毎週水曜日、恒例のガストランチ。

いつものようにドリンクバーのコーヒーを飲みながら、同僚と仕事の愚痴をこぼす。


どこにでもある、なんの変哲もない、平和なはずの午後でした。


スマホが鳴るまでは。


画面に表示されたのは、見たこともない番号。


不審に思って調べてみると、


「〇〇銀行」


という文字が浮かび上がりました。


その瞬間、ざわついていた店内の音が、スッと消える感覚がしました。


「…もしもし」


受話器越しに聞こえてきたのは、冷淡な銀行員の声。


「〇〇様の自由融資枠の引き落としが確認できておりません。13万円ほど、未払いのままですが…」


13万円。


頭の中が真っ白になりました。


夫からは毎月「ちゃんと入金した」と報告を受けていたはずなのに。


その瞬間、2年前の忌まわしい記憶が濁流のように溢れ出しました。

• マイホームの頭金を「紛失した」と言い張った夫

• 娘のために貯めていた児童手当を勝手に使い込んでいた夫


「またなの?」

「結局、あの時から何も変わっていなかったの?」


信じたいという微かな希望が、音を立てて崩れ落ちました。


私は震える手で、夫に電話をかけました。


「ねえ、銀行から電話があったんだけど。どういうこと?」


返ってきたのは、あまりにも軽い、他人事のような一言でした。


「あー。」


「10万落としちゃって、やりくりしてた。実は他にもカードがいっぱいで、90万くらいあるんだよね。…ごめん、今仕事中だから、夜話そう」


一方的に切られた電話。


目の前のランチは、衝撃でどうしても手を付けることができませんでした。


悲しみ? 絶望?


いいえ、その時の私を支配したのは、腹の底からせり上がってくるドロドロとした黒い感情。


「こいつ、殺してやりたい」


その一点だけでした。



第3話:一番長い午後(後編)〜殺意が涙に変わった瞬間〜へ続く。日曜日に更新します)