「誰にも言ってはいけないよ」
そのプレッシャーが、知ってしまった人の心に
どんなに重くのしかかることか。
それが生死にかかわることなら、なおのこと。


鎌倉という舞台で、
すずちゃんを中心にとても密接な人間関係が交差している。
登場人物同士が、5巻に入って、またぐっと近づきあっている。
近いのに。近いから。
言いたくても、言えない。
言えたら、どんなに楽だろう。

一方で、言いたいことを言えよ。
言ってくれよ。
という思いに答えて、言えたことで、
またぐっと近づくゆうやとふうたの友達関係。
事情が変わってふうたに話せるようになったすずの、安心した笑顔に、
読んでいるこちらも気持ちがほっとしてしまう。


また、すずちゃんを産んだお母さんの気持ち。
自分は大切に思ってもらえていたんだ、
ということがわかった時の、つるーっと流れる涙と笑顔にも
読んでいて胸がきゅっとさせられてしまう。


苦しさ。切なさ。やるせなさ。ありがとうの気持ち。
忘れないよ、という思い。
きらきらと海の風に光りを浴びて、細く、
ゆれるような感情の糸を、
吉田秋生はなんと上手に表現することでしょう。
この人、すごい。
満足する読後感です。







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