1話をアップした後に~(@_@;)

【ミニパニックー内容はPCにデーターとして移しておりましたが、ポメラからデーターを移す時に使うマイクロSDミニちゃんが行方知れずとなりました。もしかしたらパニック起こして途中で一時停止するかもしれませんので、その場合はご容赦ください<(_ _)>】

 

 

【読まれる時の諸注意を】

「ディスプレーデザイナー」の撮影シーンがあったり、普段のシーン、蓮キョ、リョウ&香と場面は変わります。今までに書いたドラマ系の話を読まれた方ですと大丈夫だと思いますが念の為。

 

 

 

 スキビ&CH   

       【プライベート・アイ】 2

 

 

 

 そして始まった『ディスプレーデザイナー』の収録は、デパートでの収録は京子演じる遥がディスプレーする夜がメインとなっていた。
 全くのディスプレーだけのシーンでは、スタジオ中に場所を作り合成することも出来るが、外の風景などが必要な場合はデパートの閉店後の撮影となった。
 だが余り深夜になっては役者からスタッフにも負担がかかる為、閉店後の照明が落ちると早めに始められるようにと、デパート側にも願い出てあった。
 デパートとしても仕事の終わった後の場所なら支障無い上に、売れっ子の芸能人出演のドラマに使われ、店としても協力と言うことで店の知名度も上がる。

 

「夜になれば冷えてきますので、皆さん風邪など体調も気を付けてくださいね。撮影に影響のない場所に車も待機していますので、身体が冷えないように気を付けてください」
 監督の物腰柔らかな注意の後、放映初日の二人の出会いのシーンの収録にかかった。

 


* * * * *

 

 大樹がパタンナーの大城(貴島)と従業員用の出口から出てくると、正面のウィンドーが明るい事に気付いた。

 

『遥ちゃんだろ?』

 

 大城の親しげな呼び方に、どんな女性か気になった大樹は早足で正面ウィンドー前に辿り着いた。
 店内は暗いままで、ウィンドー周りだけ明るい中を、一生懸命に働く女性がいた。ガラス越しとはいえ、蓮が見ていることにも気付かずに飾り付けをしていた。

 

『やっぱり遥ちゃんだ』

 

 大城はガラスをコン、コンコン、と3回叩いた。
 女性はその音に驚いて、大城だと確認するよりも奥に逃げ込んでしまった。
 失敗したかと思った大城だが、逃げた遥がそっとこっちをうかがう様子に手を振った。
 しかし大樹を見ると、また陰に隠れてしまった。

 

『お前が脅かしたからだ…』

 

 そう言われてしまったが、このガラス越しでは声は聞こえない。
 でも初対面で、声も聞こえない状態で、挨拶をするなら…。
 大樹は右手を大きく動かしながら胸に手を当て、お姫様に挨拶するような手振りで頭を下げた。

 

 遥はその様子を陰から見つめ、大樹の動きに溜息を漏らした。

 

 ……あのモデルとデザイナーを勤める、『レイ』だ。
 なんて綺麗なお辞儀なの?
 言葉は伝わらなくとも、今逃げてしまったことだけでも謝りたい!

 

 そう思った遥だが、今一歩が出なかった。
 悩んでいるうちに大樹と大城は行ってしまった。
 それでも仕方がない。
 今は遥の仕事の時間であり、彼らの時間ではない。

 

 こんな近くで顔を見られただけでも、少しいいことがあったわ。私には朝までに仕上げなければいけない仕事があるのよ、遥!

 

 

* * * * *

 


 二人の最初のガラス越しの出会いのシーンは、ライトの反射調整もあり、外からの撮影、中の遥だけの撮影もあり、短いシーンだがお互いが意識する最初の大切な場面だ。
 緒方監督も、ガラスやライトに邪魔されないように何度もテイクを出しては、出会いのシーンの撮影は夜中に近かった。

 


「お疲れさまでした皆さん。コーヒーとスープが用意してありますので身体を温めてください」
 スタッフの用意した飲み物に、デパートの中にいたキョーコも出てきた。
「最上さんも、お疲れさま」
「いえ、敦賀さん達の方が寒かったはずです。私はまだましでした」
「でも暖房は入ってなかっただろ?」
「まあ…そうですが……」

 

 いつもながら仲のいい二人に、スタッフ達からも暖かい視線が注がれた。
 だが大城役の貴島は京子をくどくチャンスになると思った役だったが、思ったより二人でのシーンが少なくて、話しかけるチャンスも蓮が居ることで難しくてつまらない顔をしていた。
 深夜にも及ぶ撮影になったが、蓮や貴島、京子と並べばファンでなくとも覗いてみたいと人だかりが出来た。
 スタッフはそんな野次馬達へも撮影中は「撮影中です! お静かに!」と札を掲げて注意を促したり大変だ。
 今夜の撮影は終わったと分かるとスタッフ達の緊張もいくらか解ける。
「皆さんも暖まってください」
 まだ秋も深くなってきた頃だが、深夜ともなれば冷えてくる。撮影のディスプレーはもうすぐ雪の季節へと衣装を変える。
 役者達もスタッフも、そんな夜の寒さに温かい飲み物を求めて、バスに集まってきた。

 

「京子ちゃんは…京子ちゃんは……俺のものだ!」

 

 野次馬の中に紛れて様子を伺っていた男が、キョーコめがけて突進してきた。
 スタッフが男を押さえて止めている間に、慌てて京子と蓮、貴島とバスに乗り込んで戸を閉めた。
「……あ、あの…あれは何ですか?」
「今のところは遣りすぎの追っかけだね」

 

 それぞれに人気のある二人は、人気商売としてこういった場面にあったことがあるのだろう。
 だがキョーコには、見知らぬファンにあんな声で叫ばれたことが何か不気味で怖かった。

「はい、最上さんはスープかな?」
 バスの席に腰掛けていると蓮の声がした。
 食事係のスタッフから、蓮がキョーコに持ってきてくれたのだ。
「すみません、敦賀さんに……」
「最上さんはさっきの声に動揺しているみたいだけど、余り気にしない方がいい」
「そうなんですか…?」
「応援してくれる気持ちは大切にしたいけれど、余り騒ぎ立てるファンには気を付けた方がいいけどね」
「……はい……」

 

 蓮はキョーコのファンが増えてきた事は知っているが、さっきのような騒ぎに繋がるファンは時として驚く行動に出る事があることが心配だった。
 それに十代の新人で注目も高いともなれば、ぽっと出の新人扱いでやっかみも多い。
 蓮も実力を認められるまでの努力を無視され、顔だけの俳優だと言われたこともあった。
 キョーコもLMEという大手プロダクションの所属と言うことで、実力よりも事務所が取った仕事だと思われることもある。確かに社長のお気に入りと言うことも知れ渡っていることだが、一つとして事務所が取った仕事はない。
 そんなキョーコも芯は強く実力は余りあるほどだが、まだ業界に慣れきった訳ではない。それに少女としての弱さはある。その辺りは先輩である蓮がサポートし、緒方監督も後押しをしてくれる。
 しかし先ほどのような輩は気を付けなくてはいけない。初めての主役として共に仕事の出来る喜びに、心配しないように優しく声をかけることで落ち着いて欲しかった。
 先輩の蓮の言葉にキョーコは素直に頷くが、あの声の響きに恐怖が拭えなかった。
 それでもスタッフを交えて談笑をしながら、キョーコも気持ちが解れていった。

 

「遅くなると明日の撮影にも差し支えますから、敦賀君は京子さんを送ってくださるんですよね? 貴島君はこちらのスタッフが車まで送りますが、それでよかったですか?」
 緒方監督が言うと、貴島の顔が面白くないと言う顔を一瞬したが、そこで拗ねてばかりいては大人げないと平静を装った。

 

 そしてそれぞれのバスで衣装を着替え、キョーコのバスの前で蓮は着替えが終わるのを待った。

 蓮は、この仕事でキョーコが力を出すことが出来れば、緒方監督の言うようにまた成長をしていくだろう事が予想できた。
 ひたむきに頑張るヒロイン遙の姿は、同じ働く女性にも共感を得るだろう。
 途中で出てくる女性の敵ともいえる対象のことも、男には「それが?」と思える事がどれほど心を傷つけるのか、それでも前を向くヒロインを俺は支えながら愛していく役だ。

 

 ……どこか俺と彼女の関係にダブる処もあるな…。

 

 違うとすれば、俺自身も彼女の強さに助けられて今があることだ。

 このドラマは彼女の主演ドラマとして成功させる。いや、彼女の頑張りが成功させるだろう。
 蓮がぼんやりとキョーコへの思いで笑みを浮かべていると、足音が迫ってきた。誰だろうと振り返ろうとした時、バスのドアが開き「敦賀さん」と声がした。

 

「キョーコちゃん! 俺だよ!」
 足音の声はキョーコの声とほぼ同時だった。 

 

 その声は先ほどの男だった。
 そのまま走り寄ってきた男はキョーコしか目に入っていなかったのか、蓮の姿を見つけると、ポケットから小型のナイフを取り出して叫んだ!

 

「キョーコちゃんは、俺のものだ!」

 

 撮影が終わったこともあって、スタッフ達も気が緩んでいたのだろう。
 その隙をぬって潜り込んだ男の目は、一瞬で変わり蓮を憎む目になっていた。
 男がナイフを構えて蓮に向かった。
「敦賀さん  !!」

 

 目の前で蓮に向かう男に、キョーコは飛び出したが蓮がキョーコの前を動かなかった。逆にキョーコを庇うように前に出た形になった。

「キャ   !」
「敦賀君!」

 

 

≪つづく≫

 

 

 

 

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