マイリトル ~傷つかない生き物~
①
帰りたくないと思った。ココがどこかも分からないのに。
自分が、誰なのか?
真田は、この状況下で、少し心地よさを感じていた。ハッ
キリとは、言葉では言い表せないが、何かこう、今までの
事が無くなるのか、いや、女性的に言う「無かったことにし
ましょう」 そんな感じだろうか。
体の中の一部分が、小さな笑みを浮かべている。
「うおぉぉぉ」男の叫び声が、ようやく耳に入った。
額から、ほとばしる汗で視界が悪かった。
隣には、動けなくなった女が横たわっている。
真田は、ハッとなって立ち上がり、とにかく周りの人達の体
を揺すった。直観的に、生きていると思われる女を抱きか
かえ叫んだ。
「大丈夫か!」背中にべっとりと血がついている。
「彼は・・ 彼は・ まだ、生きてるの? ・・・」
「彼って、彼って、誰だ!?」