しばらくしてジャックが送った警察がたどり着き、大魔女がバリアを張る前にやられてしまった人たちを魔法である程度回復したあと病院に送り始めた。死人や、意識がまだない人もいる。侍はようやくマリオネットの拘束を解いた。
「この死人やけが人の量・・・また他人巻き込みきや。まぁよし、主人がおよびなり。」占い師はまだ落ち着かず侍をきっと睨んだ。「弟の分際で命令しないでください!私は・・・私はまだ、屈辱を果たせt」
「主人に逆らふ気か?恥を知れ。」その厳しい言葉に、うっと引き下がってしまう。侍は言葉を続けた。
「主人には命落としてされど守り仕え、かくて麗しくうつろひ、そして合成樹脂を愛でる。それが武士道というものなり。」マリオネットと話すこの男は刀を2本腰に差していて笠を被りユウたちにとってみたことのない服(着物)を着ている。早見なら知ってそうだが。
身長は170cm程であちこちの部分がいたんでいる。
そしてなによりーー目だけが包帯で巻かれていて不気味だ、と感じた。
「チッ・・・この恨みは必ず果たします。おぼえてなさい、再生の使徒」マリオネットは吐き捨てるように告げると消えていき、一方で男ーー伊左衛門だったかーー
はおぼつかない足をふらふらさせながら死体やけが人の所有物に近づく。そしてそこからなかから色々取り出していった。ちょうどボルトスがたどり着き、ユウたちに声をかけてくる。「大丈夫っすか?」
「あたしはなんとか大丈夫だけど、ミラが・・・」ミラは怪我は回復したのだがまだ意識が戻らない。こいつらの仕業っすか、と伊左衛門を見た時ふと目が合った(実際は目が隠れているのでよく分からないが)ように見えた。と、その時ボルトスの動きが一瞬止まる。
ーーーあの男、旦那の弟さんのひとりに似てる気がするっす。でとあの人は、そこまでボロボロの着物を来てなかったし、何より目が見えてたからーー
「久しいな、兄の使い魔よ」伊左衛門が手に持っていた結構多いガラクタを一旦置いて近づいてきた。
「げに我がことがえ思ひ出さずや?」
そう言うと手で印を結び侍の姿が消え風の流れに沿って動き風がやんだ時にはボルトスの後ろに立っていた。それを見て最初は黙って首を傾げていたがようやく思い出したようでああ、と声を上げた。そして軽く跪く。「疾風の使徒、ヴァレリオ様・・・っすね?お久しぶりっす、なんか変わったっすね」伊左衛門は満足気に頷きその後即座に2人は睨み合っていた。「で?何しに来たんすか?」「定まれる、再生の使徒をとらえにけり」「理由はわからんすけど、そうはさせないっすよ!」ばっと離れて距離を取り呪文を唱えると手から発せられた雷光で玉が生まれる。その玉を伊左衛門目掛けて思い切り投げた。侍は刀に手を当てるだけで避ける素振りを見せない。と、その時。刀がついに抜かれ横に1振り。
「うおおおおぉああああああああぁぁぁっっっ!えっちょっええっ?」ユウが腰を抜かしかけてる通り、斬撃が地面を削りそのまま雷玉はその斬撃にぶつかって簡単に壊れ爆発する。それでもまだ残る太刀風にソニック、ユウ、ボルトス、ウィルは壁に叩きつけられた。それにさきほどの玉のせいで刀が雷を少し帯びている。こんどまたその斬撃を受けたら危険だろう。ボルトスはミラさんを病院に連れていくっす、と他の3人に冷たい目で見られたのを誤魔化すために慌ててミラを乗せて帰っていった。飛んで行ったあと、すぐさま伊左衛門はユウの元へ切りつけに来て、1、2撃はなんとか避けられたが直ぐに攻撃され体に受けてしまった。だが切りつける力が弱かったのは気のせいだろうか。
「ちょっ待って、マジで飲み物とかなんでもあげるから、自販機のやつでいいならだけど!いやマジで怖い」
最後の方は声が消えかかっていた。ユウがもう少し動けば刀がのどぶえに刺さるところで侍の行動が止まり、静かに刀を収めた。「自販機と?」


ガコンっ。茶が入ったペットボトルが落ち、伊左衛門は自販機の受け取り口から出した。ここは帰りにユウがたまによっているちょっと大きいゲーセンの近くの自動販売機だ。そこにはユウ、伊左衛門、そして一応ソニック(分身は戻った)の3人がいて、もちろんユウのおごりである。侍は包帯を少しゆるめるとそこから見えた、今にも落ちそうな眼球でペットボトルを舐めるように見渡しうっとりしたようなまなざしであちこちを触っていた。正直いってペットボトルをそんなふうに見てる人は見たことがなかったものだから、なぜか荷物ーーガラクタを持たされている残りの2人は異様だ、と感じる。「これ、なでふ合成樹脂なり?」ふいに伊左衛門が振り向いて話しかけてきた。ソニックに訳してもらってからおずおずと答える。
「え、えと、ペットボトル・・・」
「ほぉ、これが噂に聞けるペットボトルといふものか・・・かかるもの、和国にはあらざりしぞ。」さっきから何を言ってるのか分からないところがちょくちょくあるので結局終始ソニックに訳してもらうことにした。
それにしてもなぜ早見と同じ和国出身?らしいのにそんなに口調や服装が違うのだろうか。それに合成樹脂ーープラスチックを愛好しているのかも理解し難い。
ユウとアストレアが最初に会ったあの路地裏でさえ、ペットボトルがゴミのように散らかっていたのになぜペットボトルを初めて見たような感じなのかも。
「中身には飲料入れめれど・・・ふむ、ふむ、倭国の味とさしもうつろわず。」ぶつぶつ言いながら飲んでは眺めてを繰り返している。2人は何をすればいいのか分からず気まずいままさっきから妙な侍の行動を眺めているとまた近づいてきた。包帯は結び直したようでもう目は見えなくなっている。
「2人とも何故しか合成樹脂になづむかゆかしからむ気配をな感じそ。敵味方問わず興持ち活用すべくならば他に嬉しいことはあらず。」2人は顔をしかめて見合わせた。興味があると言うよりかはあまりの熱中さに(匂い嗅いだりなめたりしてるのを見たのは初めて)ユウにおいては人の趣味はそれぞれだから否定はしないがさすがに引いていて、ソニックにおいては気持ち悪さを感じていたからだ。そのとき急にチャきっとさやから少し刀を抜く音がして2人は驚いて男の方を向いた。心の声がまるで読まれたかのように。怪しげに思ったソニックがデータ抽出に入ったが使徒は特殊らしくいい情報が入らなかったようで難しい顔をする。
「いやー、別に否定はしないんですけど、ペットボトルべろべろ舐めてる人とか見たことなくてなんかどう反応すればいいかわかんないなーって思ってたんです。あっあれは人の前ではしない方がいいですよ。確かになんでそんなに執着してるのかってことは知りたいかも、です」ユウは持ち前の「思ったことをたまに遠慮せずに言ってしまう」スキルを使い、少し怒り気味の伊左衛門にはっきりとそういった。彼はユウの方を少し包帯を緩めてはっきり見るとまた戻ししばらくしてフッと笑うと刀を鞘に収めた。
「汝は今おのれどもに狙はれ後に主人に殺さるる身。畏からずや」
「いやいやいや、充分怖いですよ。さっきも死ぬかと思ったし。生きた心地しなかった・・・でも言いたいことはちゃんと言った方がいいかなって。で、あの、なんでペットボトル好きなんですか?」コホン、と伊左衛門は咳払いをした。見てみると、ユウが伊左衛門につけられた傷は結構治ってきていた。
「自動販売機も実は見し試しはあらざりき。我は長い間放浪生活をやりたればな。合成樹脂だにあらばすべてえき。今や海辺を通らば大量に捨ててあれど、柔らかきものもあればこはく攻撃を防ぎやすきものもあり。魅力をさながら語ると長くならば割愛させたまふれど吸湿性の良きものなどほかにもあらゆる可能性を秘めたり。我が持てるこの刀も服もほぼそれ原料なり。かたへには貧乏性だのガラクタとののしられるれど、こは天が我に恵みし産物なりとぞ確信せる。さ思はずや?」ーー1分後。
「最終的にそんなにペットボトルを愛せてるんだからそうなんじゃないですか?ブシドウ、とかいうやつにも入ってたし」「同意見だ。ヒューマンが考えてる事はまだ分析不明で理解し難いが・・・」訳してもらい2人がうなづいて賛同すると侍はフフっと笑ったがすぐに真顔に戻った。そして手を組み始める。"印"だ。そのとたん、急に強い風が2人を取り巻き、思わず2人は目を閉じる。だがすぐに強風は止み、侍はその風をすうっと吸い込んだ。見えた、と独り言を呟いたかと思うと、今度は違う呪文を唱え手からは魔法で巻物が出現した。それを開けてみよ、と2人に渡す。2人は言われるままにあけ、そして息を飲んだ。巻物には1人の人物ーーシギルと尻尾を9つ持った動物ーー九尾が写っていて
シギルが話し出す。口が閉じているのに。これは"心の声"なのだろうか。
「マリオネットからエルリアにいるって情報が入ってきたからこの1週間以内に仕留められそうだなぁ。夜だったら後ろから襲っても気づかれないよね。あーあ、残念。もし再生の使徒とかじゃなかったら充分可愛いし僕の"操り人形"にしてたかもしれないのに。」
そこで巻物はフッと消えた。
「今日はかたじけなく、久しぶりに恋しきことを語られし。・・・汝を捕らふるが本意なれど、過ちし代はりにあまたの資源を確保せしためしは感謝せむ。敵に借りは作るまじかりけれどな・・・仕方なし。再生の使徒」
え、はいと突然自分のことを呼ばれとっさに顔を上げた。「そは汝の近いゆくすゑなり。さなるまじくばこの後1週間はわざと世間に気配り、おのれ磨きはもとより夜に知らぬ人を見かけばすなわち逃げたまえ。こは我が直感なれど、信ずるか信ぜぬかは汝に任すとせむ。あ、あとかの時は会わねど兄にもよろしく頼む。」風がまた吹いてきて侍の消えかけていた所をユウが慌てて声をかけた。「あっ、あの、敵なのになんでそんなことまで教えてくれるんですか?」「・・・それが武士道なればなり。」風が止んだ時にはもう侍の姿はなくなっていた。街へ帰るとユウが生きて帰ったことに残ってた人達はほっとしウィルにもちゃんと別れを告げた。それにしても彼は何者だろうか、また会う日が来るのだろうか。



そして、破滅の拠点では。
お兄ちゃんおかえりなさい、と幼い騎士の格好の女の子が伊左衛門に駆け寄ってきた。その子もまた、右目が赤く光っていた。「あ、ガラクタ侍おそーい。それで、どうしたのよ。なぜか今日マリオネット姉さんの機嫌がすごく悪いんだけど、あなた何かしたんじゃないの?私から聞くのめんどくさいから、話し聞いといて頂戴。」奥の化粧室で口紅を塗り直しながら頼んでいるのはフードをかぶり怪しい杖を持ち、ジャックに呪いを教えたあのメルディノだ。だまってうなづいて三階へと上がり、マリオネットの部屋のドアをノックするが返事がない。ドアノブをひねると空いたので覗いてみるとカノジョはブツブツと何か言いながらパソコンをいじっていた。そのパソコンの画面は伊左衛門には見えないが、いろんなタブが開かれていて、魔物の画像がいくつか出ている。「ふふふ・・・これでハッキング完了です。近頃あの学院に出る魔物のステータスを莫大にあげておきました、これで今度こそは死んで・・・いや、死ぬだけじゃ収まらない状況になります」うふ、うふふふと謎の勝ち誇った笑みを漏らし、ようやく人の気配がして後ろを振り向いた。「・・・邪魔せる、すまぬ姉上」そう言って軽くおじぎをすると出ていこうとしたが待ちなさい、と引き止められた。マリオネットは真剣な顔をして近づくと、その途端に伊左衛門の襟元を掴んだ。その勢いで伊左衛門の体が少し宙に浮く。
「あなた・・・っ。敵に余計なこと教えたでしょう!あなたのその・・・人の心を読む能力はそんなもののためにあるものではないことぐらい、わかってるでしょう!私はこんな屈辱的な弟を持った覚えはありません!」ハァハァと息を乱す姉に対しそれを聞きながら理解できない、と首を傾げていた。「我は武士道の通りに生きたるばかりなり。何を怒る要あり」すると怒りの頂点に達したのかいきなりせっかく買ってもらったペットボトルを奪うとーー
「姉上ーーーーーっっっ!!!!」
そう、それを窓から投げ落としたのだ。ガチャンと音がして落ち、中に入っていた飲み物が地面に広がった。「合成樹脂をこになせそ!!!!」伊左衛門が怒りに歯を食いしばって2本刀を抜くとマリオネット目掛けて切りつける。全て吹きとばせそうな風が襲うが、マリオネットは余裕の表情で水のバリアを張ってガード。「我は知れり。姉上が日ごろおのれの蒐集を捨てたること」「あんな使えないガラクタを持ってなんの意味があるんですか?それにあなた・・・また自分磨きと称して何週間も風呂に入ってないでしょう!これ以上近づかないでもらえますか?」両手に水の力を集めて突き飛ばし前が見えない伊左衛門は壁に押されたが風の力ですぐにマリオネットの後ろに回り込んだ。だが慣れてるようで振り向かずに刀を掴んだ。その時。
「ちょっとちょっと〜こんなせまいところで何してるのさ。僕はあの件については怒ってないよ。伊左衛門、僕の心読んだでしょ?」「まぁ大変!2人とも大丈夫?手当するからお姉さんに任せて!」
そこには操り人形を持った傀儡師ーーシギルとシャレた傘を持った貴婦人のような女の人が1人。ドレスではなく、茶色の動きやすい服装を着ている。そしてオシャレに小さな帽子を被っている。
「すまぬ、ついイラッとして」
2人は取っ組み合いをやめてドアに寄りかかっている2人をみた。
「僕ねぇ、ガラクタ侍がやったことは正しいと思ってるんだぁ。だって、肖像画見る機会あったんだけどユウって可愛かったしもしかしたら僕の"操り人形"になってくれるかもしれないじゃん?飽きたらまぁ、殺すけど」その言葉に貴婦人の女の人は少し腹を立てたように言う。「そんな、すぐ捕まえるべきだよ。私が捕まえたらマスターが褒めてくださるし、本当にお姉ちゃんポジションになれるかもしれないし・・・それにシギル兄さん、今までいろんな女の人を操ってころしてるんだからもういいでしょ?」
「何を言ってるんですか?私だけの力で屈辱を果たします。邪魔はさせませんよ」
やがてシギルと貴婦人の女は出ていき、また2人きりになった。
伊左衛門が今度こそ部屋を出ようとするとマリオネットがぼそっと呟いた。
「このまま敵に情けをかけると痛い目にあいますよ。」それに応じるように伊左衛門もつぶやく。
「はやく1度死にけり、今1回死んだところでなにもうつろはず。・・・されどかの時死にてかの世の友と会はまほしかりき」最後の方は聞こえなかったらしく姉が再び呼び止めることは無かった。
一方でマリオネット。
ーーでも、あの大魔女とかいう女。あの大魔女は確かに私たちが生まれた時に血を流して倒れてた人とそっくりだった。なんの魔法か知らないけど確かに私は力が抜けて結晶になっていた。あの人は本当に何者なのでしょうか。
ふと自分の手を見つめ動かしてみると正常に動いていた。ーー私たちの体は、一体。


ユウが家に着くと、アストレアはホットした顔をし、同時にもっと周りに気をつけろと注意された。
ウンウン、わかったからと適当に返事をして勝手に風呂に入る準備をする。「あ、ちょっと先に風呂はいっていい?多分けがしたところ菌やばそうだし」
あーとうなづいてまた自分の書斎に戻ろうとしたアストレアに、ペンダントを外して気づいたユウが声をかけた。「あ、そーいえばアストレアさん」
「あ?」ペンダントの後ろに"justice"と書かれた、ソニックに渡されたペンダントを渡す。
「これさ、よくわかんないんだけど"じくうのしと"に渡せって言われてさ。アストレアさんの周りにそんな人いない?」
その時。

ポロッ
アストレアの目から頬にかけて結晶のように綺麗な涙が2粒ほど落ちた。
「ちょっアストレアさん、どうしたのいきなり!」
ーーあの時の、ギアを合わせた時に聞こえた声もそうだ。あの声に何故か聞き覚えがあった。俺は・・・
なにか大切な存在を、わすれてる気がするーー

次回へ続く。
今回は伊左衛門(口調が古文)の人がいたおかげで訳しながらやりました笑
大変だったなぁ・・・
次の更新、いつか分かりませんがいつも通りよろしくお願いします!
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