映画と美術展でコラボしたのかな?映画の上映開始日は、渋谷Bunkamuraミュージアムでの “ボテロ展 ふくよかな魔法” の初日に合わせてあるからたぶんそういうことなのだろう。
 ボテロって現役画家としては最高峰と言われるが、正直なところそれほど興味を持っていたわけではない。

 芸術ドキュメンタリーは、かなりそのアーティストのコアなファンでないと眠くなることがある。今までゴッホやレンブラント、ダヴィンチなんか見たことがあるが、途中かなり夢の世界に浸ることがあった。そういう意味では、この “フェルナンド・ボテロ 豊満な人生” は睡魔に襲われることなく最後までそれなりに楽しめた。なにより若いころのボテロ氏のイケメンぶりには驚いた。美術展の予習のつもりで見た映画だったが、それは失礼な話。映画芸術として独立した作品であることは言うまでもない。2018年カナダの製作だから、日本での美術展と開催時期が重なったのは、あくまでコロナ禍による偶然ということだろう。見るものにとっては幸せな偶然と言えようか。

 考えてみればモディリアーニの女性像が、首の長い、瞳のないアーモンド形の目をして描かれるのは、一つの個性に違いない。それがボテロにおいては、ぽっちゃりと描かれることが美を追求した様式なのだろう。花も、楽器も、聖母もみなぽっちゃり。食器も花瓶もぽっちゃりという「ふくよかな魔法」とは言い得て妙だ。

 健康診断でメタボ判定なんていうのが採り入れられて数年経つ。ところが最近は少し小太りいくらいの方が長生きするという。映画を見てほっこり、絵をみてにっこり、そんな幸福感がじんわり。ボテロという名前からしてぽっちゃり感たっぷり。

 少なくともこの芸術に触れて閉塞感だとか、厭世観だとか、ネガティブな気持ちにならないことは保証できる。