猫は年を取ると目に見えて動きが鈍くなって寝てばかりいるようになります。
私も最近は動き回るのが面倒くさくなってきました。
まあ、それでは体に悪かろうとスポーツクラブに入会いたしました。
スポーツクラブも進歩が早いもので、非常に使い心地がよくなってまいりました。
昔は休息するためにお金を使っていたのに、今は運動するためにお金を使う時代になってしまいました。
私が大学生のとき、先輩の太田さんの別荘によく遊びに行きました。
軽井沢の中心部にあって、すばらしく豪華な別荘でした。
太田さんの実家は埼玉の大きな病院で、太田さんは5人兄弟の次男でした。
4人が男、姉が一人だったようです。
5人兄弟のうち4人が医学部で、長男の方だけが無職でした。
したがって、太田さんが病院の跡継ぎになりました。
長男がいかれてしまったのは、勉強のしすぎだと太田さんは言っていました。
太田さんは高校の先輩でもあったので、私が医者になってからもよくアルバイトに行きました。
複雑怪奇な家で、家族の中の関係がさっぱり分かりませんでした。
太田さんが院長でしたが、説得力が弱いというか、バカ正直と言うか、患者がぜんぜん信用しなくなってきました。
頭はいい人でしたが、医者にはまったく向いていない人でした。
太田さんのお父さんは高齢のため、すでに引退していましたが、患者たちは太田さんのお父さんに診てもらいたいと言い出しました。
患者から信頼を失えば、個人病院はおしまいです。
太田さんのお姉さんが助っ人で手伝いに来ました。
弁舌さわやかで、患者の信頼も徐々に回復してまいりました。
しかし親子関係とは難しいものです。
太田さんのお母さんは、このお姉さんが好きではなかったらしく、何度かケンカした挙句に太田さんのお姉さんを追い出してしまいました。
またもとに悪い状態に戻ってしまいました。
優秀な医者の弟たちが二人いましたが、この人たちはさっさと見切りをつけて家を飛び出してしまいました。
まったく行方知れずになってしまったようです。
もっとも行方が分かったところで絶対に戻ってくるはずもありませんでした。
この当時私もアルバイトに行って太田さんの仕事を見ていたのですが、教条的というか、患者にしてみると説教されているような話し方をしていました。
だんだん患者は離れ、ついに倒産してしまいました。
太田さん一家は病院を追い出され、太田さんのお母さんの実家で暮らしているそうです。
病院の倒産なんて今は珍しくありませんが、それにしても何とかならなかったのでしょうかねえ。