障害の自己召致 | 国家資格3(社労士、行政書士、社会福祉士)つをもて余している私の社会保障・労働問題考察

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3つの国家試験合格者(登録をしていない)が語る社会保険や社会保障に関する考察,労働問題に加え、日々思うことを適当に語ります

どうもこんばんわ。ニコニコ

今回のテーマは障害の自己召致である。自己召致と言われてもピンとこないであろうが、簡単に説明すると故意に障害を負ったという意味である。

当然故意に障害やその原因となった事故等を招いた者に障害年金を支給しないのは、保険という性質上極めて当たり前ではあるが、ここでも「故意」の解釈が問題となることも存在することろ、法が規定する故意とは未必の故意で足りるとするのが社会保険審査会の裁決である。つまり、ある行為が障害を招くことの危険性等を正確かつい確定的に認識している必要はなく、ある程度概括的な認識あれば良いのだが、この解釈の範囲を拡大することは法の目的や理念に背く可能性うぃ有し、とりわけ未成年者のケースでは余りにも酷な結果となってしまう。

これは、未成年者が違法な薬物、シンナー等を使用したことにより障害負った場合に問題となる。確かに、共同連帯である保険において、自らの安易かつ短絡的な行動により保険事故をもたらした者にまで給付を行う事は、保険理論を破壊する許されないことであるものの、当時の具体的状況如何によっては障害を負うという結果の全てを本人に帰することが妥当でないこともあり得る。

特に、未成年者は身心の発達段階であり、大人に比べ判断力、認識力が劣るのであるから故意の解釈を拡大することは時として法が要請する目的を大きく損なう。

社会保険審査会の裁決では、シンナーの使用による失明に近い障害を負った者に対する保険者の給付の拒否に関して、単に体によくないだろうという程度の漫然たる認識では故意とは評価できないとし、更に吸引当時の年齢(16歳)、吸引回数(6か月間に十数回)、生じた障害の程度等を総合勘案して原処分を取り消した。

また、精神的に不安定な状態で家出をし、暴力団とおぼしき男とマンションに住みその際覚せい剤を使用した結果生じた覚せい剤精神病に対する障害給付に関して、自由意思にて使用したのか保険者側は積極的に証明していなくかつ当時年齢、暴力団員が配下の女性に薬物を投与して自らに依存させるこは珍しくないことを理由に、強制的に投与されたかは定かではないが、自由意思とも言い難いとして原処分を取り消した。

後者は、自由意思という故意が強く推認させられる証明が不十分であり、なおかつ本人の意思にそぐわない何らかの特段の事情が介在した疑いを払拭できないのであるから、故意の証明という観点から破棄したものであり妥当である。

前者は、広く捉えれば故意ではあるが、失明に使い障害を負うとは想像もしていなく、未成年者ということを考慮すれば単に体に良い物ではないだろうという極めて抽象的な認識を故意と評価し、給付を拒絶するこは余りにも酷であり、保険理論からすれば問題なしとはできないがやむを得ないだろう。

故意の解釈を拡大し厳しく運用していくことは究極的には立法論も問題であり、また保険理論に合致した考え方であるが、純然たる私保険ではなく社会保険という性格を加味するとやはり、あまねく全ての国民が保険給付を受けられることが望ましく、他の被保険者との公平の均衡を維持することが優先されるような、明白な故意がありその全結果を本人に負わせることが強く要請される場合にのみ給付を拒否又は制限するべきである。但し、拒否と制限において故意の解釈が異なることは、全く給付を受けられない拒否と一部受けられる制限とでは被る不利益に差があることから許容されるだろう。

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