看護師時代、一番頭を悩ませていたのが、患者さんとの関係構築でした。
私自身、人見知りで緊張しいな性格で、患者さんと心を通わせるのにも時間がかかりました。
当然ながら中には、正直言って「苦手だな」と感じる患者さんもいました。
とある方は、とにかく無愛想で、何を話しかけても返事がそっけないか、ほとんど無視をされるような方でした。

バイタルサイン測定や清拭などのケアで部屋に入っても、目を合わせてもくれないのです。
その方といるときは、常に壁があるような、険悪な雰囲気を感じており、担当時はソワソワと落ち着きませんでした。
同時に「何か気に障ることをしたかな」「私じゃなくて他の看護師さんがいいのかな」と、毎日悩んでいました。

あるとき、いつものように無愛想な患者さんのケアをしているとき、ふと部屋の隅に古いカメラが置いてあるのを見つけました。
何気なく「素敵なカメラですね。写真がお好きなんですか」と話しかけてみたんです。
すると、いつも無表情だったその方が、少し顔を上げてくれました。
そこから、彼は昔写真家として世界中を旅していた話をしてくれました。
はじめて彼の本音と、心からの表情を見ることができました。

その日を境に、彼の態度は劇的に変わったわけではありませんが、以前よりも私に心を開いてくれるようになりました。
このとき、親しみやすさというのは、無理に話そうとするのではなく、相手の興味やプライベートな部分に少しだけ踏み込んだ方が、築きやすくなることを学びました。
苦手意識を持っていたのは、私が勝手に距離感を決めていたからかもしれません。
この体験は、人との接し方における大事な教訓となっています。