月宮の系譜・外伝~双頭の鷹  プロローグ | yuz的 益者三楽

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 月宮の系譜・外伝~双頭の鷹  プロローグ

 

 

季節は穀雨節(こくう、新暦4月中旬)

亭国が建国されてから早18年が過ぎ去り、人々は平和を謳歌していた。

漠然の息子達も既に11歳を迎え、二人は腕を磨くために師父を求める。

  

青籟、渾犼は幼い頃より王宮の公主に仕え、既に宮中での礼儀作法や兵法書は読破していたが、何か物足りない日々を過ごしていた。

  

彼らの中に流れる血は、かつて東林の猛将にして代王である曾祖父:楚煌耀、沈着冷静で武勇の誉れ高い大将軍である祖父:楚晧月、亭国の重鎮にして跨虎大将軍たる父:漠然の血を引いており、どうしてその熱き血潮を抑える事が出来るだろうか?

 血は湧き立ち、彼らを煽り、遥か彼方へと誘う。

  

二人は連れ立って漠然のいる将軍府の書斎に赴く。

漠然は現皇帝である楚北捷に付き従い、通常宮殿で過ごすことが多いが、今日は珍しく将軍府に帰り、書斎で書を読んでいた。

青籟は言う。「父上、私達も既に11歳となりました。先の王朝である東林では10歳で軍に入ると聞き及んでおります。」 

漠然は上座に座り、手に持った茶器の茶を一口飲んでから言う。「まさしく、先の王朝である東林では10歳になれば以降 軍営で生活し、武勇を磨く。」

 

青籟は父:漠然の傍らに寄り、傅いて言う。「我らの祖父上は13歳で山賊を討伐し、その上彼らを心服させ、配下に加えたと聞いております。又、曾祖父上は猛将として近隣の国々から”美しい魔物”と呼ばれ恐れられていたと聞き及んでおります。我らもこれに倣い、武勇を極めたいと思います。どうか私達を北漠の地に行かせてください。」

 

渾犼も真剣な表情で、漠然を見つめて言う。「父上、どうかお聞き届けください。我々はもっと強くなりたいのです。」

  

漠然は、息子達の成長を感慨深そうな表情で見つめて言う。「聞く処によると、北漠の地に江湖と呼ばれる者達がいると聞き及んでいる。江湖を求めるとは、血は争えぬな。……よかろう。3年の猶予を与える。」

 

漠然自身も、四国で並ぶもののない英雄である現 亭国皇帝:楚北捷に付き従い、長年戦いを繰り返してきた。このように平和な世になった事は良き事ではあるが、武人は腕を振るう機会を失い、武人達は次々と隠棲し、或いは 江湖として武術の一団を形成し、その力を伝承し、朝廷より距離を置いていた。

 

彼らの武勇は人々の間で密かに噂され、或いは講談師が披露め、若者たちの心に深い印象を与えていた。

それらの様子をみて、息子達が湧き上がる血を抑えられないのは、致し方ない事でもあった。  

 

青籟と渾犼の二人の兄弟はその青き瞳を輝かせ、早速飛び出していきそうな様子を見て、漠然は言葉を継ぐ。「但し、まずは则将軍(则尹)を訪ねよ。将軍は北漠の地を任されており、彼らの情報を持っているだろう。くれぐれも無理をするでないぞ。」

  

二人は理解した旨を表し、拝手の礼をして感謝を伝える。

 

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江湖:コウコ、都から遠く離れた地。隠者の住む地、
  武術を身につけて結束、団体化した人々が所属する一般社会とは異なる特殊な社会

双頭に鷹:双頭=一つの体に二つの権威を持つ、神に仕える鳥、力の象徴