2022年8月13日 灼熱の魂

 

 


 2010年のカナダ映画。

 これぞ「驚愕の結末」というべきか。母の遺言に記された奇妙な指示をたどる双子の姉弟。弟が気づいた結論に、姉が絶叫するほどの衝撃を受ける。日本人ではなかなか思いつかないエンディングであるように思う。そもそも、母がその死とともに秘密を守り通すことが皆にとって幸せであるようにすら感じられた。

 「DUNE /デューン 砂の惑星」、「ブレードランナー2049」などでハリウッドでも注目される監督となったドゥニ・ヴィルヌーヴの出世作だそうだが、私がこの映画を見る気になったのは、予告編に映った女優が「モロッコ、彼女たちの朝」(2019年モロッコ)の主演だったルブナ・アザバルだったこと。この映画でも存分に存在感を発揮している。名前も顔だちも中東系と推測されるがベルギーを中心として欧州映画界で活躍しているようだ。

 原作はレバノン出身でカナダ・ケベック州に移住したワジディ・ムアワッドの戯曲(原題:Incendies)』(2003年) で、ストーリーの大半が中東(イラクあたりがモデルか?)で展開する。これにヴィルヌーヴ監督が着目したいきさつはよくわからない。

 前半は、後から思えば結末にいたる布石が配されていたということになろう。はっきり言って退屈だった。だが中盤あたりからミステリーっぽい色彩が強くなり、どんどん引き込まれていく。そして戦慄の結末・・。やられましたね。

 2010年の製作だから、「モロッコ、彼女たちの朝」より10年近く前で、主演のルブナ・アザバルもかなり若い。若いだけでなく、20代前半から50代くらいの年齢を演じていて、何の違和感もなかった。このブログで「モロッコ、彼女たちの朝」の感想を綴ったとき、ネットの映画評から引用して「灼熱の魂のルブナ・アザバル」なんて何も知らずに書いたが、それがこの映画だったのね。私にとってひとつの環が閉じたよ。