出す。
その後盗難に手を染め、捕まった刑務所で英二から木工を学び
虜になった杉野は出所してから木工の仕事に就くが、
疑いの眼差しを向けられて解雇され再び盗難に走っていた。
杉野は出頭しようとする前に再び捕らえられたが、英二の口から
発せられた洋子の言葉によって人生をやり直そうと決めた。
そして好きだった種田山頭火の句集を英二に送って別れた。

更に駅弁の実演販売をする田宮佑司と部下の南原慎一にも出会う。
出勤中の車が故障した田宮は、その駐車場で休憩をしていた英二に
声をかけ、長崎の通り道である広島まで送ってもらうことに。
その後なんだかんだで店を手伝わされ、そのお礼にと居酒屋へ。
酔った田宮から奥さんが浮気をしていて家に帰れないという話を聞く。
しかし田宮はまた洋子の言葉によって吹っ切れて離婚を決意した。
南原は英二が薄香へ向かっている事情を聞き、
散骨するときの船は「大浦吾郎」に相談してみてはと言う。

旅に出てから四日目、無事薄香に到着した英二は、
島に唯一の食堂・濱崎食堂で夕食をとることに。
母・多恵子とその娘・奈緒子、更に奈緒子の夫であり
吾郎の孫・卓也に出会い、吾郎に散骨の船を依頼する。
卓也の両親、奈緒子の父は遭難して死亡しており、
遺体が上がらなかったため、空っぽの墓に手を合わせている。
虚しいがそれでもいいのかと吾郎に言われ英二は悩むが、
翌日郵便局で洋子の二通目の遺言を読んで散骨を決意する。

ともに海に流してほしいと多恵子から奈緒子と卓也の結婚式の
写真と花束を受け取る。自らの手で砕いた洋子の遺骨と花束、
それに洋子の好きだった日本酒を海に注いで祈り終わったとき、
初めて心から泣き、洋子の死を受け入れることができた。

辞表が受理され、自由に生きていくと決めた英二。
帰り道、実演販売所によって南原に結婚式の写真を渡す。
騙されて大量の借金を作った南原もとい久美子の妻・奈緒子の父は、
三ヶ月間遺体が見つからなかったため死亡の扱いをされ、
その保険金で借金を返していた。写真を受け取った南原は
様々な思いを胸に、また自分の生き方を決めていく…。

「三つの偶然が起きたとき、奇跡が起きるらしい」
一つ目の偶然は、元教え子の杉野に出会った事。
二つ目の偶然は、洋子の同級生だった南原に出会った事。
三つ目の偶然はー。




あらすじ書くの苦手だなあ(笑)
本当は洋子の二通目の遺言が書かれ、
さらに病床の洋子が遺言を書くまでの短い話で終わります。


最終章では一人称が「わたし」のまま語られるので、
英二視線のままなのか、第三者なのか、洋子なのか…
ちょっと分かりにくい表現をされていますね。
最後のページでようやく洋子視線に切り替わっていたことが。
これはわざと…なんですよねきっと。
映画だとどういう感じになっているんだろう。


個人的に最後は洋子の遺言で終われば良かったのにと思います。
最終章は「空気のような言葉」なんですが、
その前の章「あなたへ」と入れ替えても小説的には
さほど問題ないように思います。ありがちだけど。
題名も「あなたへ」だし、ここまで二通目の遺言(というか手紙)
の内容を引っ張ってきたなら最後にもってこようよと。


あらすじ読んでて前ぶりなげーな!!と思われる方もいると思いますが、
実際に薄香に着いてからの話は三分の一ぐらいしかなくて、
ほとんどが「出会い」の話なんですよね。
文章に書き起こすと必然的にそうなっちゃうんじゃなくて、
映画の中でもそっちに時間を裂いているのかな。
僕も最初読んでいるときはいつ薄香に着くんだ!って思ってたら、
着くときは三行ぐらいで片付けられてまじか!ってなりましたw


三つの偶然がryっていうのは洋子の言葉なんですが、
この話も全部が偶然で出来ているような気がしてなりません。
確かに過去と関係していた人たちは確かに2人ですが、
偶然英二に出会って生き方が変わった人は沢山いるわけで。
話の展開的に考えると、仕事を辞めて自由になった英二は、
このままキャンピングカーで自由奔放に旅を続けて
そのときに三つ目の偶然を見つける…という流れなのかな。


薄香が変換出来なかったので実際にある地名ではないのかな
と思ったんですけど、ちゃんと存在していました。
どうやら映画の中では「薄香郵便局」として
結構普通の郵便局っぽい外装だったようですが、
本の中では「薄香簡易郵便局」となっており、
どちらかといえば本当に薄香にある郵便局を参考にした感じでした。
局留めするなら「簡易」も必要とのことで。


最初にこの作品いいなって思ったのが登場人物の名前。
そこ?!って突っ込まれると思いますが、大事です意外と(笑)
名前が分かる通り一発変換出来るぐらいありふれた感じで
覚えやすかったです。特殊な読み方の当て字は混乱するから。
元々記憶力が悪いのでカタカナとかは特に無理です。
日常的な雰囲気がないと…(笑)


そこに薄香という、読めないことはないけど、
今まで聞いた事がなかったから親しみなく。
なんで薄香にしたんだろうねと素朴な疑問も湧いたり。
日本の端から端の旅、出来るだけ遠くにっていう雰囲気を
作りたかったんだろうけど…他にも島あるし。


とりあえず、作品の感想に入るとすると、予想していた話と違いました。
僕的には洋子と英二の話かと思っていましたが、
英二を始めとして人の成長みたいなところに重点があったかな。
(映画だと英二の演技は黒澤明の「生きる」の主人公っぽそう。)
けどそんなに難しい話じゃなくて、言いたい事はしぼられています。
全体的にありがちといえばありがち、あくまでフィクション作品感。


洋子の言葉によって人生変えようと決めた方々。
本当の悪なら「きれいごと並べてんじゃねえよ」って思うと思うけど
それを受け入れられるだけ、まだまだ直しようがあると言うか。
そこが物語だなあって思っちゃうというか。
命は時間だ、だから時間を大切にすることは
命を大切にする事と同じなんだという言葉は印象的でした。


他人に左右されず、自分と未来を変えるため自由に生きる。
あなたにはまだ人生が残されているんだから…。
英二ほど控えめな人ならいいけど、一歩道を間違えれば
ただの自己中心的な人…だよね(汗)
仕事辞めてお金大丈夫なのかな…もう六十越えてるし
ここまでの旅費も馬鹿にならないだろうし。
私はそのまま刑務所に戻って犯罪者相手に指導する日々を過ごし、
今までとまったく変わらない生活だけど、洋子の言葉で
そんな地味な生活も楽しく意味を見いだしたみたいな…
あるかなって思ってたけど本当に旅でちゃうんだと。
やっぱり大人しい人ってあるとき急に暴走しだすのかな←
人生に一度は荒れる時期くるんだね、早いときは若気の至りだ
なんていってられるけど歳取っては嫌だなあ…。
とかずれていることを思ったりした。


主人公である英二と石田さんの考え方が少し似ているのかな、
こんな関係に憧れているのかなと何となく思いました。
英二は出世を望まず、ただ決まった時間に決まった事をする、
端からみたらつまらない地味な男、という感じです。
よく居る男じゃん!と言われたらおしまいですが。

ただそういう考えをもつ英二を否定するのではなく、
地味だと思っていたことにも違う視点から見れば華やかにみたいな。
石田さん、お淑やかで女性らしい女性を求めてそうだよね。
妻に先立たれて一人で力強く生きる姿が今の石田さんっぽい。
ってどう頑張っても石田さんとこの作品を関連づけようと思ってしまう。
石田さんは何を感じたんだろうね…。


僕はすぐ否定する癖があるので…今回も例に漏れず。
この作品はありがちだけど、普通な…普通にいい作品かなと思います。
読んで損はないかな?やっぱり映画も見たいです。


ちょっとこれを読書感想文にしようかなと思いかけた(笑)
でも難しくなりそうだからやめておきます。
感想文はアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」
でクリスティー作品の魅力を語ろうかなと。

他に石田さんがお薦めしていたというかお話されていた作品ありましたっけ?
随分前のクリギムで子供の頃こんな本を読んでいたんだけど
なんだったっけなあ…みたいなお話されていましたよね…なんでしたっけ。
普通にコレ面白かったでもいいですヽ(*´∀`)/








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