20歳になった私が付き合った彼は
ミニマリストでした
今でこそ「ミニマリスト」というワードは
世間でも広く認識されていますが
25年も前にそんなワードはなく
1995年、96年あたりの大阪は
ピッタリ小さめの古着Tにダボっとしたジーパンを腰で履き
レッドウィングのブーツのハマラー男子
Tomorrow never knowsのPVの櫻井さんのような
大きめの襟付きシャツを第二ボタンまで開けてスリムパンツスタイルのミスチル風男子
一人暮らしの若者の部屋は
雑多で物が溢れ
壁にはポラロイド写真をベタベタ貼り付けるようなインテリアが
私の周りでは流行っていた
物や流行が目まぐるしく変わる時代に
私ももれなくそのひとりだった
そんな私がお付き合いを始めた人の部屋は
エレクターにテレビとプレステしかない部屋に住んでいました
家電は冷蔵庫のみ
ベッドも飾り物も机も椅子もカレンダーすらなく
生活感がまるで感じられない部屋で
快適に生活していた人
私の生活スタイルとは真逆の感覚に
かなりの衝撃と新鮮さを感じ
彼の部屋に初めて入った時は
その何もない空間に
ワクワクしたものでした
掃除道具は
クイックルワイパーと雑巾とスポンジのみで
洗剤もない
毎朝布団を畳んでクローゼットにしまい
クイックルワイパーでフローリングの埃やゴミをスイスイと掃除してから家を出る
そりゃそうだ、動かす家具も何もないから
毎日の掃除に
手間も気合も要らない
毎日スポンジひとつで
トイレに手を突っ込んで洗い
お風呂上がりにも必ず浴室を拭き上げて出てくる
彼とは一年半付き合ったけど
その後も物が増えることは全くなく
自分の生活に必要最低限のものを知っている人でした
中学生の時から
「Begin」を愛読していた彼からは
長く愛されるもの
しっかりと作られているもの
こだわりのもの
そんなものをたくさん教えてもらった
うんちくと言われればそうかもしれないが
彼から教えてもらったものは
25年経った今でも
「名品」として取り扱われているから
なかなかのものだなあと感心する
ドゥニームのジャストサイズデニムに
セントジェームス
グッチのローファーを履く人は
あの頃の大阪では
有名セレクトショップの店員さんか、というくらい珍しく
服も靴も納得いくもの
自分に似合うものを
春夏秋冬全部で15点くらい
靴も3足ほどを
丁寧に手入れをして大切にしていた
そんな彼の姿は
いつ会っても
おしゃれで洗練されているように感じた
あれこれと着飾る私が
なんだかチンケに感じるほどに…
ミニマリストな彼と付き合って
物の価値を知り
自分のキャパを超えない
もしくは半分ほどの余白を残した生活というのは
迷いがなくやるべきことが明確で
余裕があり満たされているように見えた
それは時間の使い方にも無駄がなく
彼は
空いた時間はジムに泳ぎに行って
気持ちと体を整えて
リフレッシュさせて帰ってくる
気持ちが安定している
お金の使い方も
何に対価を払うのか
自分の中ではっきりしていたから
後悔や反省がなく
物に執着していない
物に振り回されない
物に支配されない
物に依存しない
私はと言えば、
内面の自信のなさを
たくさん服を持ち着飾ることで
フィルターをかけたつもりになってるような…
昔では珍しいライフスタイルの人との時間を
今思い出すのはメッセージなんだと思う
今の私の課題として
物との向き合いが必要だと
強く強く感じるわけで
ミニマリストになりたいのかと言われれば
それもちょっと違うんだけど
今の私の生活に
物や服が多すぎる
昔のミニマリストな彼が
たくさんアドバイスをしてくれているな、と
今までとは違う気持ちで
断捨離しています
ここは大勝負にしたいと!
【追伸】
ミニマリストな彼は
料理もめちゃくちゃ上手な人でした
男の人が作ってくれる料理って
女心を鷲掴みにするな、と
彼が作ってくれたロールキャベツの味は
同じように作っても超えられない気がする
胃袋を掴むのは
男女共通なのである