2023年11月4日

 

『松田理奈 ヴァイオリン・リサイタル』

(東京オペラシティコンサートホール)

 

ヴァイオリン 松田理奈

ピアノ 清水和音

 

【プログラム】

◆モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第27番ト長調KV379ト長調  

◆J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004
◆ベートーヴェン:バイオリン・ソナタ第9番 イ長調 Op.47「クロイツェル」
◆アンコール クライスラー 前奏曲とアレグロ

 

 

  松田理奈さんは、サントリーホールでの演奏が印象に残り、今回のリサイタルのチケットを取った。

 ここでも書いたことだが、松田さんはステージでは常に裸足で演奏するらしい。今回バッハの無伴奏パルティータを終えてカーテンコールに応えて小走り気味に出てきたとき、ドレスの裾から素足が見えた。

 今年5月に浜離宮朝日ホールで聴いた周防亮介さんのヴァイオリン・リサイタルでも、同じバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータがプログラムに組まれていた。周防さんの場合は時に靴音が響き、それはそれで得も言われぬアクセントとして聴いたのだが、それもこのレベルのアーティストであってこその話であろう。

本日のコンサート 周防亮介 | 小人閑居して不平を鳴らす (ameblo.jp)

 

 会場の空調がよすぎて少し寒いくらいであった。無伴奏曲ではその空調の音すら聞こえてしまう。浜離宮朝日ホールではそんなことはなかった。会場側にご一考願えればありがたい。

 

 松田さんは、この日前半はオフショルダーの黒と銀のドレス、後半はやはりオフショルダーで真っ赤なドレスであった。いずれも松田さんの華やかな容姿によく似あっていた。

 

 さて、これはあくまで素人のたわ言に近い感想なのだが、実はこの日私が感じ入ったのは清水和音さんのピアノである。ヴァイオリン・リサイタルであるから主役はヴァイオリンのはずだ。ところが、そもそも最初の曲からして、モーツァルトが「ヴァイオリン伴奏つきのクラヴィーア・ソナタ」からスタートさせた曲で、完成の段階でもピアノの比重が大きく、むしろヴァイオリンが伴奏として寄り添う印象であった。

 

 昨年7月に、トッパンホールで ”辻彩菜×阪田知樹" を聴いたときは、阪田さんはどちらかと言えばヴァイオリンを立てていたように聞こえた。もちろん曲目によっても違うのだけれど。

 辻彩菜といえば期待の若手ヴァイオリニストである。しかしそれでも阪田知樹のネームヴァリューには及ばない。だからこそ演奏会のタイトルも ”辻彩菜×阪田知樹"としたのだろう。

 

 で、この日の曲目は無伴奏ヴァイオリン・パルティータは別として、後半のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタも含め、やはりピアノの存在感が大きい選曲であったことは間違いない。それはやはり清水和音という日本のトップピアニストの一人に対する敬意という意味なのだろうか。であれば、演奏会のタイトルが「松田理奈ヴァイオリン・リサイタル」というのは実態とは違っているような気がしてならない。

 

 いやいや、松田さんのパフォーマンスが見劣りしているというつもりは毛頭ない。情熱的で、しかし冷静に計算された演奏は、彼女自身が放つオーラとともに客席に染みわたっていった。何の不満もない。

 しかしながら、清水さんの力強い重厚な音の響きは曲を支配していたように感じた。彼自身は強く主張していたようには見えない。よけいな外連を出さず、むしろ抑制気味の演奏でいて、それでもなお存在感を放っていたように受け止めた。

 

 淡々とさらりと難曲をこなすさまは、ヴァイオリンでいえば日本フィルのソロコンサートマスターである木野雅也氏に似ているといったら、それこそ素人のたわ言でしょうね。

 

 今週は毎日遊び歩いておりました。

 月曜;運動不足解消のため週に1回の水泳

 火曜;しのばず寄席(上野広小路亭)昔昔亭A太郎、桂雀々、神田伯山、笑福亭鶴光ら一流どころが顔づけ

 水曜;東京国立博物館表慶館『横尾忠則 寒山百得』展

    東京国立博物館本館 特別展『京都・南山城の仏像』

 木曜;映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

 金曜;映画『おまえの罪を自白しろ』

 土曜;NTTインターコミュニケーションセンター『生きるが如く描く』北斎肉筆の宇宙

    同  ICCアニュアル『ものごとのかたち』

    東京オペラシティコンサートホール『松田理奈 ヴァイオリン・リサイタル』

 

 日曜;アマオケの幕張ベイタウン・オーケストラの第31回演奏会『第九』(千葉市民会館大ホール)

    第九の季節になりましたね。この日のはアマオケなのでノーコメントにしておきます。第4楽章のソリスト4名はプロフェッショナルです。