ボブとニックの旅物語
シクラメン ⑧
二人は 汚えじじいを見た。
「おぬしらが家というのはあれの事か?」
二人は振り向いた。そこには今出てきたはずの家ではなく、豚小屋があった。
「なんだこりゃあ」
ボブもニックも驚いた。
「今さっきまでワイン飲んでたんだぞ。なんで消えちまった。あの二人も豚になったのか? よう じじい どういうこった?」
「豚小屋になる前に、あそこに家があったのは 4年ぐらい前じゃ。一人の女をめぐって二人の男が争ってての。旦那のほうが焼き殺されたんじゃよ。その後、腕に大きな傷のある男は、女も殺して 家に火をつけて自分も家も全部燃えさかる炎にしちまったよ。その後 村人たちが怖くなって相談して、豚小屋にしちまったんだよ。それで3人とも 成仏できたのかどうか わしには分からんのう」
ボブとニックはとりあえず走って逃げる事にした。走りながらニックは振り返った。
門の所に じじいはいなくて、
燃えさかる炎のような 真っ赤な[シクラメン](嫉妬)が、一輪咲いていた。