「今まで読んだ本の中で
一番印象に残っている一節は何ですか。」
学生の頃、こんな質問をされた事がある。
ココで有名な哲学書やらオサレカシコイ作家さんの著書からの引用やらをスラスラッと口に出来ればカッケーのだけれど、悲しいかなフルカワはお世辞にも行儀がいいとは言えないノワール小説をこよなく愛する一円野郎。ウチの本棚には「エロス本とはまた別の意味で好きな娘に読んでる事がバレたくない種の本」がドタタタターッと並ぶ。
本を読んでいて初めて鳥肌が立った経験となると、小学校低学年の頃になるのかなぁ。子供向けの豊臣秀吉の伝記の中の一節だったと思う。
貧乏な農家の子に生まれ、蜂須賀小六という野武士にスカウトされて‥‥‥という成り上がりの過程を、半ばファンタジー小説を読むかの様な心持ちで見守るフルカワ6才。
やがて彼は信長という「おわりのやんちゃなとのさまのけらい(平仮名表記がまたイイ味を出していた)」になり、持ち前の頭脳を生かしてたちまち出世していく。破竹の快進撃を続ける信長に付き従う木下藤吉郎が、次はどんな活躍を見せてくれるのか‥‥‥という期待がクライマックスに達した処で現れたのが次のくだりだった。
『おそろしい しらせが とびこんで きました。
「信長さまが ころされました。」』
この起承転結の「転」の急転っぷりたるや。
アレから20年余。本やら映画やら演劇やらの、色んな物語の色んなスペクタクルを目にしてきたが、衝撃という点では今もコレを越える物は無い。
子ども心に「ヒーロー然とした何か」の様に思っていた「サムライ」と呼ばれる人たちが、実は「只の人間」であり、さらにその中にも貧乏な人とセレブな人とがいる事もちょっとしたショックであった。彼らはヒロイックサーガの主人公などではなく、ただの雇われ軍人であったのだ。
ただ、そんな自分にとって等身大の存在である人達が、これだけドラマチックな人生を送ったのだという事実は、自分に新たな別の高揚感と「俺だって頑張ればスゴい人になれるかも知れないじゃん」という自意識(勘違い?)をもたらしてもくれた。
そういった事でこの本のこの一節、今も強烈に印象に残っておるのです。
ちなみにマンガで一番印象に残っているセリフは、G—ヒコロウ氏のマンガにあった「お前が幸せだと俺が可哀想だ!!」という一文。
ドタバタギャグの中にサラッと織り交ぜられていたセリフなんだけど、これ程までに「嫉妬」って感情のメカニズムを簡潔かつストレートに言い表した表現って他になかなか無いんじゃないでしょうか。
「名言」めいた洗練性は無いかもしれないけれど、たまにこういう妙に画期的なフレーズが発明されて来たりするから目が離せないんですよね、ギャグマンガの言語センスっちゅうヤツは。