ある日、女性から一本の電話。私のホームページ“十夢の会”(捨てられた犬猫の救出活動と殺処分ゼロを目指す会)を見て電話を掛けてきたのである。
「あのう、そちらの団体では犬を飼ってもらえるんでしょ?」
のっけから当然の様な口ぶりに違和感を覚えた私。
「えっ?ワンちゃんどういう状況ですか?」
「・・・どういう状況って何ですか?」
「つまりどういう事情で犬をこちらで飼う依頼をされているのか聞いているんです」
「今度私に子供が生まれるので家を移るんだけど、そこは犬が飼えないマンションなのでそちらでお願いしようと思って」
「それだったら犬が飼えるマンションを探されたらどうですか」
「それができないから頼んでいるんでしょう」
詳細は記憶に無いが、同じ様なやりとりを繰り返す内に、段々相手の語気が強くなってきた。こちらも腹が立ってきた。
「そもそもワンちゃんはこれまであなたが愛情持って飼われていたわけでしょ? ワンちゃんを手放すことは、家族の一員を手放す事と同じではないですか。先ずは一緒に住める所を探したらどうですか」
すると途中で、
「お前が・・・」
ガチャン、と切られた。
お前がと言われた後、相手の女性が何を言ったのか、今だに思い出せない。強い憤りを覚えた。犬の命を何だと思っているのだろう。この女性は今まで飼っていた犬に愛情は無かったのだろうか?自分の子供が生まれるからといって、これまで飼っていた犬を当然の様な気持ちで引き取って貰おうなんて。捨てるのと同じだ。もし愛情と優しさを持って関わっていれば、余程の事が無い限り、手放す選択はない筈。これ程ひどくはないが、ホームぺージを見て、こちらへ連絡すれば右から左に引き取って貰える、そう思って電話を掛けて来る人が後を絶たない。
もう一つ許しがたい電話でのやり取りがある。ある女性から動物愛護センターから中型犬の引き出しを頼まれた。動物愛護センターは小型犬の引き取りは比較的に多い。中型犬や大型犬は子犬でない限りなかなか引き取り手が無い。そんな中、福岡県田川市のおばあさんから、「中型犬で10キロから15キロのワンちゃんば引き取りとりたいとです。ある程度歳とってても構わん。できるだけブサイクで引き取り手が無さそうな可哀そうな犬ば引き取って面倒みてやりたかとです」
こんな素晴らしい考えの方も居られるのだと素直に思った。嬉しくなって妻と二人で動物愛護センターへ出向き、良さそうな子(仮の名 マサオ)を紹介してもらった。動物愛護センターでマサオ君は、既に3か月拘留されていた。顔はもらい手が無い程ブサイク。でも落ち着いている。毎日しっかり訓練を受けていたのだ。センターのスタッフの方の勧めで、私がマサオ君のリードを引いて少し散歩してみた。私にしっかり寄り添って歩いてくれた。両足をそろえて立ち止まると、マサオ君もきっちり止まり、さらにお座りして私の顔を見上げた。「ほら、ちゃんとできるんだよ」と得意げな顔。思わず頭をさすってやった。今まで動物愛護センターから引き出した中でも秀逸のお利口さん犬だった。この子ならきっと喜んで貰える。そう思ってすぐに相手の女性へ連絡しマサオ君の素晴らしさを伝えると、案の定喜んでくれた。写真もメールで添付して送り、体重も15.4キロだと伝えた。そして引き取りは3日後と決まり、こちらからお連れする約束まで取り付けた。先方は、
「ワンちゃんに掛かる費用とか払わんで良かとですか」
「健康チェックから去勢手術・ワクチンなどすべて動物愛護センターの方でやってもらってます。費用は掛かりません」
「でもこちらまで来てもらう交通費とか、いくらかお礼せんで良かとですか?」
「私達はボランティアなのでお金は頂きません」
先方は感激した声に変わった。
翌日、不在着信の電話が入っていたので連絡を返した。すると、
「実はワンちゃんの体重が15.4キロあるので息子が止めときない、と言うとです。息子の意見ば聞かんわけにはいかんもんで、今回の話はお断りします」
急転直下、あっさりと断られた。わずか400グラムオーバーでお断り。 何度も電話やメールで確認した挙句先方に振り回されてあっけなく幕切れに終わった。怒りの余韻だけ残った。幸いマサオ君は、その後別の団体さんに引き出されて、里親さんに大事にされている。
