レッスン仲間の皆さんと飲んだ帰り道。
ふと先日「情熱大陸」で心に残った話を思い出しました。
天才フラメンコギタリスト「沖仁」さん。
日本では絶大な評価を受けながら、本場スペインではなかなか認められなかった沖さんは、過去の自分を振り返りながら、昔は、自分のギターでこうしてやろう、ああしてやろうという「北風」のような考えで演奏していたけど、徐々に「太陽」のような存在でありたいと思うようになった、と語っていました。
自宅で小さなお子さんを前にギターを奏でる彼の表情は、優しさで溢れていて、太陽そのもの。聴いているだけで、温かく包み込んでもらえるような、優しい音色でした。
北風から太陽に変わったという沖さんは、以前は勝ち残れなかったスペインの権威あるフラメンコギター・コンクールで、この夏日本人として初めて優勝されました。
「北風と太陽」。
沖さんが語っていた心境の変化に共感したのは、まさに私自身の想いとぴったり重なったから。
私も昔は「自分のしゃべりで人をこうしたい、あーしたい」ともっと大きなこと、えらそうなことを考えていたような気がするんですよ。
でも、いつからかそういう欲がなくなりました。
ただ聞いて下さる方の気持ちがほっと和んでもらえたら嬉しいとか、優しい気持ちになってもらえたらそれだけで幸せと思うようになりました。
そう思うようになって、聞いて下さる方の意見も変わったように思います。
気持ちばかり先走って、突っ走っていたあの頃よりは、余計なものがちょっぴりそぎ落とされてきたのかな。
ようやくこの年になって、少しずつ自分のあり方というものが見えてきた気がします。
綺麗事だけでは渡っていけない世界だということも重々承知していますが、やはり人として、表現者として、「北風ではなく太陽でいたい」と思うんです。
無理やり何かを感じてもらうものではなく、押しつけるものでもなく、寄り添うものでありたいな、と。
沖さんの言葉は、そんな自分の想いを確認させてくれました。
沖さんのギター、いつか生で聴いてみたいなぁ。