この不景気で私の友人が随分リストラ、要するに会社をくびになりました。
私の親友のA.O.は建設会社に勤めていたのに首を切られてしまいました。
彼は国立大学の建築学科を出て優秀なやつだったのですから、建設業界の不況も想像を絶するものがあります。
高校生と大学生の女の子がいましたので、いきなり生活が困窮してしまいました。
奥さんは音大出だったのですが、音楽関係の仕事は見つからず、パートで働くことになりました。
しかし当の本人が働く気がないようでした。
「お前が何でくびになったんだ」
「俺たちぐらいの年令が一番くびをきられるんだよ。収入の多い中高年がターゲットだろうな」
「法律的に問題はないのか」
「もちろんあるさ。これも差別のひとつだからな」
「どうして文句を言わないんだ」
「業績が悪化したのいってんばりさ。せっかく建築家になってこれじゃ死にたくなるぜ」
「建設関係、そんなに悪いの」
「不況の最先端だろうな。住宅はすでに供給過剰で仕事はないよ」
「これから先どうする。仕事見つけたのか」
「こんな年になって仕事なんてないよ。探すだけ無駄だよ」
「何か資格はないのか」
「宅建なんてどうでもいい資格持ってるけど、仕事を探す役には立たないね」
「そうは言ったって生活が困るだろう。奥さんばかり働かせるのも可哀そうじゃないのか」
「それならどこか紹介してくれないか」
「どこでもいいならいくつか当たってみるけど、少しは妥協してくれないと仕事はないよ」
「何でもやるよ。とにかく頼む」
私の知り合いに4流出版社の社長がいました。
いかがわしい本ばかり作っている会社でした。
社長に話しましたらOKしてくれました。
まともな社員が欲しかったそうです。
「青山、出版社で働いてみろよ。ちょっとAV系だけどな」
「いいよ、大助かりだよ」
青山はよく働いていかがわしい本を作っていました。
AV女優と仕事ができるのが楽しいようでした。
けっこう喜んで仕事をしていたので、趣味と実益を兼ねていたのかもしれません。
こんな出版社を紹介したのがよかったとは思っていませんでしたが、今は仕事があるだけで満足しなくてはいけません。
ただ、彼は仕事の内容は家族には絶対に話さなかったようです。