主人公ーヒロインー  5話

 砂美香の店のロケを終え、その日の収録は解散となった。
 ロケ現場からはスタッフ達のバンに乗り一度スタジオに戻ると、蓮はキョーコや社達を乗せて家路についた。
 それぞれのマネージャーを降ろし、今は二人の家となった蓮のマンションへと帰りつく。
 その車の中で、蓮はキョーコだけに伝えたいと思った言葉を伝えた。
「葉月が言った砂美香へのセリフね」
「葉月さんのセリフ?」
「『必ず守ります…俺が守ります』というのは、俺自身がキョーコを守りたいと思った言葉だからね。本気のセリフだよ」
「本気ですか?」
 キョーコが、気恥ずかしいような、でも嬉しいような…複雑な気持ちで笑みを浮かべた。
「私も、敦賀蓮という人を、本気で守りたいと思ってます。本当に大切な人だから、何かあったら本気で守ります」
 蓮も嬉しそうに微笑んだ。
「君だけを愛してるから…俺だけの君でいて。今夜の君をくれない?」
 蓮の言葉にキョーコは一瞬目を驚きで大きくした。
 役にリアルを持ち込みたくないからと、蓮と部屋を別にしてドラマに臨んでいたが、自分を臨んでくれる蓮の優しくも妖しい瞳に、キョーコは自分の中からも蓮に触れて解け合いたいという気持ちが溢れ出た。
「私も……蓮が欲しい…。蓮が私のモノだって、感じさせて……」
 そう言ってキョーコは蓮に抱きつき、恥ずかしそうに唇を重ねた。

 久しぶりの二人の甘く長い夜は、二人の甘い吐息と、ベッドの軋む音、そしてキョーコの声が掠れるほどに嬌声が部屋を満たして意識を無くすまでお互いを与え合い、蓮がキョーコを腕の中に包み込むようにして眠りについた。

 翌日は二人とも久々のオフに、日が高く昇るまでお互いの温もりの中で眠り、目覚めても愛し合っただるささえ愛おしいと思った。
 それでも、シャワーを浴びにバスルームに消えたキョーコが、蓮の付けた所有の花びらの多さに「れ、蓮のバカ!」と叫び声を上げたのには、蓮は何を今更と苦笑していた。

  *****


 葉月は砂美香への脅迫状のことも加わり、警護の仕事を専任として任されることになった。
 そして砂美香の穏やかそうでいて、芯の強さと誇りを持つ仕事をしているのだと痛感させられた。
 砂美香の調合した香水は、若者の街の一角にありながら、そこだけ静かでひっそりとした佇まいの店で売られていた。
 観光客もいれば何度も足を運ぶお得意様もいた。
 小さな店ながらも愛されて、砂美香も調合した香りに目を輝かせて喜んでくださる仕事を誇りに思った。
 その在庫は馴染みの店に仕入れに自ら足を運んでいた。
「神戸までわざわざ行くんですか?」
「はい」
「店を休んでまで?」
「ええ。在庫の切れたものは殆どは注文してあるんですけど、偶に掘り出し物の輸入品があるんです。こればかりは直接香りにふれないとわからないものですから、2、3ヶ月に1回は直接来るんです」
 確かに、目に見えるものならネットなりを通じての確認は出来るが、香りとなればそんなことは出来ない。
 葉月がプロとしての調香師の砂美香に誇りと強さを感じて感心した。
「それに、神戸に来るのには、もう一つ理由があるんです。私が生まれた街でもあるんです」
「君の年で神戸で生まれたとなると…」
 砂美香は寂しそうに頷いた。
 日本中が、世界が、何が起こったのかと驚き、そして泣いた日だ。
「私は覚えていません。震災の後、両親は親戚を頼って東京に引っ越しました。でも何処か懐かしくて、神戸に来るのは好きなんです」
 あの時何も起こらなければ、砂美香は神戸の地で暮らしていたのだろうか?
「あと、勉強も兼ねて1年に1回、海外に仕入れに行くんです」
 砂美香は話を切り替えるように、少し寂しさを残した笑顔で、葉月を振り返った。
「それ程の大きな買い物ではないですが、ついでに私自身もリフレッシュしようと思って、それに新しい香りとの出会いがあれば最高ですから」
 砂美香の笑顔に、葉月は仕事を忘れて抱きしめたい衝動に駆られた。
 だがそれは職権乱用ともいえる行動で、そんな気持ちは本気で砂美香を好きになってしまった証拠だ。
「砂美香さんは素敵です。香りについてはよくわかりませんが、砂美香さんがとても香りを愛して大切にしているのがわかります。仕事というだけでなく、本当に好きなんですね」
 少しくさいセリフだったかと、気恥ずかしそうに葉月は鼻を掻きながら言った。
「香りは…一瞬のうちに夢をくれる優しくて素敵な存在だと思うんです。それでいて一瞬で消えてもしまう儚い面もあります。そんな香りで愛する人の笑顔を見るのが、調香師としての私の喜びです」
 誇りを持った優しさというのが、これほど美しい笑顔になるとは、葉月は砂美香を守り抜かなければと強く誓った。


  *****


 今回のドラマでは、神戸での地方ロケがスケジュールにくまれていた。
 2時間ドラマには観光名所を回るようなタイプもあるが、このシリーズではヒロインの関係する場所をロケ地として組み込んでいることが多い。
 それに2時間ドラマの撮影の中では、スタジオよりも外でのロケ撮影が多いタイプがある。
 ただそうなると大変なのが、時間待ち。天気待ち。
 場所を貸し切ってのロケもあり、監督泣かせ、役者泣かせの撮影もある。
 限られた時間に演技するのも役者の力量と評される。
 それもメインの役者が旅に出れば、場所移動に合わせてそれこそスタッフ達は大移動となり、役者のスケジュールに合わせて話の流れは無視された形の纏め撮りもある。
 役者としては気持ちの切り替えも、スタジオセットに合わせたものよりも、その演技力を試される場面も出てくる。


 今回は雨の神戸が良いロケーションだと、若林監督の一押しで天気待ちのスケジュールも入った。
 大雨でも今の撮影機材なら作り出すことは出来るが、拘る監督であれば出来るだけ本物の雨が欲しい。
 小雨よりももう少し強い雨と、その雨が上がった夜景を、砂美香と葉月が事件の息抜きとしてデートをするシーンも入れたかった。
 だが放送用には六甲山からの夜景と、その場所まで辿り着くまでの部分は別の場所で撮影し、合成する事になっていた。蓮とキョーコは他には誰もいない山道を登り、その場所に辿り着いた形で夜景に感動するシーンとして作られた。
 普通に見た者には六甲山に、まだこんな夜景を見る場所があったのかと思わせるモノだった。
 実際にはカメラと、蓮とキョーコは別々に行ったような形に近く、本当の突き出た岩の上では、夜の足場さえ見えにくい場所で、カメラマンが動き回って撮影するなど無謀もいいところと言える場所なのだ。


  *****


 この時は、蓮とキョーコも素に戻って、空き時間にその夜景の美しさの中をデートした。
「キョーコの好きそうな景色だね」
「この美しさは、私じゃなくたって魅力を感じます。180度以上の夜景なんて、自分がその光の中に浮かんでいるような気がしませんか?」
 キョーコのロマンチックに浸ったセリフに、蓮はクスッと笑いながらも頷いてみせた。
「確かに夜景は素敵だけど、自分までそのその夜景にとけ込んだように感じるのは、キョーコみたいなロマンチストさんだけだよ」
 神戸の六甲山にある、高台の中でも大きな岩が少しだけ飛び出した形で見える絶景だが少しだけ秘密の場所。
 知っている物なら多少怖くても、その岩の上から見る絶景はまた見たくなるものだ。
 ただし、一番よく見えるのは雨上がりの空気の澄んだ日。空気の汚れも洗い流されて海に浮かぶ船の明かりさえ見える。
 だが、六甲の山の上と言えば、「六甲おろし」と呼ばれる山を越えた大風も付き物だ。台風かと思える風の強さに、夏でも寒さを覚えるほど夜の風は強い。
 それでもこの百万ドルといわれる夜景を見る為の代償としては大きなモノではないと、休日にもなれば多くの車が渋滞の列を作って夜景を見に来るのだ。
 特に今夜は芸能人がロケをしているともなれば、警備員まで総出の渋滞になってしまった。車を止めるスペースはすでに無く、せめてゆっくり進む車の中から見ようとするミーハーな者もいるが、OKを順調に出した蓮とキョーコは、闇に紛れて恋人達の時間を過ごしながら下山していった。

  *****

 実際に、犯人は砂美香が顔を見られたかは不確かでも、「この香り…。何処かで」と呟く声を聞いて、砂美香に自分を見つけられると思い、砂美香や気付かれそうになった旧家の人間をも手に掛けていく。

 犯人は旧家の家宝である高価なお香の原木を持ち出そうとした縁者の会社の部下だった。金目に困っての単純な犯行でもあったが、まるで助けるように複雑な人間関係が浮き彫りにされた事が事件を難しく見せただけだった。
 旧家に馴染みのある者を中心に警察は調べていたが、その捜査では浮かんでは消える犯人像に捜査は行き詰まっていった。
 葉月からの情報で、砂美香が狙われる可能性に、砂美香の本家筋にもお香の旧家であるという情報から、警察も手を広げて捜査する事になった。

 犯人を探し出す為、旧家の人達の集まりになぎさと砂美香が着物姿で接待の役目をした。
 砂美香は勿論、カツラやメイクをして砂美香だとわからないように変装してだ。


   *****


 その砂美香の着物姿に、蓮は何度目かわからないほど惚れ直していた。
「流石というか何というか、いつもながらにキョーコちゃんて化けるというか、別人になるね。元々可愛いけどさ、メイクののりもいいし、綺麗だし、蓮と付き合いだしてから、余計に艶も出て色っぽい…」

 同じ出演者やスタッフ達の視線にも、熱のこもった視線がより多く混じった。
 「また馬の骨増えたか?」と、社が心配して心の中で呟くが、着物姿での楚々とした隠しきれない仕草も、また数段色っぽさを増している。



「今日のキョーコ…また馬の骨が増えた感じだった」
 家での二人きりの遅い夕食中、蓮がボソリと呟いた。
「ん? 何のこと?」
 知らぬが本人ばかりなりと、キョーコは意味が分からないと蓮に答えた。
「キョーコは俺のモノなのに…。仕事だから仕方がないけど、綺麗なキョーコを他の男に見せたくない」
 独占欲で嫉妬を丸出しにする蓮に、キョーコはプッと吹き出した。
「そんなに魅力的に見えたなら嬉しいけど、私よりもなぎさの方が素敵だったと思うけど…」
 あくまでも、長谷部の方が綺麗で色気もあったと、キョーコは思っているようだ。
「蓮の目に魅力的に見えただけで充分です。独占欲の敦賀蓮さん…」
 蓮は、キョーコは自分の魅力がわかってないと、小さく溜息を吐いた。

 …このまま、俺の腕の中だけを知っていて欲しいな……。

 蓮が自分のことには鈍感なキョーコに、心の中で盛大な溜息を吐いていた。


  *****


 ドラマは、最後には砂美香の知っていた香りが、昔に数回聞いた特殊なお香の匂いだったことで、そのお香を持つ最後の人間へと犯人は絞られることになった。

「葉月さんはコロンをいつも付けていらっしゃいますよね?」
「はい。あっ! 香りが強いですか!? それとも嫌いな匂いとか?」
 葉月は砂美香の言葉に、このコロン一つで嫌われないかと焦って自分の匂いをかいだ。
 同じコロンでも女性用と男性用でも香りの系統が違うのだが、使っている当人には思ったよりもその強さは分からないことが多い。
 それに気に入っている香りならば、不快さを感じるはずもない。それに整髪剤などとシリーズで使っているなら、全身からその香りが漂うこともある。
「いえ、そんなことはないです」
「よかった…」
 砂美香に嫌われることはないと、葉月はほっとした。
「でも…」
「でも?」
 何を言われるか葉月が身構えると、その緊張を感じたのか砂美香は笑顔を浮かべながら言った。
「今回の残り香はとても微かでしたから、葉月さんのコロンが他の香りを遮ってしまわないように、犯人が分かるまで付けないでいて頂きたいのです」
 調香師としての香りをかぎ分ける砂美香でも、確かに強い香りがあれば微かな匂いは感じにくくなるのだろう。
「すみません、気が付かなくて……」
 葉月は、警察官としての犯人の遺留品が、この事件に関しては砂美香にしかわからない香りにあるのだと、今更ながらに自分の失態を感じた。
「いえ、いいんです。私が感じた最後の犯人の手がかりなら、それを逃したくないだけですから。葉月さんのコロンの香りは、嫌いじゃないですよ」
 少しだけ頬を染めていう砂美香に、二人を見守るなぎさと神田は目で会話をしていた。

『 ……この二人って…。』
『 …どうやらそんな感じだね…。』

 葉月は自分のコロンを好きだと言われた気がして、嬉しそうに砂美香を見つめた。

  *****


 そしてしびれを切らせた犯人が、暗闇から砂美香に襲いかかった。
 しかし葉月が砂美香を身体を張って守り、犯人を地面に押さえつけた。
 砂美香にナイフをふるう犯人を葉月が捕まえると、柔らかに香る匂いに砂美香の記憶が思い出させた。
「乳香?」
 砂美香の呟きに、男はギクッとして葉月が押さえた腕から逃げようと大きくもがいた。
「あなたは、津山のおじさまの部下の方でしたよね?」
 男は砂美香から顔を背けて声を出さない。
「津山のおじさま?」
 葉月は今まで聞いたことのない名前を砂美香に尋ねた。
「本当の叔父ではないのですが、本家筋の方で子供の頃から可愛がってもらっていた方です」
「では、今回の事件はその津山が?」
 葉月は部下を使って証拠隠滅をはかろうとしたのではないかと、砂美香を見た。
「いえ、違うと思います」
 砂美香ははっきりと否定した。
「津山のおじさまは、確か2年ほど前に長男の隆さんにお仕事を任せて一線から引退されたはずです。奥様と趣味の旅行に出かけられたりしながらお身体を労って過ごされていると、隆さんに伺いました」
「身体を労るって…」
 年齢は分からないが、葉月はその表現が気になった。
「ご病気なんです。それで早くにお仕事を引退されたんです」
 砂美香の表情の曇り方は、それが簡単な病ではないと葉月にも分かった。
「だがこの男は砂美香さんを殺してまで、最初の事件から人を手に掛けてきたんですよ?」
 そう考えれば、上司が替わっただけで隆という長男が指示を出したともいえる。
「でも、隆さんは香の世界に詳しい方ではないはずです」
 それはつまり、今回の旧家との縁も薄いと言うことを砂美香は思ったのだ。
「お香の本家筋でも、本当のお香の継ぎ手は少なくなってきているという事ですね?」
「……商売としてのお香を扱う方はあっても、お香を愛する本家の方は少なくなりました。寂しいです…」
 砂美香にも、多分本家筋から香を愛する砂美香に手伝いとしてより支えとして迎え入れたいとの打診があったのだと、なぎさや葉月にも感じられた。
「そうすると、この男は?」
 葉月が腕を極めて逃がさないようにしている間、一言も声を発せず、逃げる隙を窺っていた。
「私がお手伝いに行った時に、津山のおじさまが勉強の為にと連れてみえた部下の方だったと思います。私が最後のお手伝いに行った4年前に、本家で香を聞く会にいらっしゃったでしょう?」
 砂美香の言葉は優しいが間違っていないはずと、はっきりとした言葉に男は砂美香の顔をじっと見つめた。
 女性にとっての二十歳頃、花がほころぶように美しくなる変化に、男は砂美香が少女から大人の女性へと美しくなった変化に気が付き慌てて顔を背けた。
 言葉にするまでもなく、砂美香の言葉通りだったと態度が示していた。
「あと、あなたは教会に通っていますか?」
「教会?」
 砂美香の話が急に飛び、葉月は言葉の意味が分からず首を捻った。
 その言葉に、男はギクッとした。
「キリスト教の儀式の時に使う、乳香という木の樹脂から作られるお香があるんです。この香りが、最初の事件の時に残っていた微かな香りだったのを、やっと思い出しました」
「し、知らない! 俺は違う!」
「今もあなたから微かに匂ってます。津山のおじさまもクリスチャンで、修道院の素晴らしさを見るだけでもと言って連れていって下さった時に、建物に染み着いた柔らかな乳香の香りが、いつもおじさまから漂っていたのも思い出しました」
「お、俺じゃない!」
 男は必死に叫んで否定するが、葉月がその顎に手をかけて顔を上に向けさせると、砂美香から視線を外して最後の抵抗をして見せた。
「お仕事柄知ってらっしゃいますよね? 乳香はどちらかと言えば日本では馴染みが少ないことを。白檀や伽羅を元にしたお線香がよく使われ、今は若い方にも好感が持てるようにと色々な香りが作られるようになってきました。その理由の何割かは自然が作り出してくれる原料だからこそ、香木の採れる量も減って高価になってきたことも…」
 砂美香は、この男が犯人ならば、お香の問屋でもある本家の裏事情も知って、旧家に騒ぎを起こしながら隙を見て、高価な香木を狙ったのだと指摘をした。
「それは…砂美香さんは、この男が香木で一儲けを企んでいたと言うことですか? 旧家の人間を殺したのも、お金の為?」
 香木という、ほんの一握りの香りの物の為に命を奪われたと思えば、葉月は人の欲はどこまでも計り知れないと思った。
 葉月も犯人の痕跡を探す為、旧家の屋敷の中を捜索する際に香木を保管する倉を見た。
 旧家の倉にしては小さくも見えたが、香木を長く保存する為の換気などは美術館並みの物が設置されていた。
 他の警察官も驚いていたが、家の者達には当たり前の設備として見られていた。それも出入り口にセキュリティーの認証装置まで付けられ、小さく見えた倉がどれほどの宝を守る為に作られたのか、価値を認めた者達の欲の塊にも見えた。

 その後の調べで、男は津山の元で仕事をしながら、代が変わった息子の隆に借金をしていたことが分かった。
 その返済を迫られ、旧家の屋敷に仕事で出向いた際に耳にした倉に眠る香木で借金を返そうとしたが、セキュリティーの壁に倉の前に居たところを見つかり、鍵を壊そうとしたナイフなどでその相手を刺し殺してしまった。


    *****


 事件が解決し、なぎさ達もほっとした中、砂美香にも本当の笑顔が浮かんだ。

 そしてなぎさ達も気になる葉月と砂美香の思いの行方は、二人が決めることだ。
 葉月が砂美香を家に送っていく途中で足を止めた。
「僕は…俺は、刑事なんて、TVドラマみたいに派手でもないし、迷惑をかけるかもしれない。でも…」
 言い淀む葉月を、砂美香は真っ直ぐに見つめた。
「それは…人を好きになる事に、関係のない事じゃないですか?」
 優しいとびきりの笑顔の砂美香に、
「好きです! 付き合って下さい!」
 葉月は全てを捨ててもいい気持ちで告白した。
「はい。私も葉月さんが好きです」
 砂美香から葉月を抱きしめて、やっと本当の気持ちを伝え合った。


  *****


 そして1年後。
 なぎさ達の元に、葉月と砂美香の結婚式の招待状が届いた。
「あらら…、先を越されちゃったわ」
「そう思うなら、無茶をしないで俺の奥さんとして役所に届け出でも出すか?」
「……それも悪くないわね」

 なぎさ達が砂美香の結婚式には夫婦として出席し、いつものシリーズとは少しだけ違うラストを感じさせた。


           ≪つづく≫




ドラマ編終了です。
香木などについては少し調べましたが、乳香についての部分は話半分に読み流してください(;^_^A (キリスト教の儀式で使われることが多いのは本当です)