日本航空船、気球協会設立趣意書
人間は古くから鳥のように空中を飛行することを空想し、雲のように空中に
浮游することを夢想してきました。
大空にかけた人類の夢と期待は、今世紀に入つて急速に現実となり、遂に、
大気圏外に飛翔する宇宙時代の緒を開くまでに至りました。然し、このような航
空手段の驚異的発展にもかかわらず、なお一面的・部分的開発に止まつている事
実を指摘しなければなりません。
現在の飛行機による航空手段は主として軍事利用の要求から異常な発達をとげ
より速く今日距離飛行することは出来るようになりましたが、速度と機体の大型
化に伴つて、大滑走路を必要とするに至りました。
航空船や気球は浮游を主とする航空手段であり、攻撃に対して弱いという致命
的欠陥のため、軍事上の利用価値を失いましたが、飛行機がプロペラ・エンヂ
ンやジエツト・エンヂンによる推進力から揚力を得るのに対して、空気より軽
いガスの浮力を直接利用するという、原理上・構造条の決定的な相違があります
然し、それ故に、航空船や気球は本質的に非軍事的平和的航空手段であり、
浮游力・推進方法等に関する問題点の技術的解決によつては、飛行機にも劣らな
利用価値が十分に期待されるものであります。
特に、陸上交通、海上交通が技術的にも経済的にも社会的にも限界に達しつつ
あるとき、貨客の輸送手段としての航空船の研究・開発は時代の要求となりつ
つあるといいえますし西独や米国ではすでに新しい見地から研究に着手しております。
一方ガス浮力を利用する空のスポーツとしては、自由気球、なるものが古くか
ら欧米にあります。然しこれはスポーツといわんより一種の冒険的要素を持つ反
面、甚だ効果につくため、五十年来今日も尚欧米一部の人士によって行はれて
いますが、欧米においてすら水上ヨツトほどの普及をみておりません。まして
わが国のように四面海に囲まれた地理的条件下では欧米流の自由気球を楽しめ
る地域は極めて一部に限られ、今日迄実施者も皆無であります。然らば日本で
は自由気球のような夢のあるスポーツを楽しむことが不可能であるか?、実は
自由気球だけが気球スポーツでなく、もつとスポーツ性の豊かな、然も普及性
の高い気球スポーツの存在が全然日本人によつて発見指摘されており、称して
ジヤンピング・バルーンというものですが、昨年欧米気球界にその概要が紹介
されて以来、彼等の間ではこれを「スペース・ホツピング」と呼称し各方面か
らの機体が寄せられつつあります。
国土の狭いわが国では経済の酵素成長に伴い若人達は徒らに機械文明に追いま
くられ、生活の源泉とも鳴るべきレジヤーも亦過密のとりこのとなつて、健康的
な精力のはけ口を失い惹いてはては増大する社会悪の過密すらもたらし、国民を
して向かうべき指標を見失わせつつあるという誠に憂うべき現状ではありますま
いか。
若人達の夢を天に継ぎ、団体スポーツとしての豪快、スリルに富むジヤンピング
バルーンなり気球遊技を通じて、次代を背負うふ彼等の心身の鍛練、体育の向上
精神昂揚に資し、然も今日世界注目の標となりつつある新しい気球遊技の普及
を期し度いものであります。
敗戦と占領という特殊事情のため抑制されてきたとはいえ、戦前の優れた実績
をもつ日本の航空関係の研究・開発技術が今後の新しい分野としての航空船に
注目すると共に欧米在来の気球材料を以つてしては企て得なかつた新しい気球
スポーツの可能性が考えられるに至つている事実は、わが国の産業開発のため
に、当協会設立の意義が十分存るものと考えられます。よつて、ここに日本航
空船・気球協会を設立し、個人たると法人たるとを問はず、広く同識者の結集
を求め、継ぎの事業を行うことといたしたいと存じます。
1 航空船の研究・開発の助成と促進
2 気球によるスポーツの開発と指導
3 航空船・気球に関するP・R活動
4 航空船・気球スポーツ開発に必要な取締法規類についての献策
協会の活動資金は、会費、寄付金品、助成金による他、航空船・気球による広
告、宣伝等の積極的事業家による事業収入によつて、充足する途もあるものと
考えます。
協会の組織、規約、運営については、発起人会の協議によつて、決定することと
し、ここに設立趣意をご披露し、発起人として、gぽさんどう、ご参画くださるよう
御勧誘申し上げる次第であります。
昭和四十四年四月
日本航空船・気球設立準備会
代表 近藤 石象
全国科学技術団体総連合気付
東京都千代田区北ノ丸公園二の一 科学技術館内
〒一○二
電話 (212)8471 (代表)内線270
