ヒロインの輝き 2

 

 

 そしてメインの2人が若返り、リニューアルするに従ってのメンバー達も年齢を入れ替えた形になり、それだけではない今の時代に合わせる『赤い風車』の味を入れるのにいい役者が揃った。イメージ変更も含めて癖もあるメンバーもいた。当然、事件絡みで警察メンバーも若返る事になった。
 その中でもムードメーカーとして1番に決定したのがブリッジロックの石橋光だった。

 

「俺…ホンマにこのドラマでいいんですか? いくら新米ドジ刑事役でも…」
 光は時折ドラマにも出ている事や、少しドジだが人のいい若手刑事としては雰囲気などもよく、直ぐに決まった。

「緩急の役処だし周りの緊張を解すのも上手いって聞いてる。それに結構ドラマでてるしね」
 蓮にもそう言われてみたが、チラッと蓮を見て直ぐに視線を戻した。
(でも俺としては…敦賀君と京子ちゃんの仲のいいところ、ドラマ収録中でまで身近に見とうないんやけどな…。それに俺にこの役推薦した人がいたって聞いたけど、誰やろ? わっかんねぇ~~。シリーズとして生まれ変わるんやって言われると、前のなぎさ役とか好きやったし嬉しいんやけど、ビビるがな。あれでもまさか?)

 

「そう言えば敦賀くん。俺を推薦した人がいたらしいんやけど、誰かしらへんか?」
「俺とキョーコも数人推薦したけどね。監督が主人公の目線で推薦して欲しいと言われたんだ。キョーコが君と仲良いから話は聞いていたし、ムードメーカにもなると思ったんだけど、迷惑だった?」
「…やっぱ、敦賀くんなんや…」
 光の表情が引き攣っているように見えたのは気のせいではなかった。
「シリーズもののドラマは苦手だったかな?」
 蓮はニッコリと笑顔で光を見るが、何処かその笑みには黒い似非紳士が隠れていた。見る者が見ればわかる、黒い敦賀蓮(苦笑)

 

「いや…そういう訳じゃあ……(キョーコちゃんの横で、そないな事言える訳ないやろ。それにしても…キョーコちゃん、少し見いへん間に、また綺麗になってしもうたなぁ…はぁ~。まだ婚約会見のショックが抜け出せてないんやな俺…)」
 流石にキョーコも「坊」を卒業し、ブリッジロックのメンバーとは偶にバラエティーで顔を合わせるだけになっていた為、光にはキョーコの笑顔は眩しいほどに見えていた。

「敦賀君、いい性格だね。苛めちゃダメだろ?石橋君を…」
 自称、蓮がいなければ1番の男の古賀が声を掛けて光をフォローしてみせた。古賀にとっては蹴落としたいのは蓮の方だからだ。
「そうかな。俺、苛めてるかな石橋くん?」
「……ホントのこと言っていいでっか?」
 蓮はニッコリと余裕の笑みだ。キョーコとの婚約公表で余裕が出来てきたようだが、温厚な光にしては憎らしくも見えた。
「いいよ」
「苛めてくれてますな。いい男が…ライバルにもならへん奴を、苛めまっか?」
 言葉の上ではつつく程度の事ではあるが、大好きなキョーコを取られて傷心でいる光を、その仲のいい姿を見せつけているようで、光には溜息が出る。だからといって、蓮が仕事に厳しい男である事も知っていれば、何故自分への推薦をしたのかまでは分からない。
 光が蓮と古賀という、役者としても若手大物に囲まれている姿に、思わずキョーコが声を上げて近寄ってきた。
「蓮! 光さんを苛めちゃダメですよ!」
「どうして?」と蓮は飄々と答えた。
(京子ちゃん!嬉しいけど何故俺が苛められてるって思ったん?)
 幾分複雑な光と、蓮はそんな気はないと言わんばかりに応えると、キョーコの答えは至極簡単ながらも天然だった。
「とってもいい人ですから!」

 「ぶっ!」とキョーコの答えに吹き出した声が聞こえた。誰かは光には直ぐに分かった。調度後ろに立っていた、メンバーだろう。

 

 キョーコには天然たる所以の言葉なのだが、そこにいる男の間に…空気には漏れない溜息が満たしていった。

 キョーコの言っている事は正解だがその意味が指している『いい人』の意味が自分を巻き込んでの中心なのに、当の本人は気付いていないところが無言の溜息の山となって、同情の溜息が光に向かって流れていた。
 光は深~い溜息を吐いて、わかりきっていた事だと頭を垂れた。
「…俺のポジションは、それが限度やって分かってます。ドラマでは頑張りますが、俺は『いい人』止まりやっから」

 

 トボトボと若手俳優トップの2人から離れようとすると、もう2人のブリッジロックのメンバーが光を待っていた。
「俺…気のせいやのうて、明日になったら骨が何本か折れてるんやないか?」
 幾らか声を抑えて仲間達と話し始めた。
「それはリーダー次第やろ?」
「…お前ら人ごとや思うてるやろ!」
「俺らにはそうやもんな~」と仲間の声が揃っていた。
「そうそう。まあ勝負の決まったものに、茶々入れるリーダーやないやろ?」
 他のメンバーも今更、何かをする光ではないとわかって言った。
「……俺の傷口をえぐるんかいな」
「そやかて、前から勝負はきまっとったんやからなぁ」
 何年も過ごしてきた仲間の筈が、今更何をと言わんばかりに光に援護も何もしない。
「ああ~お前らなんか、仲間やないわい!」
「俺らも鋭い視線で射殺されとうはないからな」
「うん、そやそや」
 普段は涼やかで優しい敦賀蓮が、京子ことになると人が変わるのを知ってからは、誰も光の味方にはならない。
「冷たい仲間やなぁ~……」
 そう言いながらも、光も苦笑を浮かべながら京子の幸せを祈っていた。光の仲間も励ましてはいたものの、京子の光を見る目が仲間以上になる気配はないと気が付き、励ますのも程々にして見守っていた。それも相手は敦賀蓮では、どう考えても光に勝ち目はない。
 他のメンバーも、今回のドラマでは光と仲のいい制服警官(後に幼馴染みの設定)という事で配役を貰う事になり、仲のいいグループとしてドラマに呼ばれ、共演で賑やかな楽屋になっていた。
 それも京子ちゃんとの絡み自体は殆ど無いはずだし…。
「俺なんか端っこの役ですわ」
 光は心の中で深い溜息を吐いた。
「それでも、下手な役者さんは推薦していませんからね」
「それはどういう意味でっか?」
 今までと違う…蓮を尋ねる視線で光が振り返った。

 

「オイ。どういう意味だ? お前の推薦なのか?」
 古賀も意味あり気に感じたのか蓮に問い掛けた。
「長く一緒にやっていく仲間として、推薦させてもらったんです。これから長いシリーズとしてやっていく仲間の目線で、俺の役者としての目線で推薦出来る年代の近い役者で、ヘタにコケてもらわない、そういう意味での実力も込みで推薦した。ただそれはあくまでも俺の意見で、新しいこのシリーズでやっていけると取り上げたのは、監督達です。誰でもいいと考えた監督やプロデューサーの訳はありませんからね」
「俺は仲良し小好しでやるつもりはないぞ…」
 古賀の皮肉屋が、役者だからと顔だけドラマを作るつもりは無いと言った。
「それは俺も同じだよ。だがチームワークというのは必要だ。長くシリーズとしてやっていくならね。役者として、人として信頼出来るのは必要だ」
「それで…俺にもですか?」
「キョーコから、石橋君達のムードメーカーになってくれるところは、推薦を頼まれた時に必ず必要だと思った。だから俺は、仕事に私情は入れずに選ばせて貰った」

 

 キョーコは集まったメンバーが話し込んでしまって、心配になって覗き込んだ。
「あの…ブリッジロックの皆さんに何か問題があるんですか?」
 ハッキリは分からなくとも、キョーコも真剣な目での遣り取りについ口を挟んでしまった。
「大丈夫、京子ちゃん。何も無いみたいや。共演よろしくな」
「勿論です。よろしくお願いします」

 

「それで、私はこの娘の少し年上の従姉妹と言う事ですが、大丈夫ですか?」
 少し離れていた奏江が、自分の存在についても尋ねてきた。
「ああ、勿論だ。それに警察側でも女性刑事という役柄が欲しいと言われていて、何人かの推薦の中から君を絞り込んだ」
「モー子さんと一緒のドラマなんて、嬉しいな~♡」
 キョーコの声が弾み腕に絡むが、奏江の呼び名が気になった。
「モー子さん?」
「単なる愛称です。意味はありません!」
 脳天気な光が呟いたが、その目が奏江は意味を聞いてくるなと言っていた。美人故の睨みを利かせると、周りも深追いは止めてしまった。

 

「少し年上という事で、刑事役として時折彼女に情報をもたらしたり、守ったりする役処だ。今の視線じゃないが、キリッと睨みも利かせるし、従姉妹を守ろうともする役だ。相性的にはいいところだと思うが?」
「監督!」
 一度部屋を出ていた監督達が、いつの間にか戻ってきていた。役者達の言葉の投げ合いが、中々いいテンポでドラマの世界を作り出していくのを楽しんでいた。
 監督の言葉に、このドラマ自体は楽しくやれそうだと奏江は思うが、目の前の面々がやけに華のあるキャストに、それだけで話題性が出てしまうドラマになるだろうと想像出来た。

 

 そこに急ぎ足で走ってくる…もう1人の華を持った男が来た。
「遅くなってすみません!」とドアが勢いよく開いた。
「大丈夫だよ。ああ、貴島君も来たか。今日は顔合わせがメインだからね。我々も集まりとしての雰囲気が見たかったのでね」
「前が押しまして、遅れました」
 貴島は刑事役で、蓮と親交のある刑事という役柄として選ばれていた。遅れたのだからと急いで来たが、そのメンツに少しばかり驚きの顔になった。
「お~お~。なかなかのメンツが揃ってるな」
 右手を額に置いて、変わらぬ飄々とした気軽さで、貴島がメンバーを見回して蓮に呟いた。
「顔だけでなく実力もだよ」
「確かにその様だな。だがひと癖ありそうで、仕事は真面目な奴らだな。で、京子姫は?」
「京子姫?」
 光がその名前に反応すると、貴島がニヤリと笑った。

 

 

 

≪つづく≫

 

 

 

なははは。ここまで豪華メンバー揃っていいのかな?( *´艸`)

いいんです。妄想ですから。(^▽^;)

でもポジション的には悪くないと気にいっております(^▽^;)

 

 

 

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