どうも、詩人・小説家の田上友也です

 

今回は『人外』松浦寿輝を読んだので、感想を書き殴ります

 

この本は絶対に読んでください、と言うくらいこの本はよかったです

 

友達におすすされて読んだのだけれど

 

本当に面白かったし、僕はこういう文学がかなり好きだ

 

まず、人外とは「にんがい」と読み、人ではないものという意味です

 

この物語の主人公は文字通り人外で

 

ねこにも、かわうそにも、あなぐまにも似た四つ足の獣です

 

名前はなく、「わたしたち」や「わたし」として登場します

 

その「わたし」ないし「わたしたち」はアラカシという木からある日生まれます

 

そして、その人外が世界を認識していきます

 

その描き方が最高に美しく、神秘的で、真意に迫っています

 

最初の文を引用します

 

 わたしたちは軽く身じろぎしてアラカシの巨木の大枝が幹と分かれる股のあたりで樹皮を透りぬけ、内から外へ、はじめて触れる外気のなかへ、ずるりと滲みだし地面にぽとりと落ちた。

 

このように始まります

 

人外がこの世を認識していき

 

荒廃した世界に旅にでて

 

見張り番やタクシー運転手や偽哲学者などのその世界に暮らしている人に遭遇していきます

 

では一体どんなところにグッときたかというと

 

まずは人外というのは「わたしたち」という感覚をもっており

 

「わたし」ではないということ

 

様々な「わたし」というものが集まってできた「わたしたち」の感覚があり

 

さらには、「かれ」がいないことに気がつく

 

その「かれ」は何者なのかはわからないけれど

 

「わたしたち」に「かれ」がいないことは確かにわかる

 

そして、「かれ」を探さなくてはと人外が思う

 

この感覚、理由のなさ、直感、こういうものがかなり詩的に描かれている

 

人外の話であるにもかかわらず、我々人間の深淵に近づこうとしている

 

生とは、死とは、生命の誕生とは、意識とはなんなのか

 

そういう人間の根源的なものを解き明かそうとしている小説です

 

とにかくそういうテーマが非常にグッとくるし

 

それを見事に書ききっていることに惚れ惚れする

 

読みながらずっと惚れ惚れしていた

 

人間の深淵を言葉にできていること

 

その言葉の羅列が美しく

 

さらに、描写の入れ替わりまでが完璧

 

こんな小説がこの世に存在するのかと驚愕した

 

ストーリー、描写、文章、言葉選び

 

全てが相乗効果で綺麗に絡み合っている

 

作者の松浦寿輝は小説家であると同時に詩人でもある

 

この小説は小説のいいところ、詩にいいところ混ぜ合わせて

 

小説としても、詩としても完成度の高いものになっている

 

帯に引用されている文をみてみると

 

すべてがうつろう。••••••うつろうために、ただそれだけのためにわたしたちがいる。いまこの瞬間もすべてがうつろってゆく。列車は走り、稲妻がひらめき、闇が刻々とその濃さを変え、死者の肉はくさってゆき、生者の肉はあたらしい細胞とともに生まれかわってゆく。それがうつろいだ、存在であり時間であり意識だ、そしてそれがわたしたちだ。

 

この文章を読んだとき単純に完璧だと思った

 

この文章が少しでも気になったらこの小説は読むべきだ

 

そして、読者は世界を感じ、生命を感じ、運命を感じる

 

現代詩手帖で松浦寿輝が人外詩篇という題で連載しているようなので

 

それもこれからチェックしていきます

 

ホームページでは自分の作品とかも公開しているので是非に!

 

https://yuyatagami.com/