2023年3月3日
今月最初の映画はこれ。スピルバーグ監督の自伝的物語とかで、見たいと思っていたのでもなく、まぁ暇だったので。
これはなんだろう、青春映画か家族の物語か。題名からして“フェイブルマン家”だよ。
これはね〜、日本で言えば北野武監督の自伝的映画という雰囲気ではなかろうか。彼には昔「タケシくん、はい」という、本人が書いたかどうかは別として、自伝的小説があったと記憶している。その映像作品があるのかどうか知らないが、興味がないのであるとしても見ていない。とはいえ、日本人ならまずビートたけしという人は知ってるだろう。同様にアメリカ人ならスティーヴン・スピルバーグ氏はどんな人物かわかるだろう。だから、今日の私の感想は「アメリカ人が北野武監督のデビュー前のファミリーストーリーを見た感じ」である。
正直に言って格別の盛り上がりもなく、ありきたりの青春ストーリー+家族の葛藤みたいな。退屈だった。
俳優陣はそれぞれ味があった。デイヴィッド・リンチがどこに出てたのかと思ったら、最後のジョン・フォード役だった。演技が固くてちょっと浮いてたので、これは誰だと思ったら、やはり本職の俳優ではなかったのね。そういえばジュラシック・パークでも、高名な映画監督であるリチャード・アッテンボローをけっこう重要な役で起用していた。ただし、アッテンボロー卿は俳優としての実績もあるから、デイヴィッド・リンチよりはずっと演技力は高い。
ボリス伯父さんの俳優はどこかで見たなと思ったが名前が思い出せなかった。あとで調べると、インディペンデンス・デイでジェフ・ゴールドブラム演じる天才エンジニアの父親役をやったジャド・ハーシュとわかって、あ~渋い雰囲気出してるなと改めて感じ入った次第。
スピルバーグ監督の作品は15作くらい見ている。初めて見たのは学生時代で“未知との遭遇”だった。退屈な映画でしたね。一緒に見た父親も同じような感想だった。インディ・ジョーンズシリーズやジュラシック・パークシリーズは面白かったが、凡作も多いという印象。
主人公のサムが、大学の寄宿舎になじめない理由の一つとして、同室の男がゴールドウォーター派だと吐き捨てるように言うシーンがあった。それは1964年の大統領選挙で、共和党の候補だったゴールドウォーター上院議員のことだと即座にわかった私は変かな。当時小学校の2年生だった私は、ゴールドウォーターの名前と、北ベトナムに水爆を落とせと主張していた超タカ派であったことを妙に鮮明に覚えているのだ。
この映画には、スピルバーグ監督にとってぬぐい難いであろう、ユダヤ人差別の場面が盛んに出てくる。その割に黒人との人種問題には全く触れていない。時代背景がそうだと言われればそうかもしれない。しかし、この時すでに公民権法は成立しているのだから、採り上げ方はあったはずだ。ちなみに先のゴールドウォーターは公民権法に批判的であった。
ユダヤ系はマイノリティではあるのだろうが、この映画を見れば明らかに彼は裕福な家庭の育ちであることがわかる。そして今や彼自身がアメリカで最も裕福なセレブである。昨年、往年のミュージカル映画の名作 “ウェスト・サイド物語” を、スピルバーグ監督、クシュナー脚本でリメイクした “ウェスト・サイド・ストーリー” を見た時も感じたが、マイノリティに寄り添う意図はあるらしい。ただ、それは自分に都合のいい部分に限定しているという印象がぬぐえない。
キャスト
・ガブリエル・ラベル- サミー・フェイブルマン
・ミシェル・ウィリアムズ - ミッツィ・フェエイブルマン(サミーの母)
・ポール・ダノ- バート・フェイブルマン(サミーの父)
・デイヴィッド・リンチ‐ジョン・フォード
・ジャド・ハーシュ- ボリス伯父さん(ミッツィの母の兄)
スタッフ
・監督-スティーヴン・スピルバーグ
・脚本-スティーヴン・スピルバーグ、トニー・クシュナー
・制作-スティーヴン・スピルバーグ、トニー・クシュナー、クリスティ・マコスコ・クリーガー
・撮影-ヤヌス・カミンスキー
・音楽-ジョン・ウィリアムズ
原題;The Fablemans
制作年;2022年 アメリカ
上映時間;151分