167予告妄想…? していいですか?(^^;; 1
待ちきれなくて予告妄想です!…と言いながら、早ければ明日は本誌!
前に書いた続き妄想とは違います。
今更でもお付き合いいただける方はどうぞ…。
ちなみにまた暴走してます! 長いです‼
蓮の意識が戻ったと、心配していた共演者からスタッフ達にまで話が伝わると、その姿を見ようと皆が集まってきた。
「敦賀君、ホントに大丈夫か?」
中でも同じように車を走らせた、スタントの五十嵐が顔を覗き込んできた。
「ああ、五十嵐君。迷惑をかけたね。流石にスタントとして有名な腕を買われただけあるね、流石だ。お陰で助かった。俺一人の力では、どうだったか…」
「イヤ、とっさの判断でスピンすることで避けた腕…。敦賀君も何処かで走らせていたんじゃないか?」
謎の多い蓮に少しだけ、突っ込んだ事を訊いて来た。
「…さて、それはどうかな…? 俺は秘密主義なので、何処で走っていたかは教えられないね…」
冗談めかして蓮がニヤリと笑いながら答えると、「それってケチくさくないか?」、五十嵐のそんな声に、周りの緊張がほぐれて笑いもでた。
他の共演者達が集まってくる中で、キョーコは包むように握っていた蓮の手を離し、そっと車から離れていた。
キョーコの手が離れた時、蓮の目が一瞬寂しそうになったが、キョーコの目には分からなかった。
キョーコ自身が離れることで寂しさを覚えていたから…気が付かないでいた。
1mも離れてはいない距離の道路の路肩。でも途方もなく遠い距離にキョーコは感じた。
これが新人とトップの俳優の差なんだ……。
蓮は心配をかけた周りに挨拶をしながらも、キョーコを目で追っていた。
すぐに真横で蓮の変化を見ていた社は、キョーコと共に後ろに下がり、その顔が寂しそうになったのを横で感じた。
「キョーコちゃん…?」
「やっぱり敦賀さんの人気って凄いですね。主役っていうだけじゃなくて、皆さん心配してらっしゃる。それに役者さんとしてトップで……。私には遠い存在ですね」
寂しそうなキョーコの声……。
当たり前のことなのに、何を言っているんだろう…。
敦賀さんと私は、同じ業界にいても…天と地ほどに場所が違う。
「キョーコちゃんと蓮の距離は変わらないよ」
「えっ?」
思わぬ社の言葉に、キョーコは驚いて横に居た社を振り向いた。
「最初の頃は色々あったけど、今の蓮はキョーコちゃんを後輩としてだけじゃない、役者として認めてるよ」
「…本当に…ですか?」
社は頷きながら、キョーコに優しく笑みを浮かべた。
「あんな蓮でも最初から認められていたわけじゃない。自分でマネージメントしていた新人の時期はあった。俺がマネージメントにつく頃には、スケジュールを管理しながらやるには、そろそろ大変になると…そう思って俺がマネージャーとして付けられたけどね」
「そうなんですか。初めからじゃなかったんですね…」
「いくらアイツでも、新人には直ぐにマネージャーは付かないよ。新人の時は、仕事をとるのに苦労したらしい」
「えっ!?」
「ちょっと訊いただけなんだけどね。見た目がいいだけではやっていけないのがこの業界。一度売れただけでは長続きしない。でもキョーコちゃんは、自分がどれほどの勢いで業界の階段を上っているか分かってる?」
「その…確かにとっても運がいいとは思っています」
CM、PV、そして『ダークムーン』と『BOX”R”』。あと、顔を出してはいないが『きまぐれ』の坊もある。
「そのね、キョーコちゃんは、『運』と一言で言ってしまう控えめなところは、これからは気を付けた方がいい。『運も実力の内』とよく言うけど、その運を手繰り寄せるモノをキョーコちゃんが持っている。それに一度だけなら『運』だろうけど、それが続けば運じゃない。キョーコちゃんの実力で、それを手繰り寄せる力がキョーコちゃんにあるってことだよ。只の『運』は続いたりしない」
キョーコの人柄、起用さ、気配りの出来るところ。人との付き合いで大事な部分は、年齢にしてしっかりしている。それがキョーコの育った環境故だと思えば、納得もするが、寂しい部分もある。
「まだ芸能界に入って1年。新人といえるうちは出過ぎてはダメだけど、堂々としていることは必要だよ。誰かに助けられて作り上げた役でも、切っ掛けを作り出したのはキョーコちゃんで、その努力はまた別の役をやるときにでも役立つヒントになる。何が役に立つかは、今までのキョーコちゃんが培ってきた中にある。よくキョーコちゃんは蓮に教えて貰ったり、助けられたりするっていうけど、頼り切ってはいないよね?」
キョーコが小さく頷いた。
「今だって、充分お世話になっているのに、これ以上頼ったりするなんて考えられません」
「そこだよ…。蓮は只、甘えてくる人を甘やかす人間じゃない。特に演技に対しては、社長よりも厳しいところがある」
これにはキョーコも大きく頷いた。
《つづく》