スローテンポでございます。

妄想?暴走?何処へ行く?(←オイ?)

暫くお付き合いいただけると嬉しいですm(_ _ )

 

 

 

【リク罠】 危険な番宣

         ~ドラマ「夏のトビラ」~ 3話

 

 

 

 社は蓮の背中を叩きながら、ジョークを言っているかのように楽しそうに楽屋に足を速めた。
 担当俳優とはいえやけに急かして歩く様は、人から見れば何かあったのかと印象が悪く見えるかも知れないと、早足で歩きながらそう考えて、冗談めかして蓮に話しかけながら楽屋に入った。

 

 蓮と共に楽屋に入ると、社は直ぐに楽屋口の鍵を掛けた。 
 すると蓮は私服のポケットに入っていた自分のスマホに飛びついた。流石に社も驚いたが、それほどに蓮の気持ちがキョーコに向かっているという事だ。
 だが蓮は、仕事中であろうキョーコの電話に留守電を残そうとして、言葉に詰まった。

 

『最上さん? 今夜の番宣見たけど、驚いたよ。いつもならドラマが決まったりすると教えてくれていたのに、今回は教えてくれていなかったからね。ドキドキしたよ。それも、あれはドラマ中の1シーン? それとも何度もやるシーンなのかな? あと、あの男は君を好きな役の俳優? ドラマの粗筋はどんな感じなの? できたら教えてね』

 

 蓮は、キョーコの留守電にストレートに言葉にするならそう叫びたかった。
 だがそんな言葉を言ってしまったら、俺は先輩じゃなくなってしまうのではないか?

 

 俺は何に驚いたんだ?
 小悪魔な色気のあるコケティッシュな少女の京子に、自分の中の熱まで引っ張り出された事か?

 

 いつもならドラマを教えてくれたのに、どうして教えてくれなかったの?
 俺だって時折しか教えていないじゃないか?
 彼女は先輩だからと教えてくれていたけど、あの番宣を見せるのが恥ずかしかったからじゃないのか? 
 恥ずかしがり屋の彼女ならあり得る事だろう?

 

 そして……あんなシーンを、君は何度も演じるの?
 男の背中をいたぶりながら、妖しく美しい笑顔で小悪魔な君は、俺の中の熱を突き動かす程に誘惑してくるけど、俺はその誘いに乗れば君を手に出来るのか?

 

 それに、君の足下の男は誰なんだ?
 君は足蹴にするけど、君を誘惑してきた男?
 それとも本当は君が誘惑したい男なの?
 ……勿論それは…君の役の少女だけだよね?

 

 君自身が誘惑したい人は、男性は……今の君には…いるの?

 


 蓮の中に湧き上がった…キョーコの中の小悪魔な笑みに、本人ではないと分かっていても、指先で招かれるようにして惑わされても…それでもキョーコが欲しいと思う気持ちを捨てる気などなかった。

 

 君は…誰がなんと言おうと俺のモノだ! 他の誰にもやらない!

 


 蓮が電話を掛けようとして固まっている様子に、社は静かに声を掛けてみた。

 

「…おい? …蓮?」

 

「………一方通行の留守電に、どんな言葉にしていいか……わからなくなる事もあるんですね…」

 

「それはあるさ。『聞いてしまった言葉は戻らない』 後悔しない為には、誤解されたくなければ考えて言葉を投げないと、自分にどんな言葉が返っても仕方がないからな。それで…本当に、蓮も聞いてなかったのか? キョーコちゃんのドラマ」

 

「何も訊いていません。新しいドラマという事も何も…。聞いていたら此処まで驚きませんよ。ドラマの仕事は、直接は無理でも携帯に残して報告してくれていましたから……今までは…」

 

 …そう、『今までは…』……。

 

「でも流石にこのショットが入ったシーンとかは、お前にも言い辛かったんじゃないのか?」

 

 社もキョーコの性格を考えれば、恥ずかしいと思うのは想像も付いた。

 

「…そうでしょうね。最上さんの性格を考えれば、恥ずかしいやら色々感想もありそうですが…」

 

 蓮がスマホを前に思いを巡らせていれば、思う少女の色気で上がった体温が微かに残る…。

 キョーコの本来の性格から出そうな「破廉恥」という言葉が、彼女の中でも渦巻いていることは想像もできる。

 

「同時期に別のドラマだと忙しいだろうから、留守電でもいいから応えてくれるといいけど、番宣どころか本編の放映時間も知らせてくれてないなら、見て欲しくなかったってパターンはありかも知れないぞ?」

 

 社としても、キョーコが蓮と距離を取るつもりがあるとは思わないが、それでも蓮にしてはショックが大きすぎた擦れ違いになりそうで心配した。

 同じ局のTVドラマとはいえ、テーマや年齢層も違えばスタジオメインか野外の撮影が多い場合もある。

 

 いつもはいい先輩の顔してたからな…。本当はキョーコちゃんが初恋で、気持ちを持て余す処はひとりの男でもある。というより、『ヘタレ』だし…。でもそれが『抱かれたい男No.1』というのも矛盾はしちゃうがな…。

 

「……もう少し頭を冷やしてから、留守電に入れます…」

 

「うん。それもありだな。あのキョーコちゃんを見たら、蓮にしては熱くなり過ぎたか?」

 

 少しからかいの意味も込めて社が言ったが、蓮は珍しく溜息を吐きながら天井を見上げた。

 

「俺は冷めた人間ではないですよ。社さんならわかっているでしょうけど、内を見せないだけですから…」

 

「それもキョーコちゃんに関しては、沸点低くて瞬間湯沸かし器だしな。ははは」

 

「…それは…否定は出来ませんね」

 

 キョーコへの思いを蓮が否定しなくて社は驚いた。

 

「やっとキョーコちゃんへの気持ちを認めたか」

 

 ニヤリと笑う社に対して、蓮は真顔で答えた。

 

「社さんに指摘されたからじゃないですよ。そろそろなり振り構っていたら、彼女に群がる馬の骨を片付けるのが面倒なので、本気で動いた方が良さそうだと思っただけです」

 

「そうかそうか。まあな、あの番宣見た共演者もファンも、京子への熱い気持ちに真夏の夜も寝れない程熱くなってるヤツも居そうだもんな。お前も含みで…ふふふ」

 

 蓮も社の言う「京子への熱」が、先程の番宣を思い出しただけで戻ってきそうな気がして、いつものキョーコに気持ちを切り替えた。

 

「ファンは今度のドラマで増えるでしょうね。でも同じ役者なら、仕事と割り切らなければ恋愛モノは後を引いてややこしい事になりますからね」

 

「ああ…そっちか。それはお前が毎回と言っていい程経験済みだからな。念の為にキョーコちゃんにも、対処法を教えておいた方がいいんじゃ無いのか?」

 

「俺の方法ではダメでしょう。どうしても男女差のある対処にもなりますから、彼女では共演者に『異性である男性』として、そこまで考えて行動出来ない気がしますね。いざとなったら、男の力を甘く見たら彼女でも危ない目に遭う」

 

「……お前は危なくないのか?」

 

 社が目の前の一番危なそうな男に訊いてみた。

 

「どう思いますか?」

 

 社の視線に、蓮はふっと笑みを浮かべながら問い返した。

 

「お前が一番オオカミにでもなりそうだと思うが、その一方で王子様も出来そうだがな?」

 

 社はなんとも複雑な笑みを浮かべながら言うと、蓮は社から視線を反らしながら自らの心を見つめてみた。

 

「理性の鍵があれば紳士な王子様も出来ますが、オオカミにならないとも確約は出来ませんね」

 

「キョーコちゃんが幸せならお兄さんも許すがな、泣かせたら許さないからな!」

 

 そう言いながら…社の蓮を見る視線はかなり本気だった。

 

「……わかりました…」

 

 蓮は苦笑しながら答えた。

 

 俺も彼女は誰にも取られたくはないが、無理強いして泣かせることもしたくはない。
 腕の中に閉じ込めて、抱き締めて、口付けて、俺のモノにはしたいけれど…彼女を幸せにしなければ意味が無い。

 俺は彼女の心ごと欲しいのだから……、熱くさせられた身体が彼女に触れたいのではないのだから……。

 微笑みながら俺の腕に抱き締められる彼女でなければ…意味が無い。

 

 君はこのドラマで何か変わるんだろうか?
 君の妖しい美しさは…馬の骨を増産しそうで怖い……。
 そして…俺の思いは君に届くんだろうか?
 君がトビラを開けて逃げないうちに…俺の腕の閉じ込めてもいいかな?
 できるだけ優しく捕まえたいけど、逃げないでくれないかな?

 

 君の心のトビラは……俺にはいつでも開けてくれるだろうか?

 

 


《つづく》

 

 

 

妄想なのか、迷走なのかわからなくなってきました(^o^;)

一番迷走するのは誰でしょう?(((((((ノ゚⊿゚)ノ)

 

8/8AM1時 少し修正

 

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