【リク罠208】「酔わない女(仮)」

 

 

魔人様<リク罠>より~酔った勢いで関係を持った蓮とキョーコ。それ以来蓮からはお酒を理由に誘いながら…さて二人は?

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 

 

 

 

 会見場が大きくざわついた。驚きのあまり大きな声を出してしまった者もいた。

 

 大手芸能事務所LMEのトップ、芸能界の若手トップと言っていい男の会見が、始まった途端に嵐の様相となる告白からだったからだ。

 敦賀蓮ともあろう男が、自宅で後輩を押し倒したというのだ。

 

 

 

 

甘えたい女~もうひとつのお祝い 14

 

 

 

 

「な、何を言ってるんですか!?」

 

 キョーコは言われてしまった内容の恥ずかしさよりも、蓮がそう言ってしまったことで…敦賀蓮という芸能人のイメージが壊れてしまうことが怖くて慌てた。とんでもない事だと驚いて、声を上げて蓮を止めようとイスを倒しそうな勢いで立ち上がった。

 

 蓮の言った事は、男としても後輩に何をしたんだと、情けないと言えることだったが、それが『抱かれたい男』のトップというのも目も当てられない。呆れか驚きの顔が蓮にも見えた。

 

 蓮はこの場にいる全員に、この会見を見た全ての人にそう思われても、キョーコに本当の事を伝えなければ二人のこれからが始まらないと、声を上げたキョーコを一瞬見てから蓮はそのまま言葉を続けて言った。

 

「敦賀さん!! なに…を…何を言って!!」
 キョーコが叫んで詰め寄っても、言わなければキョーコの本当の心は手に入らない。軽く腕でキョーコを制して蓮は続けた。

 

「但し!お酒に酔っていただけではありません。俺は彼女をずっと好きで、見つめていて、お酒の力でと言うよりも彼女にも酔って、本当に欲しい彼女に…手を伸ばしてしまっただけです。彼女が誘惑したという噂もあるようですが、全く違います。男としてはなんともお粗末な…情けない交際のスタートですが、京子さんだから、お付き合いという言葉で縛ったのは、俺の方です」


 そこで言葉を一度切ると、蓮はキョーコを見て言った。
「だから、京子さん…俺から逃げないで、これからも傍に居て欲しい人として、俺を見てもらえない?」
「…なに…を…何を言っているんですか!? 貴方のイメージを壊して、…こんな…こんな沢山の人の前で……。貴方にならどういう事になるか分からない筈は…ないのに…。何故?」
 キョーコは首を振りながら、蓮の行動が…自分への言葉が、どうしてここまで必死なのか理解出来なかった。

 

「俺のイメージ? 芸能人、モデル、役者? それとも芸能人としての敦賀蓮の顔? 俺へのイメージはそれぞれあるとしても、俺が今一番欲しいのは、君だけだ! 愛する君を守れないなら、そんなモノに執着する意味はない!」

 

「いえ…だって、だって、貴方の…トップスタートしての座を…捨てる気ですか!?」
 誰もが憧れる華やかな場所。其処に立てるのはほんの一握りの人だけの場所にいるのに…。

 

「トップスターの座?」
 キョーコに言われて蓮の視線が細くキツくなった。
「だって…自分で自分の地位を下げるような事をしてしまっては…」
 心配するキョーコは、青ざめて蓮に詰め寄ったまま震えながら下を向いてしまった。
「捨てるも何も、ソレだけが俺の欲しいモノじゃない。俺がなりたいのは、ただ輝くだけの存在じゃない。役者としての本物の実力が欲しいだけだ。だけど君を守れないなら、男として最低なだけだ…」

 

 蓮のキョーコを見つめる目は、自分へのジレンマに悔しそうに歪んでいた。そしてキョーコを傷付けて、苦しめてしまった自分が許せなくて歯ぎしりさえしていた。
 そんな蓮にキョーコは驚いたが、全てが自分のせいだと俯いてしまった。

 

「君がどうやっても逃げるから、君を捕まえる為なら、何でも出来る。君が信じてくれないのなら、此処に居る人全てが証人だ」
 蓮の言葉に、キョーコは…初めは俯いて小さく震えるように振っていた首を、強く振って蓮の言葉を必死に否定していた。頑ななキョーコの姿に、蓮は何処までお互いの気持ちが近付いたのかとキョーコを見つめた。

 

 あんなに一番近い処に居た筈なのに、また離れてしまうのか?
 また君は…離れて行ってしまう気なのか?

 

 そんな蓮の頬に小さな水滴を感じて、キョーコの顔に更に近付いて見ると、それはキョーコの涙だった。

 こんな状況で、キョーコは自分の為に泣く女性ではない。
 言葉にはしてくれていないけど、同じ気持ちでいてくれていると蓮は感じた。だから……。

 

「でも…でも貴方の芸能人としてのイメージを…えっ…ふっ! ふむ!」

 

【……えっ………………】
 そうかろうじて聞こえたのは、マイクが拾った司会の山村の声だった。

 

 会見場全体が、今何が起こっているのか、マイクを向け、会見という場で、誰もがある一点を見つめて水を打った様に静かになってしまった。
 会見のメインである蓮が、こともあろうに記者達の目の前で、キョーコの唇を自分のそれで塞ぎ、会見場でキスを始めてしまったのだ。


 驚いたカメラマン達も我に返って慌ててシャッターを切るが、インタビューを待ち構えた記者達は言葉を失って赤面している者もいた。
 皆が見入ってしまう程の止まった時間は、蓮とキョーコの唇が離れて動き出した。

 

「…ふん。また…そういう事を言うなら、また塞ぐよ」

 

 

≪つづく≫

 

 

 

蓮様、キスぐらい慣れてるから何ともないのかしら?(^▽^;)

会見は続きま~す。というか、コレ会見か?

 

 

 

 

web拍手 by FC2

 

スキビ☆ランキング