2022年10月19日

「千夜、一夜」

監督;久保田直

脚本;青木研次

出演;田中裕子、尾野真千子、安藤政信、ダンカン 他

 

 これは実は“スペンサー ダイアナの決意”と同じ日に見た。つまり一日に2本の映画をハシゴ。少し疲れた。

 ただその疲れのせいだけではなく、この映画、特に3分の2くらい進むまでは退屈そのものだった。2倍速で早送りしたいくらいだった。この監督がこの映画にこめたメッセージはいったい何だったのか。私の理解力が乏しいせいか、よく伝わってこなかった。

 「年間8万人に及ぶ失踪者リストに着想を得て制作したヒューマンドラマ」だそうで、この監督は元々ドキュメンタリー畑の人らしい。舞台が佐渡というわけで、映画の導入部分では「特定失踪者」リストに話題が振られる場面がある。ところが結局ストーリーはそれとは関係なく進み、「特定失踪者」リストは単なる刺し身のつま扱いである。いくらなんでもこれを拉致被害者家族が見たらどう思うか。ドキュメンタリー出身者であれば、関係者に心を寄せることを望みたかった。

 失踪した夫を30年待つ女(若松登美子=田中裕子)がいれば、2年で違う道を求める女(田村奈美=尾野真千子)がいる。愛の形は色々あると言いたいのか、で、それがどうしたの? 感動したい、と待ち構えているのにそれに答えてくれないもどかしさ。

 唯一心が震えたのは、田中裕子扮する主人公登美子の母親の葬儀で、僧侶の読経が終わった後に突然始まる佐渡おけさの唱和。哀愁を帯びた音調と、葬儀という場面の違和感がなぜか琴線を刺激する。

 終わり三分の一部分は俳優陣の熱演以外に見るべきものはない。それまでは単なる田中裕子の無駄使い。

 

 この映画、10月14日に第27回釜山国際映画祭で“国際映画批評家連盟賞”を獲得したそう。あんまり話題になってないような・・。日本作品が同賞を受賞するのは2000年の「ひまわり」(行定勲 監督)以来だそうで、まぁ今後に期待ということにしときましょう。

 久保田直監督の劇映画デビュー作は2014年の「家路」。これにも田中裕子が出ていて、脚本も今回作と同じ青木研次。田中裕子の演じる役名は沢田登美子。役名が字も同じ「登美子」というのはさて、なにか思い入れがあるのかな。