先日、久しぶりにお会いしたお客さんから会うなりすぐ、お仕事は順調ですか?

と質問された。

答えに戸惑ってしまった。


自分でも訳もわからず聞いてしまうことがあるけど、この質問って答える側はけっこう難しいなと思った。


売り上げ全然良くないですとか、稼げています。というのも答え方だし、受注が絶えません、というのもアリだと思う。

社内の雰囲気がすごく良いという観点で答えても、仕事は順調と言えるかもしれない。


でもそもそも、どんな目標に向かって順調なのか、というのが人によって違うので、質問者の思う目標に向かった順調度合いを答えなくてはならないと思う。

まぁ大体は仕事が多いか、売上が出ているか、俺と同じで訳わからずで聞いているとは思うけど、仕事=会社経営と位置付けている自分にとっては、まず売上だけでは簡単に語れない。


自分なりの尺度で言えば、仕事は順調ではない。

売上は上がっているけどその分負担が多すぎて、ジェットコースターの落下前の登頂のように、これ以上仕事も売上もいらないから安息をくれ、とさえ思う。スタッフの生活が懸ってるのでそれはできないけど。


けれど会社のメンバーがみんな同じ方向を向けるかと言う目標に関しては、少しずつ視線の質が合ってきたように思うので順調かもしれない。


そしてもっと言うと、いまようやく自分の作りたいものを作ろうという思いが強く、そう思って制作できていることが豊かであり順調だとも思う。


デザイナーとしては順調で、経営者としては順調ではない、と言った感じ。新しい人を入れまた固定費が増えた。そして売上を血眼であげ、また人を入れるのかなぁ。本でよく読むように、こんなスパイラルを繰り返していってしまうのだろう。

それはなんだか虚しく思うし、会社は10人くらいがベストかなぁと思う。麦わらの一味と同じだ。



そういえば恋人に関しても、よく聞かれた。

順調ですか?と。


何に向かっての順調さか分からずいつも答えに困ってしまって、変な間でゴニョゴニョしてきた。結婚のことを指すのか、お互いを尊重できていることを指すのか、ケンカしていない仲の良さを指すのかわからなかった。気まずいなにかがない限り、恋人同士はうまく付き合っていると思っていた。


かつて番組に出たりしたときも同じような記憶がある。あのとき、順調です!とテキトーに答える賢さがあれば、批判も半減しただろうか。でも俺、例えば結婚がゴールなんて思ったことが無かったけど、仲良くやれていると思ったから「順調」でいいかなと判断するのに数秒かかってしまった。


他人の言葉と自分の言葉の間にある歪みや意味違いを、もっと瞬時に理解できる知恵が欲しい。

諦めずに仕草や文脈で探りたいけれど、SNSやネット上の言葉は汲み取りにくい。


戸惑ってしまって、たまに必要以上に傷ついて、その度妻に考えすぎだと言われてしまう。


人は大抵そんなに考えて発言してないよ、と妻が言ってくれる言葉は、すんなり入るから不思議だ。