続きになります。
さてさて、あれはいつ頃からだったでしょう・・・
前玄関が嫌になったのは。
「前玄関」とは「正面玄関」のことをいいます。
この前玄関は記憶にある限り
玄関として使われることはありませんでした。
「どうして前玄関使わないの?」
不思議に思った私が、母や祖母に尋ねたところ
「方角がよくない」だとか「鬼門」だとか・・・
子供には理解できない答えが返ってきました。
基本からアウトです(泣)
なぜそんな建て方をしたのでしょうね・・・
今でも不思議でなりません。
「前玄関」
幼い私にとって
もはやそれは「裏玄関」でございます。
玄関を開けますと、大きな池に大きな石
そして家よりも背丈の高いしだれ柳の木がありまして
風が吹けばゆ~らゆ~らと
柳の枝がお風呂場の窓ガラスにちらつきます。
その庭は、昼間に見るときれいとも思えましたが
夕方にかけてどんよりと不気味な影を落とし
見ないようにしていたものの一つでございました。
話を前玄関に戻します。
この前玄関になぜかお米を置いていました。
米とぎがわたくしのお仕事でしたので
米をとりに前玄関へ行かねばなりません(怯)
米とぎは簡単ですが
米をとりに行くのは至難の業でした。
まず玄関を少しだけ開けます。
全神経を米の袋だけに集中させます。
そこから手だけをにょきっとのばして
手早くお米を釜に入れます。
ええ、そうです。
決して中に入るようなことはいたしませんでした。
本当に無理だと思った時は母にお願いして
米をとってきてもらいました。
そこで何かを見たことはありません。
結論を申しますと
わたくしは亡者のようなものを見たことは
ただの一度もございません。
そろそろ前玄関が怖かった理由を打ち明けます・・・
その閉ざされた前玄関。
滅多に使われない前玄関。
鍵などかけない前玄関。
「開いている」
そう思えたんです。
開けることのない玄関のドアが
開けっ放しだと感じていました。
続けちゃいます。