2023年12月16日 

 

 今年の漢字に『税』が選ばれたんだそうだ。

  あんまりいいセンスとは言えない気がする。

 増税の議論が盛んとか、納税者の意識が高まっているとか理由はいくらでもつけられそうだが、「増税メガネ」と揶揄される岸田首相にすればあまり面白くないかもしれない。

 

 どこかのテレビ番組で誰かが言っていたのは『大』。

 今年のNPBは大阪の2球団で日本シリーズを争った。正確には、阪神タイガースの本拠地阪神甲子園球場は兵庫県西宮市にあるし、法人としての株式会社阪神タイガースも同様である。そういう意味では大阪を代表するプロ野球球団はむしろオリックス・バファローズということになるが、まぁ世間的にはタイガースは大阪のチームというイメージが強い。

 

 そして、今や世界一のプロスポーツ選手になった大谷翔平選手。

 

 『税』なんてネガティブなイメージが強い。世相を表す漢字としてはいかがなものか。個人的には『大』の方が今年の漢字としてはふさわしい気がしましたよ。

 

 主催者の日本漢字能力検定協会というのは、あの愚にもつかぬ「漢字検定」を実施している団体だろう。その程度のものと受け止めれば格別不興も催さない。『流行語大賞』と同様、年が明ければ誰も覚えてないというくらいのものだろう。

 

 それはさておき、考えてみれば税金て怪しい。国はいったい何の権利があって税金ふんだくってるのか?もちろん国あるいは地方公共団体は、インフラを整備し、社会保障や警察、消防、自衛隊等、個人や私企業レベルでは用意できない公共サービスを提供してくれる。
 しかし、少なくとも私は、国あるいは地方公共団体と契約を交わした覚えはない。明示の契約がないとすれば暗黙の契約関係にあると考えねばならないのだろうか。

 

 近代社会において国家という枠組みが必要だということは理解する。生まれた瞬間に国籍が決まるというのも、その延長上にあると考えるしかあるまい。しかし、父系で決まる国もあれば誕生地で決まる国もある。他重国籍を認める国もそうでない国もある。

 たとえば日本国籍者を父に持つ者がアメリカで生まれた場合、原則的に日本国籍が与えられ、一方米国籍は自動的に取得することができる。日本は他重国籍を認めていないので、日本当局への出生届とともに日本国籍留保の届け出をしないと日本国籍を将来失う恐れがある。

 

 さて、徴税当局は国籍には関係なく税金をふんだくろうとする。その管轄地にいる人間には公共サービスの対価としての税金を徴収する権利があると考えているようだ。たとえば所得税はその所得を稼いだ場所で税金がかけられる。大谷さんが10年間で1,000億円超の契約をドジャーズと交わしたが、大谷さんは税務上日本の非居住者であるから、日本の税務当局が課税することはむずかしい。97%後払いと言われる10年後以降にぜひ日本に帰ってきてほしいと願うくらいが関の山だ。

 

 金持ちはいろいろ考えるもので、なんとかして徴税を逃れようとする。


 贈与税は、日本では受贈者に課税される。一方米国では贈与者に納税義務がある。そこで、ある日本の富裕層が、たまたま米国に駐在中の息子のところにでかけ、そこで何らかの手段により贈与をしたとする。息子は米国における受贈者だから贈与税の支払い義務はない。親の方は米国においては税務上非居住者であるからこれもまた贈与税の対象とならない。

 

 実際このような事例が発生したらしい。そこで税務当局が持ち出した理屈は「税の精神に反する」。要は、払うべき税があれば払え、誰かが払え、ということなのだ。払わなければ取る。

 なお、その税務当局の意向が働いて、現在では上記の手法は通用しない。

 

 

 こんなことを考えた。

 日本の一般的サラリーマンにとって、住宅を購入することは人生の一大目的である。一方親が年老いてくると相続についても考えなければならない。

 そこで、親が所有する居宅を息子が買うことにした。金はない。なので親に支援してもらう。親子間で金銭消費貸借契約を交わす。要するに私家版住宅ローンである。その一方、親は住むところがないと困るからその住居に引き続き住む。名義はすでに息子のものであるから、息子との間で不動産賃貸借契約を締結することになる。

 さて、住宅購入資金に係る金銭消費貸借契約の元利返済金額と、その住宅の賃貸借契約の賃料をバランスさせればどうなるだろうか。

 

 住宅の名義は息子である。資金は親に融通してもらったが、その分割返済金は家賃で相殺されるので実質的な負担はない。親の方は全く生活に変化はない。親がやがて息子より先に死亡したとして、住宅はすでに息子のものだから相続の対象ではない。つまり相続税はかからない・・はずだ。

 

 住宅の名義を変える際の最初の資金のやりとりを偽装・・もとい調整する必要はあるが、金銭的負担が実質ゼロで所有権を移転し、かつ相続税を回避することにならないだろうか。

 

 われながらグッドアイデアと思って、さる税理士に得意げに披露したことがある。答えは「それは・・税の精神に反しますね」。

 

 それでは徴税当局に訊きたい。

 現在の税制では、消費税は商品の価格全体にかかることになっている。アルコール、ガソリンについては価格の内に酒税、ガソリン税(正確には揮発油税及び地方揮発油税)が含まれているが、消費税は、その酒税、ガソリン税を加えた全体の価格に賦課される。

 たとえばわかりやすく、ビール1本の価格が100円だとして、そのうち50円が酒税であるとする(酒税の税率50%)。商品本体の価格は50円である。本来であれば消費税は本体価格の10%つまり5円であって、消費者の支払う価格は酒税をくわえて105円であってしかるべきだ。ところが、先に述べたように、日本の消費税は酒税を含む価格に課税されるので、100円の10%の10円である。これは典型的なTax on Taxであって(酒税という税金にまた消費税という税金を賦課している)、国家レベルのぼったくりと言うべきだ。

 

 システムがどうのと必ず言い訳をするだろう。私が米国に住んでいたのはもう30年近く前になるが、その時のアメリカでは、アルコール、ガソリンいずれも、酒税、ガソリン税を控除した本体価格に対して消費税(正確には売上税)を課税していた。今の日本においてできないなどという理屈が立つか。

 

 そもそも消費税の最終負担者は末端の消費者(一般国民)である。ビールは消費するが、酒税は消費の対象ではないぞ。

 これは税の精神に反していないのかっ!!

 

 消費税導入のころ、このからくりを知った私は頭にきて、集団訴訟でも起こしてやろうかと考えたが、お上はちゃんとぬかりない。

 

消費税の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額には、酒税、たばこ税、揮発油税、石油石炭税、石油ガス税などが含まれます。これは、酒税やたばこ税などの個別消費税は、メーカーなどが納税義務者となって負担する税金であり、その販売価額の一部を構成しているので、課税標準に含まれることになるものです。』ー国税庁 消費税基本通達10-1-11

 

 個人で裁判起こしても勝ち目はないので念のため。