さて、蓮のあのマンションに行くんですが…( *´艸`)

 

 

スキビ&CH   

       【プライベート・アイ】 7

 

 

 夕食後はキョーコの着替えを取りに、キョーコは蓮の車で『だるまや』に向かう事になったが、止めてあるお互いの車を見て、男二人がそれぞれの反応をした。
「ミニクーパーですか……。赤くて可愛い車ですね。冴羽さんの体格だと小さく見えて窮屈そうだ」
 微かに笑みを浮かべながらも何処か嫌みも交じり、蓮は言った。
 一般車と比べても小さく可愛いサイズの車に、身長は蓮と同じぐらいでより筋肉質のリョウでは、体格に比例していないと誰もが思う。
「ミニクーパーはラリーにも使われる頑丈な車だ。仕事柄丈夫で小回りもきくから、何かの時に重宝するいい車だ」
 リョウは蓮の言葉を軽く受け流して言った。
「しかし、その車はお前さんそのものだな」
「どういう意味ですか?」
「でかくて『此処にいます』って主張しているように目立つ。芸能人としての花は必要だろうが、出る杭は打たれるし、目立ちたくない時まで目立つぞ」
 リョウの少し皮肉も混じった言葉は、蓮へのアドバイスでもある。
 蓮にとっては母国が左ハンドルの為と、大型の車の方が車だけの事故ですむことも考えてのことだったが、確かに今は目立つ車として考えるところもある。
「今の俺は目立つことはかまいません。安全に仕事が出来ることが第一ですから。いつか変える時はあるかも知れませんが…」
「その時は、それほど遠くないのか?」
「……分かりませんね。まだ俺は夢を達成していませんから」
 蓮は見えない遠くに視線をやった。
「夢? これだけ役者として成功していてもか?」
 リョウが不思議そうに蓮を見た。
「俺の夢は……まだ先にあるんです。いつになればそこに辿り着けるかは分かりませんけど、必ず行き着くことが俺の役者としての目標です」
「……別の夢を同時に追いかけている訳じゃないのか?」
 リョウの言葉に蓮は戸惑いを見せた。
「……俺の……俺の夢は、同時に成就させることは難しいです。もう一つの夢は、叶わなくとも仕方がない夢で、叶ったら盛大にパーティーでも開きますよ。冴羽さんも香さんも、もちろん招待させて頂きますので」
「それだけ嬉しいことか?」
 一つの夢はリョウには既に分かったのか、ニヤリと笑いながら訊いた。
「もしかしたら、俺のサイコーにハッピーな日になるでしょうね」
 蓮は今度は笑顔で遠くを愛おしそうに見た。そして香と楽しそうに話すキョーコをチラリと見た。

 


 俺にとっての一番の夢はハリウッドに返り咲くことだった。
 だが俺にとっての今の一番は、もっと近くにいる君かも知れないと思い始めている。リックより君を選んだあの日から、君がいることが当たり前になっている。
 毎日会うことが出来なくとも、君を近くに感じていることが俺にとっての幸せだと感じれば、君との道が別れてしまうことが一番怖いのかも知れない。
 ……いつかその別れ道がくるのか、それとも差し出した俺の手を君が取ってくれたなら、俺は今考えている生き方を変えるのか?

 

 ……いや、全てを変えることは出来ない……。

 

 君を選んだからといって、ハリウッドでの成功はまた違う。
 俺は実力を認められて、あの地での成功を叶えるために、俺は敦賀蓮としてやってきたんだ。
 今までの俺を捨ててしまうことは出来はしない。

 

 二つの夢を掴もうとして成功すると思えるほどおめでたい性格ではない。
 だが、可能性がゼロではないのなら、欲張りになって両手を伸ばしてみるのも無駄ではないと思った。

 

 蓮が気持ちの切り替えをして少しすっきりとした顔になると、リョウは小さく笑った。
 蓮の車にはキョーコが、リョウのミニクーパーには香が乗ってその後を追って『だるまや』に着いた。
 キョーコはおかみさん達に仕事場に泊まることになったと説明し、手早く荷物を纏めると蓮の車に戻ってきた。
「すみません。お待たせして…」
「それほどの時間じゃないよ。忘れ物はない?」
 キョーコの荷物が思いの外小さくて蓮は訊ねた。
「大丈夫だと思います。それよりも……敦賀さんのお宅に泊めていただいていいんでしょうか…?」
 キョーコにはその方が気がかりだった。
「社長命令だよ。それに後ろのボディーガードもいることだしね」
 蓮の車が走り出すと、リョウ達の車も追いかけて行った。
 そして蓮の車が滑り込んだマンションを見上げて驚きの声を上げた。
「デカ……」
「さすが敦賀蓮のマンション……」
 1階に当たる駐車スペースに蓮とリョウの車を止め、蓮とキョーコには行き慣れたエレベーター前の入り口で二人を待った。
「此処から先はパスワードとこのカードキーがなければ入れませんから、出入りには気をつけてください」
 蓮がリョウと香に説明した。
「流石、高級マンションだけあって、セキュリティーがしっかりしてますね」
 エレベーター前でマンションの中を見回して香が呟いた。
 同じマンションでも自分の住む家とは大違いだと、香は思った。
「ええ。それと上層階にはこちらのエレベーターでしか行けません。それと、最上階は俺の部屋だけです」
「……このマンションで一人でワンフロアの一部屋!?」
 車から見た広さだけでも一部屋の広さが予想がついて、その家賃を考えて香は目が回る気がした。
 若手俳優としてもトップを行く敦賀蓮だ。家一つをとっても常人とはレベルが違うと分かりながらも、予想を超えるレベルに溜息がでた。
 エレベーターに乗れば蓮が最上階を押し、静かに上っていく高級な箱。
 最上階に着いた音がすると、奥に向かって延びる廊下は端まで続いていた。

 

「……本当にワンフロアだ……」

 

 思わず香が口に出して言った。

 

 

 

≪つづく≫

 

 

普段住んでるおんぼろアパートとの差に、香ちゃんビックリしてます(^▽^;)

 

 

 

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