バリュー(割安)をチェックするのにPERやPBRを使うのが鉄板ですが、今回は、それらとは別、第3の割安指標である益利回りをご紹介します。

 この指標は色々と加工しやすく、汎用性も高いので、わたくしはよくチェックします。

 益利回りの説明については最後の方になりますが、良かったら読んでみて下さい。

 

 それにしても、わたしがPER をよく見るようになったのは、2006年末ぐらいからでしょうか。2006年1月にライブドアショックがあったのですが、それ以降、あれだけ勢いよく上昇していた新興株がピタッと上がらなくなりました。代わりに東証一部大型株がジワジワと上げ始めたのです。

 

 それまで高PERのものを積極的に買っていたのですが、新興株のリーディングストックだったライブドアが上場廃止処分。

 そして、日経平均は上がっているのに、新興市場は延々と下がり続け、(私を含め)新興市場をメインとしていた個人投資家は、買っては損切りを繰り返すハメとなり、悪夢ような日々となります。

 この時期、私の投資関係の知人たちは次々と退場しました。

 

 実際、一回の失敗トレードで退場するという人よりも、上げ地合いが終了して下げトレンドに入ったのに、上昇時代の戦略を変えれず、買っては損切りで資産を失くしていく方が多い気がします。人間なかなか身についた習慣や習性って変えられないんですよね。

 

 そんで、落ち着いて色々調べて見ると、新興市場の成長性がかなり落ちている。それまでリーディングストックとして活躍したライブドア(上場廃止)に類するIT系もそうですが、特に不動産流動化として好業績を出していた銘柄たちの業績が、どんどん悪化。とにかく高PERのものは、ただ只管に売られていきます。

 

 代わりに、一部大型株の中でも高成長を遂げているもの、なにより低PERのものが、派手な動きはないものの、ジワジワと買われていく。

 

 あれ? 好業績でも高PERは売られ、低PERのものが物色されている

 

 ただ、幸い、このとき途中から、方向転換しました。それまで見向きもしなかったバリュー(割安)指標に目を向けたのです。

 すると資産の変動が安定してきました。ただ、バリューに目を向けたといっても、基本は成長している銘柄です。

 

 そんなある時期、こういう発見もしました。

 

 四半期決算でサプライズが出てPERが低くなると、そこを狙って買われる

から、株価はさらに上昇する。

 模式化すると図1のような状態です。

 

図1

 

 ある銘柄の適正PERが15倍だとします。

 1株益100円@1,000円(PER10倍)のものは、1株益100円@1,500円(PER15倍)まで上昇しました。

 そこに1株益が2倍の200円になるサプライズが起きました。

 この銘柄のPERは半分の7.5倍まで落ちます。すると、PER7.5倍から15倍への修正するため、株価が3,000円まで上昇します。

 

 成長株というのは、こういう好循環が繰り返されて株価が上昇していきます。こういう上昇を業績相場といいます。 

 高PERが好んで買われるのは、基本的に思惑相場のときです。それも近い将来、大化けをするのではないか?という思惑がある場合です。

 しかし、思惑は熱しやすく冷めやすい。だいたい1カ月ぐらいで天井をつけて終わります。

 思惑相場がひと段落して、しばらく株価がヨコヨコした後に、思惑が実現するような好決算が発表され、そこでPERが修正されながら上昇していく。こういう好循環に乗った業績相場は、地合いが軟調のときでも順調に上げて行くことが多いです。

 

 そんで、そこから更に思いついたことがありました。

 凄い大発見だと思ったのですが、こういうことです。

 

図2

※この式はもう少し変化します。次回で続きを書きます。

 

 要するに、1株益もしくは株価が変化した際、PERが割安になった率を調べ、その率が小さいもの程(割安化したものほど)、お買い得になっていますよね?

 割安化したもの程、上昇しやすいのであれば、これを全銘柄でスクリーニングすれば、上昇株を発掘しやすくなりそうです。

 

 これは大発見だと思ったので、拙著『四半期成長率とチャート分析』で監修をして頂いた北山広京氏のところを訪ね、ドヤ顔で説明したら、

 

 なにを今さら…、クオンツの世界ではそういうものはとっくに使われているし、機関投資家もそういう視点で割安化した銘柄を売買している

 

 という返事でした。

 

 ただ、クオンツが割安株を分析する際には、PERはあまり使わないみたいです。

 PERのような指標が有効かどうかを調べる際には、5分位分析(※)を使うのですが、その際には「全銘柄に対して、数値が大きい順、小さい順に並べたものが、そのまま有効性の順になっていることが望ましい」のです。

 PERで言えば、値の小さいものほど割安(つまり有効性が高い)とされるので、値の小さい順に並べれば、それはそのまま有効性の順になりますよね。

 

※5分位分析については、既に『四半期成長率とチャート分析』やパンローリングchの動画で詳しく説明しています。ブログでも後日、改めて解説しようと思います。

 

 ただしPERで、そういう分析を行おうとすると、幾つか問題がおきます。

 まず1株益がマイナスつまり赤字の場合、PERは使えません。使えません…というより、意味がありません。

 例えば、株価1,000円で1株益が▲66.7円のとき(▲はマイナスの意味)、

PER=1000円÷▲66.7=▲15 となります。

 これを無理矢理に解釈すれば「マイナス15年分の利益を織り込んだ株価」という事になりますが、ちょっと意味が分かりません。

 だから、yahooファイナンスも株探も赤字予想の場合、PERは記載されていませんよね。

 

 また、強引にPERがマイナスのものも含めて分析しようとすると、小さい順がそのまま優位性の順なりません。

 例えば、PER2倍というのは、相当に割安な値ですが、しかし、PERがマイナスの方が値としては小さいですよね。PERを小さい順に並べると、マイナスから並んでいくことになります。

 赤字企業の方が割安とか、これも完全に意味不明ですよね。

 

図3

 

 PERは、個人レベルで使う場合、割安を計るものとして、多くの投資家が参照していることから、有効性はとても高いです。それに、最初から赤字企業には投資対象にしない、というのであれば、別に問題は起きません。

 

 しかし、バリュー(割安)というものを、より深く追求しようとすると…、定量的かつ網羅的に分析しようとすると…、分析条件を整理する段階で、こういう問題が起きてしまうのです。

 

 ただ、この問題は簡単に解決できます。PERの逆数を取ってやれば良いのです。

 PERの逆数をとったものには、益利回りというちゃんとした名前があります。

 

  益利回り=1÷PER 

  (※%表示するには×100)

 

 益利回りは英語でEarnings yieldというのですが、ここではPERの逆数となる式、

1株益(EPS])÷株価(Price)を略してEP(益利回り)とします。

 

 PERは値が小さいほど割安を意味しますが、EP(益利回り)は値が大きいほど割安を意味します。

 

 先ほどの図3の問題に、EP(益利回り)を当てはめたものが図4です。

 

図4

 

 益利回りを別の見方で解釈すれば、現状株価で1株当たりに生み出される利益率のことで、例えば、株価1,000円でEP1%のときは、1株当たり100円の利益を生んでいる事になります。

 マイナスに関しても、株価1,000円でEP▲1%のときは、1株当たり100円の損失を生んでいるという意味になります。

 

 勘の良い方は気づかれたかも知れませんが、益利回りは配当利回りと同じ考え方です。


・配当利回り=1株配当÷株価    ※株価1000円@1%で1株当たり10円配当
・EP(益利回り) =1株益÷株価 ※株価1000円@1%で1株当たり10円利益

 

で、EP(益利回り)のどこがPERより使いやすいのかというと、EPは割安指標を作るのに便利なんですよね。加工しやすいのです。

 分析する際、赤字企業や並び順などを気にせず、リニアに分析できます。

 

 拙著『四半期成長率とチャート分析』の第2章では、PERの性能を調べるのに5分位分析を行っているのですが、これも、実際にはEPで求めたものに逆数をとって、PERに直してから表をまとめ直しています。

 

 ここから、四半期EP(益利回り)、そして四半期割安率と、とても使えるかなり面白い割安指標、ファクターの話になるのですが、記事ボリュームがでかくなったので、続きは次回にいたします。

 上記の2つは、個人投資家が使うPERよりも、割安抽出に関しては性能が優れている(割安株を見つけやすい)と思います。

 

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