2023年7月1日

『三大ヴァイオリン協奏曲の饗宴』(サントリーホール)


指揮、チェンバロ:高関健
ヴァイオリン:松田理奈
東京フィルハーモニー交響楽団
 

曲目
◆ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集『和声と創意の試み』 Op. 8より「四季」
◆メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op. 64
◆チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op. 35

アンコール
◆イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番『バラード』より

 

 ヴィヴァルディの『四季』はあまりにも有名だけれど、これをヴァイオリン三大協奏曲の一つに数えるのはあまり聞いたことがない。wikipediaによれば『日本では、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64、ブラームスのヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35、 の4曲のうち3曲を「三大ヴァイオリン協奏曲」又は4曲まとめて「四大ヴァイオリン協奏曲」と呼ぶことがある』そうだから、これは松田理奈さんの「三大ヴァイオリン協奏曲」ということだろう。

 

 

 

 

 

この日の私の席から

 

 この日はP席。ミーハー(死語?)の私は、指揮者や独奏者に近いP席とか2階席両翼ステージ寄りは嫌いではない。しかし、この日、最初の音を聞いた時に、あれ?と思った。この演奏はやはりいい音で聞くべきだった。年金生活者の倹約も場合によりけりだね。

 

 何か月も先の予定はわからないので、いつも割合期近になってからチケットを取ることが多い。当然ながら人気の高い演奏会は売り切れか、いい席は残っていない。くわえて、夜のコンサートは帰りが遅くなるので極力昼のイベントを選んでいる。そういう制約の中で、このチケットがとれたのは幸運だった。松田理奈さん、すばらしかった。情熱と怜悧が同居したかのような演奏だった。

 

 最初のヴィヴァルディは、松田さんの弾き振りということになっていたが、要所要所はチェンバロを担当していた高関さんのリードがあり、実質的には共同作業かと。つい最近も(5月14日)大谷康子さんの弾き振りで、このヴィヴァルディの四季「春」「夏」を聴いたばかりだ。比べるほどの耳を持っていない私が言うのもどうかと思うが、松田さんは華やかでくっきりとした音を奏でていたように感じた。チェロもすばらしかった。

 

 休憩をはさんで後半の松田さんは、前半のワンショルダーの青いドレスから、背中が大きく空いた真っ赤なドレスに身を包んで登場。あまりにも有名なこのヴァイオリンコンチェルトを、松田さんは情熱と冷静をもって奏でていく。美しい。

 松田さんはいつも裸足で演奏するのだという。長いドレスに包まれて足元は見えなかったが、この日も裸足だったのだろう。舞台の床の共鳴を肌で感じたいという理由だそうだ。この日のホールの床はどう響いたのか尋ねてみたい。

 5月に無伴奏ヴァイオリンリサイタルを聴いた周防亮介さんは、時に靴音が響き、私個人は邪魔には感じなかったものの、人によっては気になる向きもあろう。裸足であればそのような心配もない。

 

 最後のチャイコフスキーでは聴衆の心を完全につかみ、最終楽章に至ってその荒ぶるとさえ言える演奏は、最高のフィナーレに突入していくのであった。

 

 Brava!!