仕事終わりに、26歳の同僚から、思いつめた表情で、ご飯行きませんか?と誘われて、金曜だったこともあり、気軽に「いいよー。」と答えた。
ハンサムで優しく、失敗はあるものの、仕事ができて、若い女子から「王子」と陰で言われている。
誘われたのが自分だけだとわかったのは、店の前で待ち合わせた時だった。
てっきり若い女子達もいるものだと思っていたのだが、彼が来て、「行きましょうか。」と言われた時に、「他の子は?」と聞いたら、「いません。」と、この時も、なんだかとても必死なような、情けないような、そんな顔をしていた。
どうしたんだろうとは思ったけど、仕事の悩みかもと思い、というか思い込んでたこともあって、先輩と飲みたいのかも、悩み相談かも、と私は思ってた。
「飲みますか?」
飲んだ方が良いのかなと思い、私はカシスオレンジ、彼はビールを頼む。
お酒が来るまで、話さないかなぁなんて気軽に考えていたら、
「この場所、すぐわかりましたか?」
「ナビがないと来れなかった。」
「ここ、会社の人とか、滅多に出会わないから、誰も知らないかなと思って。」
だいぶ深刻な悩みなのか、会社の人に聞かれたくないのか、恋話とかなのかなぁ...
「よく来るん?」
「最近見つけて、1人で来てました。」
「男性は、1人で飲みに行けるから、うらやましい。」
「吉村さんは、1人では飲みに行かないのですか?」
「行かないというか行けない。方向オンチなのと、1人飲みなら、宅飲みの方を選ぶかな。飲み屋さんで、友達見つけたら良いやんとか言われるけど、コミュ障なのに、できるわけない。」
と、私が笑っていたら、
「じゃ..彼氏さんと行けば....」
「いたらいたで、たぶん宅飲みになると思うよ。」
「今はいない?」
「何が?」
「付き合ってる方とか。」
「いないなぁ。ちゅうか、彼氏か......考えてみたら恐ろしいことに、7年いない。笑えない。」
私が長いこと恋愛などに疎いという事を、それとなく伝えたつもりだった。
42歳でそれまで7年付き合ってた彼氏と別れてから、もう良いかなと、色々諦めたし、結婚もしたくない。
もはや、私マニアかストーカーくらい、執着してくれる男性でも現れない限り、付き合わないだろうなぁと思ってる。
「梶君は?いるならアピっとかないと、会社の女の子達、狙ってるよ。」
というと、
「僕は...いません。でも、好きな人はいます。」
「うん。」
やばい。自分から話題を.....そう思ってた時に、飲み物が運ばれて来た。
よかったよ。ナイスだよ。
「食べ物は、常連の梶君の任せる!」
そう言って、なんとか恋話から遠ざけてみた。
スラスラと注文しているところを見ると、何度も来ているようだった。きちんと私の好き嫌いも聞いてくれて注文が終わり、店員さんが去ると、何となく沈黙してしまった。
