この1年は、見えない未来におびえながら、過ぎゆく毎日を生きることに必死だった。
そんな中、“非日常な”物語に迷い込んだ夢を幾度も見たことを思い出した。
それは、“なんでもない”を“特別”にできる魔法の夜。
閉館した夜のビルで、迷い込んだ不思議の国の住人とパーティーをすることに。
みんなでつくるパーティーはキラキラしてて、すっごく楽しくて。
少しの勇気とワクワクを生み出すことを諦めたくない!って気持ちを貰えた。
それは、“忘れたい記憶”がチカラに変わる黄昏。
招待状に誘われ、たどり着いたのは“嫌な記憶をひとつ忘れられる”不思議な遊園地。
忘却を願いし者、忘却を叶えた者が集まる地で様々な物語に巻き込まれた。
夢の度に一緒に行動する人は違ったけれど、みんなの心に触れるたびに胸が熱くなり、幸せを浴び、切なさを感じ、苦しくもなった。
自分だって忘却を願っていたはずなのに、気づけば“忘れたくない記憶”ができていた。
一度きりの夢も、繰り返し見た夢も。
周りの様子をひたすらに眺めたときも、勇気を振り絞って行動を起こしたときも。
いつだってその物語を楽しむことに一生懸命だった。
きっと自分は、その物語の登場人物になれるくらい輝けたかな。
その物語で、自分の人生が変わったかな。
その物語は、そう思えるだけの体験を自分に与えてくれた。
それなのに、せわしない日常に戻ると、物語のような非日常は本当に夢のようで、どれだけ強く心に刻んでも、少しずつ薄れていってしまう。
自分にとっては、それはきっと避けられないのかなぁと思ってる。正直、悲しい。
でも、いや、だからこそ、少しでも覚え続けるためにこの物語で得たものを糧にして日常を生きていきたい。
せっかく得たものを失うなんて、すっごくもったいないし!
物語は時に連鎖する。他の物語に影響を受け、新たな物語が誕生する。
それならば、自分がこれから歩む物語もきっと素敵なものにできるんじゃないかな。
数々の物語で得たカケラを抱きしめて生きていく。
自分が主人公になれる物語を、今度は自分の手で紡いでいく。
あの物語のエピローグが、素敵なお話になるように。