財自演 -株にまつわるサラリーマンの物語-

財自演 -株にまつわるサラリーマンの物語-

一人の若者が飛び込むストック(株式)の世界↑↓ファイナンスと言う名の魔法!?

この物語はフィクションですが、現状のストック市場へ何か提起できれば幸いです。それと社会の春風に負けない新社会人に読んで頂ければうれしいです。

いつかこんな映画を撮るのが夢だと熱く語っていた。私の大切な人と大切な時間を過ごしていたときのこと、彼女はこの物語を書いてみればいいのにと背中を押してくれた。ブログを選ぶにあたりアメーバブログのアメーバが気になって選んだ。アメーバ経営という京セラの稲盛さんが書かれた本が流行っているが、アメーバのように増殖しこの物語を知る人が殖えてほしいという願いを込める。


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Enter、Enter、Enter・・・・仕事を始めて思う。一生のうちでどれだけEnterキーを押すのだろう。 Enterって小指で押すんだよな。俺らの世代って一家に1台パソコンがあった世代だけど、ケータイのメールの方が楽だな~。

プルルル~プルルル~、プルルル~プルルル~

「はい!リバーエンタテインメントです。」友行は勢いよく電話に出た。

「IRおる?」

「IRでございますか、恐れ入りますがどちら様でしょうか?」

「株主だよっ!」軽く怒鳴り声とも感じられる電話先の男が答えた。

「少々お待ち下さいませ。」IRってことは片瀬部長・・・・あれ!?いないや~

「すいません担当者が席を外しておりまして。。」

「はぁ、おらんの?じゃぁあんたでええわ。名前は?」

友行は躊躇したがはっきりと答えた。「わたくし前園と申します。」

「前園さん、おたくの会社どうなってるんかな?わしが買ったときから株価半分やで。もう毎日生きた心地せーへんねん。会社は大丈夫なんかな?」

嫌な電話取っちゃったなと友行は思ったが、片瀬部長から以前研修で聞いた応対を思い出し返答してみることにした。

「さようでございますか、会社としては業績も開示しております通りですので変化はございませんが。」

「変化がないっていい話のひとつくらいないんかい。あんたは何?何年くらいリバーにおるん?」

「今年の4月に入社した新入社員です。」はっきりと答えた。

「そうか新入社員は取ってるんやな、でどこの大学出なん?」

「申し訳ございませんお答えできません。あ、あのう~IR担当者が戻りましたら株主様へお電話させていただきます。お電話番号を・・・・」

友行はこんな電話出なければ良かったと後悔した。

プルルル~プルルル~、プルルル~プルルル~、プルルル~プルルル~、プルルル~プルルル~、プルルル~プルルル~

しかしその後もリバー社のオフィスには電話が鳴り続けた。もちろん新人を含め先輩社員もひっきりなしに電話対応に追われた。後でわかったことだが、この日リバー社の株価は急落し年初来最安値を更新したのだった。友行は電話に出て怒鳴られることを嫌っていたが、途中からどーでもよくなり株主の苦情を聞き流していた。片瀬部長は・・・・、逃げたか??

片瀬部長が席に戻ると椅子に座ることなく社長室へ直行した。何を話していたのか解らなかったが、1時間ほど経ち電話が鳴らなくなってからタイミング良く戻ってきた。

「みんな~、大変だったでしょ!?」片瀬部長は脳天気に言い放った。

ん?っと友行は怒りに満ちた顔をしたが、片瀬部長の話に耳を傾けた。

「株主の言うことは別に気にしなくていいよ。厄介な電話は番号聞いておいてくれればおれが掛けなおすから。うちの株は個人株主が多いんだよ。じいちゃんばあちゃんからデイトレーダーまで1万人超えているから仕方なくて、皆さんにはご迷惑をお掛けしてしまってすまない。」片瀬部長は謝った。友行はこの行為で片瀬部長を見直した。就職してから年上の人に謝られたのはそのときが初めてだったからだ。いつも難題を押し付けてくる上司達より、一番尊敬できる行為だった。

リバーエンタテインメント株を800円、100,000株売りだー!!!

ニックネームSは自分のメルマガ会員向けに自分の取引明細を送信する。

「S株」と題する株式の超人気サイトは毎日10万人が訪れる素人のサイトとして有名だ。月に1000円の会費を払えばSの株式売買の明細が送られてくる。会員はSと同じ銘柄を売買して利益を出したいのだ。現在の会員数は30000人。Sはメルマガで月に3000万円を手にする。

Sの運用資産は54億円。個人投資家としては異常な額を運用いているが、このSが大学生だということを知るものはいない。


「よし、このトレンドからいけば650円まで数日で下げる。そこで買い戻して1.5億利確しよう!」Sが机の上に広げられるパソコンのモニターへ向かいつぶやく。Sは俗に言うデイトレーダーだ。

「あ、もしもし、A君!?おはよう。今日リバー売りを出したよ。それでさぁ~、リバーっていろいろな仕手入ってるよね。ってことは早めに儲けて逃げるか、真っ向から勝負しようかと思うんだけど、どうかな?・・・・まぁ会社の事業なんて映画とかだし、きっと償却とかで得損出して当分株価騰がらないよね。売りまくろうよ!」

そう言って電話を切り、再びチャートが描かれたパソコンのモニターを覗く。

「この会社腐ってるな、どんどん下がれ!!!」

「ごめんごめん、遅くなったね!田淵役員がさぁ~」友行は美咲に声をかけた。

「仕方ないよ仕事なんだもん。お腹すいた~!」

「じゃぁ飲みにでも行く!?」友行は仕事の悩み相談のつもりだったが、美咲とはもっと仲良くなりたかった。彼女である由美を気にする気持ちもあったが、美咲のかわいさに後ろめたさをすっかり忘れていた。

「マック行こうよ~、私ポテト好きなの~」

「え、マック?そうだね、そうしようか。」友行は一気にテンションが下がった。しかし友行は美咲にどうしても相談したいことがあった。


「あのさぁ、今日1000万円見ちゃったよ。ちょっと震えた。この会社って制作会社だよね!?な~んかまだ数日だけど不安でさ。」
美咲はポテトを食べながら応えた。1000万円欲しいぃ~!この会社って上場してるじゃない、だからいろいろな業務をやらなくちゃならないんじゃない?確かに実際映像制作をしてることを全く感じないけどね。株価は良くないよね、2年の10分の1になっちゃってるし。なんかうちのお父さん、私がこの会社に内定したからリバー株買ったのよ。大丈夫かな!?」

「どうなんだろう、おれ株のこと知らないからなぁ。何度も言うけどおれは映画作りたいからこの会社入ったんだからさ、映画やってるとこ見てないから心配で。。。」友行は美咲に弱い部分を見せたくなかったが、同じ状況を共有するものとしてそのときばかりは険しい顔を見せていた。

「ま、もう少し頑張ってみようよ。今度給料出たら飲みいこ!」

友行はこくりと頷き、にっこりと笑った。美咲と次のデートの約束を取り付けた気分だった。