沼津出身の私が書くラブライブのブログ

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 イートインスペースが甘酸っぱく和んだところで、一年生の三人は千歌と曜の様子を見に行った。やはり進捗は芳しくないようだった。

 状況が変わったのは、曜が千歌に「梨子ちゃんと踊ってた時の歩幅で踊ってみて」と提案してからだった。提案通りに千歌が踊ると、曜との歩幅が、†天界的合致†した。

 手ごたえを掴んだ二人の表情は昼に比べて大分明るくなり、練習の雰囲気も良くなっていた。一年生の3人も物陰から出てきて、二人の進歩を祝福した。曲のパート練習が一段落したところで、千歌の携帯が鳴った。

 梨子からの電話だったようだ。

 先程の†天界的合致†から気分がいいのか、梨子と話す千歌の声はとても明るく、楽しそうだった。そんな千歌を、曜が遠巻きで見ているのを、善子は見ていた。

 千歌が他のメンバーに電話を代わるとて、花丸にスマートフォンを向けた。花丸は大いにおどろいて、やっと言葉をしぼりだした。

 

「もすもす?」

 

どんな田舎娘だ。善子は内心でツッコんだ。さすがにスマホぐらい…。

矢先、電話口の梨子が「あれ、善子ちゃん?」と声をかけた。まさか自分に話が振られるとは思っていなかったのと、曜のことが気がかりで何を話せばいいのかわからなかったので、「堕天で忙しい」というよくわからない口実でルビィを身代わりにした。確かに、電話はなんとなく緊張するものだ。

そして、曜の番が回ってくるかと思ったところで、千歌の携帯が充電切れになってしまった。善子は、曜の顔を見れなかった。

 

曜も大変だろうな、と家に帰って善子は思った。曜との帰りのバスでも「ダンスがうまくいってよかった」という話に終始し、梨子の話題は上がらなかった。善子も梨子の話を振ることはできなかった。

 悩んでるのは自分だけじゃない、ということは、根本的な解決にはならないが、そこはかの安心感を得る材料にはなった。しかも、自分においては、もう少し状況は幸福である。たぶん、花丸は自分のことを好きでいてくれている。こんな私でも、仲良くしてくれている。

 そんなことを考えていると、善子のスマホが鳴った。表示は、「黒澤ダイヤ」。

「もしもし」

「夜分遅くにすみません、善子さん」

「そんな遅くもないでしょ、で、何の用?」

「いえ、ちょっと新曲のペアでの振り付けについてご相談がありまして…」

 ダイヤと善子のペアでやるダンスの部分で、良かった点悪かった点、取り入れていきたい振り付けの案など、ダイヤは落ち着いた口調ながら熱を持って話し続けた。やはり、スクールアイドルへの愛が伝わってくる。

ダイヤの話を聴きながら、善子は「いま私は生徒会長と電話しているんだなぁ」と唐突に思った。今まで生徒会長はおろかクラスの学級委員ともろくに話したことのない人生を送ってきた彼女にとって、冷静に考えてみたら凄いことをしてしまっているのだった。いつからか、たぶん中学のときくらいからか、斜に構えて孤高であることを美とするようになってしまっていた。友達らしい友達もいなかったように思う。それが、高校に入り1学期が終わったところで、生徒会長から相談の電話がかかってくるまでになっている。どうしてこうなったんだろう。そう、スクールアイドル部に入ったからだ。善子は、この4か月ほどで、大きく変わったのだった。そして、そのことを実感しつつあった。

「ちょっと、聞いていますの?」

「え?あぁ、ごめん、何?」

「ですから、明日の午前中から二人で練習しませんかとさっきから言っているではありませんか!」

「あぁ、そうね…いいけど、私家遠いからあんまり早い時間は」

「じゃあ9時にわたくしの家でいかがでしょう?」

「うん、大丈夫よ」

こうして、善子はダイヤと朝から練習をすることになった。

「では、また明日。おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 電話を切ったところで、善子はしみじみとこう思うのだった。

「やっぱり、私リア充になりつつある…」

 生徒会長から電話がかかってきたり、休日に二人で練習する予定を立てたりするのが、高校以前の善子では考えられないものだった。善子にとって初めての経験がここ数か月連続している。

「でも、うーん…」

 リア充がゆえに、人間関係で悩むことも、初めて経験しているのだった。

 そして数分後には、善子はまた別の相手と電話をしていた。

 

「ねぇ、ずら丸。携帯買ったら?」