いや〜こんなに泣くとは思わなかった。映画全編通して涙ボロボロというのはクイーンの”ボヘミアン ラプソディ”以来だ。私がいかにミーハー音楽ファンであるかの証左と言える。
60歳に近くなった頃から涙腺が弱くなり、やたら泣くようになった。ゴッホ美術館で泣き、ウィーンフィルのコンサートで泣き、愛猫との別れを想像しただけで涙がうるうるし、今日も途中でからだが震えるときがあった。デジタルリマスターというわりに画質はかなり悪く、生のコンサートではないから音声も平板ではあるけれども、それでも十分に感動させてもらいました。

 それにしてもつくづく残念に思うのは、パヴァロッティ健在のときにコンサートに行かなかったことである。そのチャンスはあった。1994年の夏、アメリカでFIFAワールドカップが開催されていたさなかに、ドジャースタジアムで三大テノール+ズービン・メータのコンサートが行われた。当時私はロスアンゼルスに住んでいて、絶好の機会だと思って行きたい気持ちはあったのだが、ちょうど配偶者が第二子を妊娠中であった。当時まだよい夫であった私は、妻をおいて出かけることに躊躇したため、断念したのであった。あ~残念。今やその三大テノールも、パヴァロッティはすでになく、ドミンゴはバリトンに戻って活動中とあって、三人の中では最も線の細いカレーラスを残すのみ。大病を克服して活躍を続けるカレーラスには心からの敬意を覚えるが、彼もすでに75歳。いかに才能あふれる人物も命には限りがある。パヴァロッティという偉大な才能を失ったことは残念という他に言葉がない。

 映画の“アンタッチャブル”で、ロバート・デ・ニーロ扮するアル・カポーンがオペラを見て涙を流すシーンがあるが、これが今日も聞いたレオン・カヴァッロの歌劇「道化師」から“衣装をつけろ”。もうこのかなり前から私は涙腺崩壊していたのですよ。私はてっきりこのアリアを歌っているのはエンリコ・カルーソーという設定だと思っていたら、年齢的にカルーソーはカポネ全盛期にはすでにこの世を去っている。

 とかなんとかいろいろ思い出させてくれる映画でありました。

 ところで、パヴァロッティも音域的にバリトンのような気がするのですが。