【リク罠208】「酔わない女(仮)」

 

 

魔人様<リク罠>より~酔った勢いで関係を持った蓮とキョーコ。それ以来蓮からはお酒を理由に誘いながら…さて二人は?

 

 

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 毎日の忙しい仕事をこなす蓮が、早足でTV局のホールを横切っていると、蓮にとっては聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。

「綺麗になってきた女優の京子の噂、知ってるか?」
「京子ちゃん? なになに…」
「京子って、二十歳になったばかりだけど、思ったより呑めるらしいですね」
「えっ、そうなの?」

 

 

甘えたい女~もうひとつのお祝い 3

 

 

 

 急ぎ足のTV局内での移動中。
 偶然聞こえてきた…蓮の耳に聞こえてきた『京子』の名前で蓮の足取りは緩やかになって、その声の主に聞き耳を立てた。
 多少のことは業界内での人気のバロメーターだが、お酒が絡んだ話となれば、蓮にとってはキョーコへの心配をかき立てる話題だ。

 

「少し前にバラエティーの打ち上げがあって、京子が『まだ練習中なので…』て可愛く笑いながら言ったから、男連中が余計に盛り上がって、『大丈夫。送っていくから』って言ったメンバーの方が潰れたそうですよ」
「なんだそれは、ははは…。潰れたら送るつもりが負けたのか? 今度俺も誘ってみるかな~♪」
「彼女と接点あるんですか? 真面目な子だから、仕事仲間ぐらいしか無理らしいですよ」
「そう言えばお堅い子だったな」
「それにLMEでも、敦賀蓮の後輩という守りもありますよ」
「でも恋愛とかは自由なんだろ? LMEは」
「接点もない男から声を掛けられて、ホイホイと付いていくような軽い芸能人は、LMEにはいないじゃないですか? それに敦賀蓮を見慣れてる女性が、あなたに靡きますか?」
「オイオイ、アイツと比べるなよ~」

 


 直ぐ近くに蓮がいるとも気付かず、男達はキレイになったからこそお近付きになりたい女優の噂で花を咲かせていた。
 芸能人であれば…キレイになる年頃には誰もが噂の種になる。
 お酒が呑めるようになれば、酒の席へと誘いやすくなるのは男達の下心が丸見えだ。

 

 そんなキョーコの噂話を聞いてしまった蓮は、顔には出さないが心中穏やかではいられなくなった。
 そして焦った。

 

 ヤバい、ヤバい、ヤバい! 最上さんが!
 まだお酒慣れしていないキョーコが、この前の俺と同じことに…?
 いや、最上さんなら軽いアプローチぐらいにそんな事には……?
 でも…いやいや……まさか?

 


 キョーコとひとつになれた歓びも束の間、キョーコを他の男に取られたくない蓮は、『お酒の練習』という名目を立ててはキョ-コを誘った。だがお互いに忙しくて、月に1,2度がいいところで、身体を重ねたのもまだ片手程だ。
 それでも愛しく思う女性を腕の中で啼かせて、そして抱き締めて眠れる歓びは、今までに感じた事がない甘さで…。全てを掻き抱いて愛せる歓びが、至福という感じた事のない深い歓びだと知った。

 

 だからこそ…蓮は、手に入れたこの幸せな時間を無くす訳にはいかなかった。やっと抱き締めたキョーコという…最愛の女性との時間を…。

 

 

「最上さん。また良いお酒が手に入ったんだ。どうかな?」

 

 ミイラ取りは何度やっても懲りないもんだろうか?
 君が欲しくて時間をみて何度でも声を掛ける。
 お酒という名目があれば、俺はそれを罠にして君に声を掛け、そして俺は君に溺れる。
 甘い君の肌に何度でも溺れて、甘い君の声に惑わされて俺の方が罠にはまったミイラの状態だ。

 

 ミイラ取りが自らミイラになるなんてバカだと思ってた。
 でもミイラが欲しくて手を伸ばした奴の中には、そのミイラを手放せなくなる奴がいるんだと分かった。
 ただのお宝だと思ったのに、惚れ込んで手放せなければ、自らもミイラになる。君に溺れて君を手放せなくて、生気も君に吸い尽くされた男は、干からびたミイラになっても君が欲しいと手を伸ばす…。

 

 少しだけ魅惑の甘いお酒も、君を誘いながら俺の方が君に誘われて、君の無自覚な誘惑だと言い訳しながら…溺れるのは俺ばかりでどうすれば君を俺だけの存在だと気付いてくれる?

 

 君は俺だけのモノだと……俺には君しか居ないと……。

 


『お酒…ですか? …そう…なんですか…。敦賀さんはお酒に強いから、よく頂くんですね…』
 蓮からの電話は嬉しいのに、お酒を口実の2人の関係に、少しずつキョーコは戸惑いも覚えだしてしまった。
 二人きりで会える時間は嬉しいのに、その流れでの2人の行為に心の中で溜息が出てしまう。

 

 敦賀さんの腕の中…後輩でなく女として重ねられていく躰が、ただの躰だけの関係なのか…女としての歓びもあれば、恋する人の気まぐれなのかが分からなくて不安になってきた。

 

「そうかも知れないね。この前のお酒が口当たり良かったからね。”とても美味しかったです”って伝えたら、また頂いてしまったんだ」
『そうなんですね。そうでしたら……ええ…と、来週でいいですか? 今週は今日のお仕事の方達との最後の仕事がありまして、その後に打ち上げがあって…。まだ飲み慣れないので、余り続けては心配なので…』
 キョーコは手帳で予定を見るふりをしながら、自分の身体のリズム表も見ていた。
「あぁ…そうだね。身体にもお酒のお休みが必要だからね」

 


 蓮からの電話を切ってから、キョーコは小さく溜息を吐きながら頬を赤らめた。

 

 本当は…お仕事はあるけど、今週も来週もお酒のお誘いはない。この前呑めそうだって知られてしまったから、出来るだけ適度にお断りしている。でも…敦賀さんだけは特別だもの…////
 好きだもん……。求められたら嬉しい…////
 ……嬉しい…けれど………

 


 キョーコの受け答えに、蓮も携帯を切ってから小さく溜息を吐いた。
 最上さん…やっぱり声を掛けられ始めてるんだ…。そんなに声を掛けられてるの?
 でも誘ってよかった…。来週は俺とだけだよね?
 お酒は俺が用意したけど、良いものを選んで貰った。
 俺も…君とのお酒で、気分が良すぎて色々呑みすぎたせいか、初めての時は記憶が飛び飛びだけど…夢のような君の肌、君の唇、君の全ては、俺だけのモノにしたい!
 いや…俺だけのモノなんだ! 他の誰かになんて、考えられないんだ!

 

 

《つづく》

 

さて、ミイラ取りがミイラになって、焦りまくる蓮様の今後はいかに?

 

 

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