一冊目

「週間ダイヤモンド 会計&ファイナンス」

 

主にp30~p111

 

<概要>

 

p30~31

 純利益1兆円を超えるトヨタ自動車とソフトバンク、また事業投資を主な生業とする総合商社、これらの企業の社員に求められる共通のスキルとして「会計とファイナンス」が挙げられる。またこれからの時代、会計とファイナンスの知識は一般の営業マンでも知らないでは済まされなくなる。

 

 

p32~35

 ビジネスパーソンとして最大の結果を出すためには、作る能力は必要ない。財務3表をざっくり読めることができればよい。これらは最低限のルールを知ればだれにでもできる。また、財務3表の読み方がわかれば、ただの数字の羅列から、業種業界のみならず、経営者の意図や企業努力、失敗の痕跡などのドラマが浮かび上がってくる。

 すべての企業は「おカネを集め、それを投資し利益を上げる」という活動を行っている。おカネの動きを表した表が以下の財務3表だ。

 

①損益計算書(PL)

 ある切り取った一定期間に、その企業がいくら売り上げを上げるために、いくらの費用をかけ、その結果いくら利益を上げたかを示す表。野球で例えると年間打率。

 

②貸借対照表(BS)

 ある時点において、その企業の持ち物である資産、負債、純資産をすべてリスト化した報告書。野球で言えば年間打率。借方(左側)と貸方(右側)は必ず一致する。

 

③キャッシュフロー計算書(CF)

 ある切り取った一定期間に、その企業における現金の出入りを示す表。PL、BSでは現れない素顔が現れる為、現代での企業経営では重視されている。

 

 

p36~40

 PLの具体的な解説。PLは財務3表の中で最もシンプルで理解しやすい。PLを理解するには以下の「5つの利益」を理解すればよい。

 

①売上総利益

 PLの一番上に来る「売上高」から、材料費や仕入れなどの費用である原価(「売上原価」)を引いた金額。いわゆる「粗利」。

 

②営業利益

 「売上総利益」から、商品を売るために不可欠な費用である「販売費および一般管理費(販管費)」を引いた金額。販管費には広告宣伝費や人件費などがある。この金額はいわゆる”本業”で稼いだ利益。

 

③経常利益

 「営業利益」から「営業外収益」と「営業外費用」を足し引きした利益(損失)を足した(引いた)金額。「営業外収益」には定期預金の利息や保有株式の配当金、不動産収入がある。一方、「営業外費用」には借入金の支払利息などが含まれる。

 

④税引き前当期純利益

 「経常利益」から、”一時的”な利益である「特別利益」と損失である「特別損失」を足し引きした利益(損失)を足した(引いた)金額。

 

⑤当期純利益

 「税引き前当期純利益」から法人税等を差し引いた金額。これが最終的に企業に入ってくる利益となる。

 

 

 PLに絶対的に評価することはできない。PLそれ単体では意味を持たない。そのため、同業他社や過去のPLと比較してこそ初めて意味を持つ。昨年より伸びているのか、あるいは同業他社との差はどれくらいあるのかなどからその企業のことを知ることができるのだ。

 

 

 PLを分析する上で注意すべき数字が4つある。

 

①売上原価率

 売上原価率=売上原価/売上高

 

②売上総利益率(粗利率)

 売上総利益率=売上総利益/売上高

 

③販管費率

 販管費率=販管費率/売上高

 

④営業利益率

 営業利益率=営業利益/売上高

 

 

 これらはすべて売上高に対する各費用(利益)の割合である。いくら売り上げをあげていようとそのための費用が莫大になってしまっていては本末転倒である。そのため、このように割合によってあらわすことによって現状をより見えやすくできる。

 

 

p42~49

 BSの具体的な解説。3つの大きな箱に分けられる。

 

①資産の部(借方全面)

 企業が集めてきたおカネを何にいくら投資したかを示す箱。受取手形や売掛金など1年以内に現金化できる資産である「流動資産」(箱上部)と不動産や、土地など1年以内に現金化できない「固定資産」(箱下部)に分類できる。

 流動資産が多ければ、すぐ現金化できるお金が多いということで、その企業の安全性は高いと考えられる。

 

②負債の部(貸方上部)

 その企業のおカネの集め方で、特に返す必要のある集め方を示した箱。1年以内に返済・支払期限がくる「流動負債」(箱上部)と1年以上経ってから返済・支払期限が来る「固定負債」(箱下部)に分けられる。

 流動資産より流動負債がかなり多ければ、返済や支払いが滞る危険性がある負債と見ることができる。

 

③純資産の部(貸方下部)

 その企業のおカネの集め方で、特に返す必要のない集め方を示した箱。資本金や利益剰余金などがある。

 

 

 全く同じPLがあったとして、大きなBSと小さなBS、どちらがより効率的と判断できるかと言えば、小さなBSのほうの企業である。より少ない資産でより大きな利益を上げている企業のほうがより効率的だ。しかし、異業種間での比較はできない。業種によってBSは全く異なるからである。

 

 

p50~61

 まずはCFの具体的な解説。3つの袋に分けられる。

 

①営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)

 企業の本業から上がってくるキャッシュを表す。ここが数期にわたってマイナスだと、本業がうまくいっていないということになる。

 

②投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)

 企業が、将来の利益のために設備や有価証券に投資した際に流れるキャッシュを表す。一般的に、積極的な投資によってマイナスになっている方が望ましい。

 プラスの場合は資産の現金化(不動産を売却するなど)を示しており、手元のキャッシュ不足が疑われる。

 営業CFから投資CFを引いたものをフリーキャッシュフロー(FCF)といい、プラスならば経営状況が良いと判断できる。

 

③財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)

 「財務」という言葉を「資金調達」という言葉に置き換えるとわかりやすい。借り入れや社債発行などによって資金調達の際に流れるキャッシュを表す。これらが盛んであればプラス、借入金の返済や配当金の支払い、自社株買いなどを行えばマイナス。

 マイナスである場合、株主に還元しているという点で望ましいと言える一方で、資金調達をして積極的な投資を行っている企業はプラスとなる。企業ごとに戦略の違いが表れる。 

 

 

 販売と支払いの時間はずれる。例えば商品を仕入れて売れるまで30日、売れてから現金化するまでに30日かかる、そして商品の代金を仕入れ日の45日後に払うとすると、15日間、資金不足に陥る。つまり、PLで利益を出していても財務状況は悪化する可能性があるのだ。これで倒産することを「黒字倒産」という。

 

 

◆これまで出てきた財務3表はすべてつながっており、そのつながりを意識すべきである。

 

・PLとBS

 PLの一番下、「当期純利益」はBSの「利益剰余金」として積みあがる。

 

・CFとBS

 CFの一番下、「合計CF」の分だけBSの「現預金」が増減する。

 

 

 CFにも戦略の違いが表れる。具体的な例を見る。

・Amazon

 業績を右肩上がりに伸ばしている。しかし一方で純利益はぎり赤字ではないか、やや赤字である。なぜか。Amazonは「地球上で最もお客様を大事にする企業」と標榜する企業であり、短期的な利益を追っていない。そのため、長期的な目線を重視しており、利益のほとんどを投資にまわしている。そのため、営業CFの約64%を投資CFのまわしていることがCFからわかるのだ。

 

・米IBM

 一方でIBMは財務CFが営業CFの61%を占めている。その内訳は配当金の支払いや自社株式の取得のためである。「会社は株主のもの、経営者は株主のほうを向いて経営するもの」という欧米流の考え方の典型なのである。 

 

 

p62~p77

応用編。企業の状態を財務三表からざっくり見抜く方法を紹介する。

 

◆BSのチェックポイントは主に以下の三つがある。

 

①負債と純資産のバランスを見る

 純資産の割合が負債の割合より大きい場合⇒安全

 純資産の割合が負債の割合より小さい場合⇒やや不安定

 負債が資産(借方)を上回っている場合⇒債務超過。極めて危険

 

⇒純資産/(負債+資産)=自己資本比率>=40%なら安定していると言われている。

 

 

②流動資産と流動負債のバランスを見る

 流動資産<流動負債の場合、短期的な負債の返済能力に問題があると考えられる。

 

③固定資産を純資産でまかなえているかを確認する。

 固定資産は現金化しにくいため、返済する必要のない純資産で賄えていることが望ましい。

 

 純資産>固定資産⇒きわめて安全

 (純資産+固定負債)>固定資産⇒比較的安全

 (純資産+固定負債+流動負債)>固定資産⇒かなり心配

 

◆続いてCF。8つのパターンに分けることができる。

(※左から営業CF・投資CF・財務CFとする。)

 

 

①プラス・マイナス・マイナス型⇒健全型

 本業がうまくいっているうえに、将来への投資、そして株主への配当金や自社株買いなどのに積極的なケース。しかし財務CFがマイナスの理由が配当金や自社株買いではなく、借入金の返済や社債の償還などの場合がある。その場合は事業見直しを迫られる可能性があるため、内訳の確認は必須。

 

②プラス・マイナス・プラス型⇒積極型

 本業がうまくいっているうえで、将来への投資に積極的。また、大きな設備投資やM&Aなどのために資金調達を積極的に行っているケース。

 

③プラス・プラス・プラス型⇒安定型

 本業がうまくいっており、キャッシュの流出を恐れ、将来への投資には消極的。かつより積極的な資金調達により、より多くのキャッシュを持っておきたいという経営者の意図が見える。

 

④プラス・プラス・マイナス型⇒改善型

 本業はうまくいっているが、投資の消極化、借入金の返済や社債の償還などによって財務体質を改善している様子がわかる。

 

⑤マイナス・マイナス・プラス型⇒勝負型

 本業がうまくいっていないものの、投資には積極的、かつ資金調達にも積極的であるため、既存事業の改革や新規事業の展開で勝負に出ている。

 

⑥マイナス・プラス・マイナス型⇒リストラ型

 本業がうまくいっておらず、資産を売却することによって借入金の返済や社債の償還に充てているケース。

 

⑦マイナス・マイナス・マイナス型⇒大幅見直し型

 本業がうまくいっておらず、投資によって事業自体を大幅に見直そうとしている。しかし資金の返済を余儀なくされている厳しい状態。

 

⑧マイナス・プラス・プラス型⇒救済型

 本業が厳しく、資産の売却や資金調達でなんとか会社を存続させようとしているケース。

 

 

p78~p85

 中級編。ROEとROAの解説に入る。

 

 経営指標の中で真っ先に話題になるのがROE(自己資本利益率)だ。ざっくりいうと株主から出してもらったおカネを使ってどれだけ上手に利益を稼いでいるか。を示すものである。

 

 ROE=純利益/自己資本

    =売上高純利益率(純利益/売上高)【収益性】×総資本回転率(売上高/資産)【効率性】×財務レバレッジ(資産/自己資本)【安全性】

 

※自己資本とは株主から集めたおカネ

 

 今、日本企業はROEの改善に躍起になっている。その理由は、2014年に経産省から発表されたレポートに、「欧米企業のROEは8~10%なのに対し、日本企業は5%前後」と指摘する文章があったためである。

 

 しかし、ROEには欠点がある。簡単に言うと「借金を増やすと改善してしまう」仕組みなのである。財務レバレッジの分子である資産は自己資本と他人資本の合計であるため、他人資本を増やすことで財務レバレッジを改善させ、結果ROEを改善することも可能なのだ。

 

 

 そこでROEの欠点を補う指標がROA(総資産利益率)である。ざっくりいうと、「総資産を使ってどれだけ利益を上げたか」を示す指標。

 

 ROA=経常利益/資産

    =売上高営業利益率(経常利益/売上高)【収益性】×純資産回転率(売上高/資産)【効率性】

 

 

 ただし、ROAにも欠点はあり、どっちにしろ完璧ではないということは覚えておきたい。

 

 

 

p86~97

 ここからはファイナンス入門。今や世界のビジネス界の共通言語となっているファイナンス。企業買収や事業投資の判断など、その重要性は一段と高まっている。

 

 ファイナンスの「基本のキ」として押さえておくことが2つある。

 

 一つ目は、ファイナンスは「企業の価値が最も大きくなる状態」を考えるツールであることだ。ファイナンスの基本サイクルは「おカネの調達」⇒「事業などに投資」⇒「もうけを獲得」であり、一連の流れをうまく扱い、企業価値をあげるのがファイナンスであることを覚えておきたい。

 

 また企業の価値とは「将来獲得するキャッシュフローの大きさ」である。つまり、「企業価値の最大化」とは、一連の活動の中で「企業がお金を生み出す力を大きくする」ことを意味する。ファイナンスでは物事の価値が「キャッシュを生む力」に集約されることを覚えておきたい

 

 

 二つ目はファイナンスが常に「未来」の判断のために使われる、ということだ。会計はいわば健康診断の結果であり、ファイナンスは「理想的な体を作る」為のツール、である。

 

 

 ファイナンスには「三つの鉄則」と呼ばれる基本前提がある。

 

 「ハイリスクハイリターン」

 一定のリスクを取って投資し、それに見合ったリターンが得られるかを考える。

 

 「キャッシュが王様」

 例えばPLでは減価償却費など、現金の支出がないのに費用として計上する項目があるが、こうしたものは無視してよい。まず何より、おカネの流れに着目するという考え方である。

 

 「今日の100万円と明日の100万円の価値は違う」

 ファイナンスにおいては、おカネの価値は時間が経つと変わるのが前提だ。

 

 

 銀行におカネを預けるとわずかながら利子がつく。仮に金利2%であったとして、100万円を一年間預けると102万円になる。一方、同じ金利で一年後に100万円になる状態を考えると、

100万円/(1+0.02)でおよそ98万円である。

 こうして将来のおカネの価値を現在のおカネの価値に直したものを「現在価値」と呼ぶ。また金利の部分を「割引率」という。

 

 

 おカネの価値の変化は、一定期間ごとに利子を受け取る「単利」と、その利子を元本に組み込み再投資する「複利」があり、ファイナンスでは「複利」が前提。

 

 

 事業投資判断に用いられるファイナンス手法を紹介する。

 

 ①NPV(正味現在価値)法

 将来の事業・投資で生み出されるフリーキャッシュフローを予測し、「現在価値」に置き換えるといくら儲かるかはじき出す方法。

 その際、割引率に当たるのが「想定利益率」である。

 なお企業価値はNPVの合計と見ることもでき、各案件の事業投資判断が重要なのだ。

 

 

Q投資額x万円の機械を導入するとn年間の追加利益がy円見込まれる。

 想定利益率z%とすると、正味現在価値(NPV)はいくらか

 

 

A

x万円×z%+x万円×z%二乗+x万円×z%三乗+x万円…x万円×z%n乗

=正味現在価値

 

 

 この正味現在価値が投資額を上回る場合は投資すべき、下回る場合は投資すべきでないと判断できる。

 

 

 

 ②IRR(内部収益率)法

 これは投資案件で想定される年間収益率を示し、NPVがゼロになる割引率に等しい。

 

 

 ③回収期間法

 企業が定めた期間内に投資額を回収できるかを評価するものだ。日本では人気だが、「おカネは時間が経つと価値が変わる」という原則を無視しているため、欧米では一般的ではない。

 

 

 

 M&A時に企業の価値を評価する際に用いられる算定方法を「企業価値評価」と呼び、大きく三つのアプローチに分けられる。いずれもこれが絶対というものではなく、複数の算定方法から導き出し、M&Aの判断をする材料として用いられる。

 

 

 ①インカムアプローチ(代表例:DCF法)

 その企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を探る方法

 

 ②コストアプローチ

 現在持っている資産の価格をもとに考える。

 

 ③マーケットアプローチ(代表例:EBITDA倍率)

 EBITDAとは簡単に言えば、営業利益に減価償却費を足したものだ。EBITDA倍率は時価総額がEBITDAの何倍かを示し、倍率が高ければ割高、低ければ割安と考えられる。

 

 

 

 

 最後に資金調達について。「負債」の面での資金調達の方法は二つある。銀行からの借り入れする「間接金融」と、社債発行による「直接金融」だ。これらは企業が利子をつけて返済をしなければいけない「有利子負債」となる。

 

 

 同じ投資家でも「株主」と「債権者」では視点が違う。

 

 「株主」

 ・企業の成長性を重視

 ・損益を重視

 ・指標は株価

 ・アップサイドを見る

 ・期日なしのリスクマネー

 

 「債権者」

 ・安定性を重視

 ・財務重視

 ・指標は格付け(信用リスク)

 ・ダウンサイドを見る

 ・期日までの確定運用

 

 

株主は成長を求める一方、債権者は安定を求める。 そのため、この二人の利害がバランスシート上で対立することがしばしばある。

 

 

 

<考察・感想>

 

 会計のPL、BSについては簿記二級でやってきたことである程度覚えていたが、CFはやっていなかったので今回が初。そこまで難しそうな印象はなかった。また、これら財務三表のつながりや関係性を理解できたのはでかい。簿記ではその辺学ばないので。また簿記も学びなおしたくなってきたな。

 

 

 企業の経営状況を財務三表から読み取る力は必ず身につけたい。それができたら面白そう。定量情報から定性情報が読み取れるってなんかわくわくする。

 

 

 ファイナンスについては触れる機会がない分、なかなか理解するのに骨が折れた。しかし、身につけれられれば今後のキャリアに必ず活きるはずなので、社会人になるまでには基礎の部分を身につけたい。

 

 

 

 

 

 

このブログ初投稿。これからはコミュニケーションに関する本を読んでいく。

 

 

 

 

 

 

<覚えるべきキーワード>

自己資本比率(自己資本/総資産)

償却

自社株買い

財務レバレッジ

自己資本利益率

総資本回転率

ROE(自己資本利益率)

ROA(純資産利益率)