2024年5月27日
映画 ”Missinng”
(幕張イオンシネマ)
石原さとみの熱演がけっこう話題になっている。個人的には熱演は認めるが、並み以上の女優が本気を出せばみなあれくらいはできるんじゃないかという気がする。いや、けして石原さとみの演技を評価しないわけではない。こういう人間性むき出しにした姿を演じるのはやはり覚悟と努力が必要だ。でも、彼女はもともとそういう演技力はある人だと思っていたので、ことさらに今回驚くほどのことではないと思ったのだよ。
石原さとみが、“シン・ゴジラ”に出演したとき、役柄上英語でしゃべる場面が多々あって、その英語をけなす評価をけっこう見かけたが、それには納得がいかない。私アメリカに8年滞在経験があって、仕事上(米語を母語とする)アメリカ人とコミュニケーションをとっていたのは当然だが、その経験からは石原さんの英語がひどいとは全く感じなかった。あれだけできれば more than enough だと思いますよ。
思うに、ほかにけなすところがなかったということなんだろうか。
さて、この映画に戻って、私感銘を受けたのは共演(石原さとみの夫役)の青木崇高の渋い演技だった。ゴジラつながりというわけではないが、“ゴジラー1.0”に青木さん出てたとき、いや~この俳優渋いなと感じたことだった。今回も、ごく自然な姿で、おおげさな演技はないのに存在感を漂わせ、そして最後の慟哭する場面。これはぐっときましたね。
中村倫也については、かねがね、そんなにものすごくかっこいいわけではないのに、なぜここまで二の線を貫徹するのか不思議でならなかった。この作品でも、報道の側と報道される側の間に立って苦悩する姿を十分以上に演じてはいたものの、彼ってもっとコミカルな役の方が似合うんじゃないのという印象がぬぐえない。
石原さとみの弟役の森優作も秀逸でしたね。知らない俳優さんですけど。
視聴率優先のテレビ局だとか、被害者を誹謗中傷するネット民だとか、現代社会の病理的現象についてはさんざん論評があるだろうから、あえてコメントは割愛。
ひとつだけ、私の見方が悪いのかもしれない。この映画どういう落とし前をつけてくれるのかなと、話が終わりに近づくにつれて不安になってきたのだが、最後やはりわからなかった。あれはどう解釈すればいいんですか?
【キャスト】
◆沙織里;娘を探す母(石原さとみ)
娘が突如失踪してしまい、情報の荒波に巻き込まれてしまう。
娘の失踪時に好きなアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷を受ける。
◆豊;沙織里の夫(青木崇高)
事件に向き合う姿勢が冷静だと取られ、妻との温度差から夫婦喧嘩が絶えなくなる。
◆圭吾;沙織里の弟(森優作)
美羽が失踪する直前まで一緒にいたことや挙動不審な言動から誘拐犯の疑いをかけられる。
◆美羽(有田麗未)
失踪してしまう沙織里の娘
◆砂田;地元テレビ局の記者(中村倫也)
沙織里たちの取材を誠実に続ける。局上層部の意向で視聴率獲得のため、世間の関心を煽るような取材の指示が下る。
◆三谷(小野花梨);地元テレビ局の新人記者
この人も知らない俳優だけど、なかなかよかった
◆不破;地元テレビ局のカメラマン(細川岳)
◆テレビ局の番組デスク;砂田の上司(小松和重)
◆圭吾の職場の先輩(カトウシンスケ)
ペナルティのワッキーに似てるような。“大名倒産”にも出てたっけ。
◆駒井;砂田の後輩記者(山本直寛)
◆村岡;失踪事件の担当刑事(柳憂怜)
柳ユーレイって聞いたことあるな
◆沙織里と圭吾の母親(美保純)
この人こんな出番の少ない役で使う理由はあるの。あ~でも孫のいる役で出るようになったんだね。ちょっと感慨深い。
【スタッフ】
◆監督・脚本 - 𠮷田恵輔
◆音楽 - 世武裕子
◆製作 - 井原多美、菅井敦、小林敏之、高橋雅美、古賀奏一郎
◆企画 - 河村光庸
◆プロデューサー - 大瀧亮、長井龍、古賀奏一郎
◆配給 - ワーナー・ブラザース映画
◆企画 - スターサンズ
◆製作幹事 - WOWOW
2024年 日本 119分
企画が河村光庸でスターサンズとなると何か政治性があるのかと思ったがそんなことはなし。