十年振り位に内視鏡検査を受けた。

母親が腸の癌だったので家系的に四十を過ぎた辺りから定期的に受けてきた。

幸い今までは何も無かった。

今回の検査も無事異常無しだった。

受けた方なら分かっているが前日から下剤を服用して

当日は二リットルの下剤を飲み

水のような透明な便が出てくるまで便を出し切る。

トイレで看護師さんを呼びに便を診てもらい

目視確認しOKが出たらいざ検査となる。

 

病院によっては最初の便の状態を看護師に見せた時があったが当たり前のようにダメ出しされる。

自分でも「こりゃ駄目だろう」

と分かっているから見せたくない。

芸術家が自分の納得できない作品を世に出したくない気持ちが少しだけ理解できた。

自分の便にダメ出しを下されるのはいつもながら少しへこむ。

 

今回の検査は写真があり、このような便の状態になったらトイレから呼んでください、と

言われていたので、私は自分の作品作りに集中できた。

三時間、十回を過ぎた辺りにチェックしてもらうと

周りの判断を仰ぎたいとその場を去り二人の看護師さんを

伴って現れた。

「ああ、ちょっとツブツブがあるねぇ」

「あらま、ほんまや」

昼時なのに他人の便(かなり液状化しているが)を凝視するのも難儀な仕事だ。

看護師さん達が気の毒になった私は心に決める。

「顔が洗える位まで綺麗な便を出してやろうじゃないか!」

 

数回後のトイレの後、自信を持って私は看護師さんを呼び満場一致? で無事クリア。

 

結果は前述した通り問題なし。

 

ここ数年癌検査は血液や線虫のキットを用い送付していたが、やはり検査後の安心感は確かだ。

 

余談だが母親は四十一で癌で亡くなった。

同い年だった父も辛かったと思う。

東京から大三島に移住した時の私の年齢も四十一歳だった。

移住に不安はあったが四十一歳の時の両親を想えば

自分の抱える生活の不安なんて「恐るるに足らず」と一歩を踏み出せた。

 

何も無ければ笑い話だしポリープがあればその場で切除し病理検査が行われ「悪性」「良性」の診断が下される。

定期的な検診をおすすめします。