美しい路

美しい路

詩やショートストーリーを書いています。時々思ったことなども…








詩1683




「奇跡」




天から降りてきた

その人形(ひとがた)は


背中に

白色の鳥の羽のようなものが

が生えていて


ゆっくりと

柔らかく動かしていたが

それで飛んでいるようには

見えなかった



目の前に降り立った

その人形(ひとがた)は


言葉を発したが

耳からは聞こえずに

心の中に響いてきた


何を言っているのか

言葉自体は

聞いたこともないものだったが

何故かその意味は

理解ができた


柔らかくて

優しい言葉で

私のことを

とても大切に思っている言葉だと



その人形(ひとがた)は

私の頭の上に手をのせて

目を閉じた

何かを祈っているかのような

そんな気がした


その時私は

何だか心が

軽くなった気がしたんだ


何が起きているのか

全くわからなかったけれど

ああ、私は

今この瞬間に

生まれ変わったのだと

そう思ったんだ



目の前に降り立った人形(ひとがた)は

また空へ登って行った


羽はゆっくりと動かしていたが

それで飛んでいるようには

やっぱり見えなかった



高く高く

登って行ったように見えたけれど

実は飛び立ってすぐに

見えなくなっていたようにも思う


見上げている空は

ほんの数分前と

何も変わらないように見えた


私だけが

変わったのかもしれない



mint