さっきまで、女王様でヒールでイジメていたのに、子鹿のように怯えた眼で、微かに震えてさえいる。

 

 

【リク罠】

        危険な番宣~「夏のトビラ」~14話

 

 


「さっきまでの、俺を足蹴にしていた時とは別人の眼だね…」

 

「…ダメ…、イヤ……ヤッ!」
「ダメ? 『シテ…あげる』ってさっき言ったよね? お仕置きはしな

いとね…」

 

 洋子がイヤイヤと首を振ってみても、蓮は冷ややかな目で洋子を見た。
「君も…イジメテ欲しいんだろ? 男がイジメテ欲しそうな気持ちと同じように、君もそうだからイジメテ欲しい気持ちがわかる…。君の言った、ギブ・アンド・テイク…だよね?」
「違う、違う、違うの!!」


 洋子が必死に声を上げるが、蓮に足を触られ、その上キスまでされて、蓮の声とそして視線にも身体中が痺れるように力が入らなくなり、洋子は縫い止められるようにして床から起き上がれなくなってしまった。逃げる力も入らなくて、背中を這い上がる感覚に「違う!」とだけ叫んだ。
「イヤ…だよ…」
 「チュッ…」とキスする度にワザとリップ音を立てる蓮に、洋子の顔から気位の高い女王様の顔が剥がれ落ちてしまった。
「……まだ君は…俺の処まで堕ちてきてくれないのか?」
「あっ……や…やっ!」
「俺が…最上キョーコという女性を本気で好きな事を、知って欲しいんだ」
「……な…何を…言って…あっ…」
 蓮はキスをしながら少しだけその足に舌を這わした。
「ひゃっ!」
「この方が感じる? 最上さん? 隠れていないで、俺の前に出て来て、そして…俺を1人の男として見てくれないか? 俺が話したいのは、洋子じゃないんだ。キョーコ!」
「キョーコ? …あ……」
 洋子の声からどこか力が抜けて、蓮の唇が触れる度に甘い響きが漏れ出した。
「そう、最上キョーコ。俺がただ1人愛する女性の名だ…」
「キョーコ……が?」
「そう……たった1人の俺の愛する女性だ…」
「そんな……そんなことは…、あり得…ないのに…」
 洋子の目から寂しそうな涙が零れ落ちた。

 

「洋子?」
 蓮の声で…洋子が涙が飛び散らせるように首を振って大きな声を上げた。
「違う……違います!」
「何が違うの?」
 洋子が蓮を惑わそうとしてきたのかと思えば、話し方が僅かに変わった気がした。
「違います! 私はキョーコです! 敦賀さん!! 止めて下さい!!」
「…!! 最上さんに戻った?」
「キョーコです!! だから、だから、もう止めて下さい~」
 今の状態が堪らなく恥ずかしくて、キョーコに戻って必死に蓮に訴えた。
「ホントに…最上さん?」
「ホ…ホントです! お願いですから、恥ずかしいですから…止めて下さい!」

 

 蓮は顔と言わず首筋まで真っ赤に染めて、その理由を恥ずかしいという表現で言う姿に、キョーコに戻ったという言葉を信じた。

 

 キョーコに戻ったことで、蓮はキョーコの抱えていた足から手を離した。
「最上さん教えて。最上さんは…今までの洋子としての自分を、覚えてる?」
「あの…少しは……」
 返事をしながらも、キョーコの視線が泳いで挙動不審だ。蓮を真っ直ぐ見詰め返せない。だが蓮にはそれが、自分が上半身が裸である為だと気付いて、間違いなくキョーコ本人だと納得した。

 

「ここに来た時の記憶とかはある?」
 蓮はキョーコには洋子だった時とは違う穏やかな声で話しかけると、キョーコは首を振って答えた。
「その…今日の仕事が終わった頃までははっきりあるんですが、こちらのマンションに来る前から…記憶が霞がかった感じで…。リビングでの遣り取りは、途中からはっきりしてきたような感じで、敦賀さんが……その…////」
 キョーコが真っ赤になって言い淀んだ。
 蓮は小さく溜息を吐いてから、キョーコなら言葉にするのが恥ずかしいと思う行動を簡単に言葉にした。
「君の足にキスし始めたら、途中からはっきりしてきた?」
「…あの…は……はい…////」

 

 

 

≪15話にーつづく≫

 

2話連続アップ予定です!
この後10分後に同14話の限定話を公開します。
どちらも15話に続きます。多分…(^^;)

 

あと、エ・ロっぽいし長めです(^▽^;)

 

 

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