ギュッ。ギュッ。と押し固められる雪の上を歩き

一歩さらに一歩と歩みを進めて行く。

スニーカーの周りの雪が少し溶け、そのしずくが足を冷たくさせる。

しかし、寒さはとっくに温かさへと変わっていた。

雪の中を歩くのは温かいもんだ。

歩く道にたたずむ家々を僕は気にしていなかった。

むしろ、気に出来る状態ではなかった。

ただただ歩くことが、僕には最優先のことだったから。

20分ぐらい歩いただろうか、

さっきまで降っていた雪も降っているとは言いにくくなり、

晴れ間もちらほら見えている。

すると、僕の目的としていた場所がうっすらと見えてきた。

「あぁ。あった。」

もうないかと思った。

一年前より少し大きくなったあの木が目印だ。

僕は見つけた。

「はぁ、はぁ。」

特に走ったわけでもないのに、息が荒くなる。

微妙に早足になっていたのだろうか・・・。

木に近寄ると、目の前には雪が降ったにもかかわらず

大きな池が広がっていた。

綺麗なダークグリーン

透き通っているわけでもないが、何か僕の心を映すようでもある。

周りは静かだ。

雪が周りのあらゆる音を吸収し、

無音の世界を創造している。

『ポタッ。ポタッ。』

涙がこぼれる。

ここに来たら救われると思ったのに甘かったな…。

心の中でつぶやきながらも目からあふれ出るものを止められない。

次第に、涙が現実のものとして僕の中に入り

悲しみがこみ上げた。

僕は…僕は…

これまで幾度となく反芻した考えが

ここで、また蘇り僕を苦しめる。

痛み、苦しみ、悲しみ・・・すべては否定的な事象だ。

ここで、僕が逃げれば何も変わらない。

しかし、考えたくない。

その葛藤に幾度となく答えが出せなかった。

ここに来たのは何のためか。

前に進もう。

だから、僕は歩いてきたんだ。そうだ。

受け入れなければならないことを受け入れよう。
                                      
                       
              <つづく>








もうすぐ1年目 冬

僕は、脱落した。

なにもかもから…

もうすぐ春になると言うのに、朝から雪が降り

縦に落ちる雪と横に流れる雪とを交互に見ながら

僕は電車に揺られる。

そんな、ただただ真っ白で

窓から眺めていると、

「切符を拝見させていただいてよろしいですか?」

僕に業務的な態度で接するのはこの電車の車掌だろうか…

言われたままに、僕は財布から切符を出す。

何を言うわけでもなくその紙切れに判を押し、

僕の手に戻す。

彼は、僕に声をかけることなく

次の客へと声をかけにいった。

「…はぁぁふぅぅ。」

お腹の中の空気が惜しげもなく吐き出される。

ただなんとなく選んだその場所に、

その地に行けば、何かが変わると思った。

でも、そんなの自己満足だってわかってたんだ。

それでも、僕は何かに駆られて歩いた。

脱落した僕に救いを持ち出す希望の光のように…。

雪が交互に降るのをやめ、天からのふわふわの綿のように

落ちるようになり、ゆっくりと電車が止まった。

「ここか…」

つぶやくほどに虚しくなるのは、僕の現状を反映しているのか

それとも、これからの僕を励ましているのか。

雪に包まれた駅を出ても、輝きを得ない白の雪が

僕の足跡だけを刻む。

さあ、進もう。

僕の目の前には道がない。でも、行きたい場所はわかってる。

マフラーの雪を払い落とし、僕はいつものスニーカーで一歩を踏み出す。


3年目  春

僕は、坂道を降りていく。

天気は晴れ、快晴とは言いにくい。

周りには、民家もちらほらあるだけで

後は畑や田んぼで埋め尽くされている。

人も見かけなければ、車なんて通るわけない。

僕は、ただただその坂道を下り川原へと向かう。

何をするわけでもなく、川の流れを見る。

さらさらと流れる川は、気持ちを静めてくれる。

僕にまとわりつくこの世のものから僕を解放するかのように…