「TRUE GRIT」 歌詞


夜になると 胃の奥で細い金属が軋んで

眠りの底で 形のない影が脈を打つ
朝の空気はまだ冷たくて
部屋の隅が静かに合図を送る
「助けて」と漏れた声は
薄い空気に吸い込まれて消えた

強さを取り違えたまま 誰かを追い詰める人は
自分の足場さえ確かめられない
怒りを抱えても 涙を飲み込んでも
誰も傷つけない選択を続ける君の方が
静かに 確かに 強く立っている

君の弱さは 壊れ物じゃない
まだ名のつかない力の素子だ
圧力がかかるほど 内部の構造が研ぎ澄まされる
胸の奥で震える声を拾って
もしも心が沈む夜でも
君はまだ終わっていない
世界が冷たくても
君の内側の秩序は崩れない
その秩序を守ることが
君の強さの始まりだ

拳や言葉だけを武器にする世界は
衝撃に弱い薄膜のようで
君には やさしさという耐性がある
誰かの視線に怯えるより
自分の境界を守る勇気を
そっと育ててほしい

誇れるものがまだ見えなくても
君の速度で探せばいい
芽の形をしていない種だって
土の下で 確かな熱を帯びている

胸の奥で響く叫びは
弱さの証じゃない
押しつぶされそうな日々を越えるたび
君の中の層は深く積み重なる
戦わないことこそが 本当の「負け」なら
君はもう 未来を選び直している

世界の雑音が君を乱しても
君の内部には揺るがない規則がある
やがて君自身が
自分の価値に気付く日が来る
まだ名前のない強さが
胸の奥で形を作っている
迷いは道を失うことじゃない
君が君を守ろうとした証なんだ
その証を抱えて
また歩き出せばいい



「TRUE GRIT 制作ノート」
TRUE GRITは、今は亡き先輩に向けて書いた楽曲です。  
タイトルの「GRIT」は、戦闘的な強さではなく、人としての内側にある「折れない心」を意味しています。  
10年前に書いた原型に、今の時代を生きる「苦しみながら戦っている人たち」へのメッセージを重ね、今回の形に仕上げました。

学生時代、先輩は恩師であり兄のような存在でした。  
見た目も性格も運動神経も良く、頭も切れる。  
それでいて才能に頼らず、誰も見ていなくても努力を続けられる人でした。  
彼が亡くなった後、誰に見せるわけでもなく書いた詩が、この曲の始まりです。

当時の僕は、学ぶことから逃げてばかりで、詩を書く力も足りませんでした。  
「もっと早く本気になれていたら、何か変えられたのかもしれない」  
そんな後悔を抱えながら生きてきました。

「前も負けたし、今はまだ勝てないのでやめておきます」と僕が言うと
先輩は「戦わないことこそが本当の負けだよ」と教えてくれました。  
その言葉に応えるように、歌詞には  
「戦わないことこそが本当の負け なら  
 君はもう 未来を選び直している」  
という一節があります。

このフレーズだけ「君」は僕自身のことです。  
もし先輩が向こうでこの曲を聴いてくれていたら、  
「自分の未来を変えるために頑張ったんだね」  
そう言ってくれる気がして、
この言葉を書きました。