【リク罠208】「酔わない女(仮)」

 

 

魔人様<リク罠>より~酔った勢いで関係を持った蓮とキョーコ。それ以来蓮からはお酒を理由に誘いながら…さて二人は?

 

 

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 電話が切れると、蓮は空を見上げながら溜息を吐いた。
 愛しいはずの女性との電話なのに、キョーコの声が寂しさを含んでいたのも感じた。勿論それは蓮自身も同じ気持ちだった。
 

 

 

甘えたい女~もうひとつのお祝い 10

 

 

 

 

 言葉を交わしているのに、何処かすれ違っていると感じた。

 近付いたはずなのに、一番近い場所で繋がったと思っていたのに、逆に遠くなってしまったのか?

 2人の距離を埋めるのはなんだ?

 


「……おい」
「何ですか?」
 蓮から少し離れていた社が、神妙な顔つきで蓮に尋ねた。

 

 社も、初めはマネージャーとはいえ離れた方が良いと思ったが、蓮の声の響きに、少しだけ距離を取りながらも聞き耳を立てていた。
 蓮の表情から、相手がキョーコだと察しつつも、その話し方や…漏れ聞こえるキョーコの話し方に違和感を覚えたからだ。

 

 蓮には顔が見えなくとも、社がどんな顔で自分を見ているのか分かって、そちらに顔は向けられない。社には何処か寂しそうに笑みを浮かべる蓮の横顔が見えた。
「お前達…お前とキョーコちゃん、あの後どうなってるんだ?」
「……わかりますか?」
 蓮の寂しそうな吐息が漏れた。
「…わかるよ。何やってるんだ? 進んでるようで、付き合ってるような感じだが、お前もだけど…キョーコちゃんも変だよ…」
「…そうですね……」

 

 蓮は社がかわせない場所を突いてきたのを感じた。
 長い時間を見守ってくれていたから分かる、電話での僅かな言葉の違いで伝わってしまったのかと、我ながら痛いと感じた。

 

「お前の人気だと…何処からでも声は掛かるが、玄人でも素人でも相手をする男じゃ無い。遊びでもいいからと向こうが思っても、お前も真面目な奴だからな。本気のキョーコちゃん以外は遊んでも虚しいだけだ。粉を掛けられてもその重心はブレようが無い。プレイボーイのような称号が幾つ増えても、恋には一途なお前の筈だが…」

 

 社の目が、溜息と共に蓮へと詰め寄る視線へと変わった。

 

「今のも…ホステスさんかと思ったけど、キョーコちゃんだったんだろ?」
「…ええ……」
「イヤ、お前がそういう玄人さんを相手にするとは思ってないが、話し方や遣り取りが、キョーコちゃんっぽく無かったっていうか…」
「…やっぱり…無理しているように聞こえましたか?」
「……お前もだよ…。なんか…」

「変に馴れ馴れしく…とかですか?」
「ああ。かと言って、他人行儀な感じにも感じたし…」

「…ふぅ~~。そろそろ……限界ですかね…」
 蓮の溜息とその言葉は、社の勘に障った。
「何がだ? キョーコちゃんとどうにかなってるのは感じてたけど、キョーコちゃんを泣かすなよ!」
「泣かしたくはありません。泣かすつもりではありません…」

 

 社にも蓮に迷いがあるのは感じた。
 それに、そう答えた蓮の方が…涙は見えないが泣いているような寂しさも感じられた。


「…まぁ、キョーコちゃんも二十歳になったし、マネージャーと言ってもそれなりに大人なら、一から十まで口出すのも厚かましいけど、俺としてはキョーコちゃんもお前も、幸せになって欲しい」
「……はい、ありがとうございます。ご心配お掛けします」

 

 社が言葉通りに、2人を心配してくれているのは蓮にもよくわかっていて頷いたが、何処か素直に飲み込んでいるのとは違った声になった。

 

「お前もキョーコちゃんも、2人が向き合わなかったら…どうしようも

ないからな」
「…そうですね。少しばかり…順番を間違えてしまった初めが…原因かと…」
「頼むぞ。キョーコちゃんは一途だからな。それに元気印に見えてデリケートな娘だからさ…。ホントに早めにな…」

 

 社の溜息がして、ふぅ…と蓮が空を見上げながら、キョーコとの宙ぶらりんで不安定な関係を、いい加減に立て直さなければいけないと思った。
 キョーコの気持ちは、社が言うように蓮が思う方向でいてくれると心の奥では確信していた。キョーコが…気持ちと身体を分けて考えられるタイプではないから、こんな形でも幾らか続いたのだろうが、逆にそれが苦しめてもいる。どっちつかずで蓮が不安なら、キョーコの方がより不安だと思っていた。
 それが…今の電話という形でのラブコールだと思う。

 

 彼女から俺にこんな形で連絡が来るなんて、俺が彼女を離したくないと思っているのと、同じと思っていいよね?
 俺に甘えていてくれるのかな?
 でも…そろそろ中途半端な形は、俺も寂しい。心が半分乗らない躰は、感じて啼いてはくれるのに、何処か消えるように逃げてしまう。温かい筈の君の温もりが…腕の中に残ってくれない。

 

 

 肌を重ねている時も、腕の中に君はいるの?
 俺は君を…ちゃんと抱き締めているのかな?

 

 

 

《つづく》

 

 

焦れ焦れに焦れてる方あるかな?(^^;

もうちょっとお付き合いください。

 

あと、本日本誌発売日という事もあり、

感想は時間をずらして限定アップを予定していますが、本日中になります。少し出掛ける用事があるので。

でも多分、黙っていられないのではないかと思うので…(^▽^;)

 

 

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