神鷲商人 ガルーダ商人を読んだ
『神鷲ガルーダ商人』を読んで、胸の奥がざわつくような感覚を覚えました。
戦後賠償をめぐる日本とインドネシアの関係を舞台に、商社やフィクサーたちが賠償を逆手に取り、ひたすら金儲けに走る姿もあれば、インドネシアの未来のために汗を流す人々もいる。その対比があまりにも鮮烈で、人間の欲や信念がぶつかり合う様子に強く引き込まれました。
フィクションでありながらも、スカルノ大統領やデヴィ夫人、そして悲劇の人生を歩んだ女性たちの存在も、単なる歴史上の人物ではなく、感情を持った「生身の人間」として描かれており、思わず心を寄せてしまいます。特に、人の直感や感情の爆発が時に大きな流れを動かしてしまうこと、その一方で、集団心理に押し流され自分の意思と違う行動を取らざるを得ない苦しみは、時代や国を超えて共感できるテーマでした。
また、スカルノからスハルトに権力が移る時期の「感情の爆発」と、先日起きたデモを重ねて考えさせられました。当時は抑えきれない熱が一気に社会を揺るがしたのに対し、今回のデモではSNSや情報拡散のスピードが加わり、人々の怒りがより組織的かつ瞬間的に広がった点に違いを感じます。形は変わっても、感情が社会を動かす力の大きさは、今も昔も変わらないのだと思いました。
フィクションでありながら、当時のインドネシアの空気が手に取るように伝わってくるこの作品。駐在する者にとって「必読」と言われる理由を、実感を持って理解することができました。
にしても中古でしか手に入らないところが、深読みすると日本やインドネシアの言論統制はいってるんじゃないかと疑うくらいの名著です。
