※この作品は「丸岡和佳奈のごめんあそばせ○○さん」という声優番組の設定から着想した作品です。
気になった方はぜひ番組をご覧になってください。
本編の内容とは全く関係ない声優さん同士のワチャワチャが楽しめます。

(以下本編)

「はぁ…また縁談か…もうイヤになっちゃう…」

一国の姫であるワカナ姫の元には、年頃という事もあり他国から沢山の縁談の話が舞い込んでくる。
文武両道、絶世の美男子、豊かな経済力…
庶民からしたら贅沢なラインナップばかりだが、ワカナ姫にはどれも物足りなく思ってしまう。

ワカナ姫がこうなってしまったのも、幼い頃にある運命の出会いをしてしまったからである。

幼い頃から夜に星を見るのが大好きだったワカナ姫は、毎晩のようにテラスに出て天体観測をしていた。
時には執事のサヤカやアリサを連れて星のよく見える別荘へ行き、夜が明けるまで星を見る日もあった。

そんなある日…

「あっ!流れ星だわ!綺麗…あら?こっちの方へ落ちてきてないかしら?」

肉眼でもわかるくらいの流れ星は、少しずつワカナ姫の別荘のある森の近くへ吸い込まれるように落ちていく。

「きゃっ!この衝撃…近くに落ちたのかしら?」

好奇心に駆られたワカナ姫は、落下物から出る煙をたよりに向かっていった。

「これは…隕石…じゃないわね…何かしら?」

落下物は機械のように無機質な角ばった形をしていて、所々ライトのような物が点滅していた。
見るからにこの地球の物とは到底思えない見た目をしている。

すると落下物の一部が扉のように開き始めた。

「一体何が入っているの?これは…男の子?」

開いた扉の中から、黒い服に身を包んだ人間の少年に似た生命体が眠っていた。

「どうしましょう…あら?誰が近付いてくる…きっと自警団だわ…
このままじゃこの子はどこかの研究機関へ行ってしまう…」

ワカナ姫は悩んだが、気が付くと執事のサヤカと2人がかりで少年を別荘まで運んでいた。

ワカナ姫は別荘のベッドで少年が目を覚ますまでずっとそばにいた。すると…

「う…ううん…こ、ここは?」
「よかった…目が覚めたようね…あっ!」

眠った状態でも薄々わかっていたが、目覚めた少年のまるで掃除機のように吸い込まれる綺麗な瞳や、耳心地の良い美しい声。
ワカナ姫は今まで味わった事の無いような胸の高鳴りを感じた。

「どうしたの?」
「えっ?ああ!何でもないわ…」
「ここはどこだい?もしかして君の家?」
「まぁ、そんなものですわ…」
「ずっと僕の介抱をしてくれたのかい?ありがとう。僕はユキ、多分君とは違う星から来た者だよ。」
「私…ワカナ。あなたやっぱり宇宙人なの?この地球の人じゃないの?」
「ワカナ…可愛い名前だ…ここは地球っていうんだね?やっぱり僕の星とは違うようだ。」
「どうしてこの地球へ来たの?もしかして…侵略?植民地探し?」
「そんなに怖がらなくてもいいよ?僕の星は侵略もしないし、植民地も探していない。僕の星では色々な星星を旅して様々な文化を学んでいるんだ。
しかし、途中で寄ったイチゴの星で僕達の宇宙船が襲撃に遭ったんだ。あの星は意中の相手を取り込む習性があるなんて知らなくて、本当に災難だったよ。
その最中に王子の僕だけでも脱出させようとカプセルで宇宙へ投げ出されて、気が付いたらこの地球へ来ていたんだ。」
「大変だったのねユキくん…そうだ、お腹空いてない?ずっと何も食べていないんでしょ?」
「そういえば…食事はいつ取ったっけ?」
「良い物があるわ、ちょっと待ってて!」

数分後…
「お待たせ、お口に合うかわからないけど?」
「これは?」
「ラーメンっていうの。執事のアリサが大好きで、ここにもストックしているの。」
「じゃあ…いただきます…
んっ?これは…」
「やっぱり…美味しくないかしら?」
「美味しい!こんな美味しい物、宇宙でもなかなかお目にかかれないよ!」
「よかった…」

グ〜!

「きゃっ!」
「もしかして…ワカナもお腹空いているのかい?」
「ずっとユキくんの介抱をしていたから…お恥ずかしいわ…」
「ワカナも一緒に食べようよ?きっともっと美味しくなるよ?」
「じゃあ…一緒に…食べましょう…」

こうしてユキくんとワカナ姫は一瞬で打ち解けたのであった…

しかしこの幸せな時間も長くは続かなかった。
ユキくんの星の使者が迎えに来る事が通信でわかったのである。

「ありがとうワカナ…君のおかげで僕はこうして自分の星に帰れるよ。」
「いや…いやっ!まだユキくんと一緒にいたい!ユキくんの話もっと聞きたい!ユキくんと美味しい物食べたい!イヤだイヤだっ!」
「ワカナ…ゴメンね?こんなに君を寂しがらせるとは思わなかったよ…
じゃあワカナ…僕と約束をしようよ?」
「約束?」
「まだ僕は結婚できる年齢じゃない、きっとワカナもそうでしょ?
だから僕が結婚できる年齢になったら、必ず君のもとへもう1度行くよ。
その時にまだワカナが僕の事を1番好きだったら…
僕と…結婚しよう。」
「けっ、結婚!?」
「もしかして…イヤかい?」
「ごめんなさい…急だったからビックリしてしまって…
でも…私…ユキくんの…お嫁さんになりたい。」
「本当かい?」
「ええ、ずっと待っているわ…パパやママがどんなに結婚を迫っても…私はユキくんと結婚するわ。」
「じゃあこれからもたくさんの旅をして、ワカナへの土産話をたくさん持ってこないとね?」
「楽しみにしてるわ…でもユキくん、また襲われたり危険な事はしちゃダメよ?」
「わかってる…おや?そろそろお迎えの時間のようだ」
「ユキくん…」
「ワカナ…ほら?笑って?そんな悲しそうな顔はワカナには似合わないよ?ねっ?」
「うん…えへへ…」
「じゃあね…絶対にまた会おうね?」
「絶対だよ?絶対だからね?」
「うん…」
「ユキくん…ユキく〜ん!」

こうしてユキくんは宇宙へ旅立っていった…
別荘からお城へ戻ったワカナ姫はしばらくうかない表情だったが、ユキくんときっとまた会えると自分に言い聞かせ、次第に明るさを取り戻していった。


時は再び現代へ戻り、
ワカナ姫は度重なる縁談の話も聞く耳を持たず、片時もユキくんの事を忘れる事は無かった。

「今日も星が綺麗だわ…あのどこかにユキくんもいるのかしら…
ユキくん…きっとまた会えるよね?」
「ワ〜カナッ?」
「えっ?」

突然ワカナ姫は何者かに背後から抱きしめられた。
ワカナ姫はビックリしたが、その声に聞き覚えがあった。

「うそ…ユキくん?」
「久しぶりだね…ワカナ姫…」
「ユキくん!うわぁ…素敵…王子様みたい…」

ワカナ姫の目の前にいたのは、出会った時の黒い服はそのままに、スラッと伸びた脚と大人っぽくなった美しい顔が魅力的なユキくんだった。

「王子様みたい…じゃなくて、僕は本当の王子なんだけどね…ワカナ姫こそすっかり美しいお姫様になったみたいだね?一瞬気付けなかったよ…」
「ユキくん…ユキくんユキくん…まだ夢を見ているみたい…私、ずっとユキくんの事考えてたの…」
「そっか…僕もだよ?結婚出来る年齢になったら真っ先にワカナ姫の所へ行こうって決めていたんだ…
ワカナ姫、まだ僕の事を1番好きかな?」
「ええ、大好き…誰よりも大好き…」
「じゃあ…僕のお姫様になってくれますか?
僕を…君の王子様にしてくれますか?」
「もちろん…ユキくんとずっと一緒にいたい!もう離れ離れはイヤっ!」

ワカナ姫はユキくんに抱きついて離れなかった。

「じゃあ早速ハネムーンへ行こうか?ワカナ姫に見せたいモノがたっくさんあるんだよ?」
「ええ、行きましょう…どこまでも…」

こうしてワカナ姫はユキくんと宇宙へ旅立ち、2人で末永く幸せに暮らしました。(完)